近畿地方」の事例

025 北浜テラス

(大阪府)

大阪は水の都である。しかし、戦後は多くの世界中の工業都市同様、その水に目を背けて都市はつくられていった。そして、しばらく経つと、住民にとって水は縁遠いものとなってしまった。一方で、水はその都市にとって貴重なアメニティ資源である。都市の魅力を向上させていくうえで、水を活用しない手はない。

047 波止場町1番地におけるみなとへの展望景観確保

(兵庫県)

神戸市は、1980年後半頃から、旧居留地の街並み保全活動を展開し、現在では「もっとも神戸らしいお洒落で洗練された街」へと変容されることに成功した。しかし、この区画は港と隣接しているにも関わらず、海岸線と平行して走っている国道2号線沿いに建っている建物によって、港への景観がほとんど遮断されてしまっていた。

100 先斗町の景観形成

(京都府 )

先斗町(ぽんとちょう)は京都市中京区、河原町駅から北にある鴨川と高津川に挟まれた南北に延びる花街である。細長い石畳の道は幅が2メートルちょっとしかなく、そのヒューマン・スケールで、江戸時代から引き継がれる街並みの都市空間は内外の観光客を大いに魅了させる。

107 御堂筋イルミネーション

(大阪府 )

構想時の理念は、これをイベントで終わらせないで、都市を魅力化させるトリガーとして位置づけるというものであった。単に道路空間だけでなく沿道の建物や寺社、またはランドマーク等もライトアップすることで、御堂筋という回廊全体の夜間景観を見事に演出している。

112 みつや交流亭

(大阪府)

そこは昼には子育て支援、子供達のたまり場、夕方には落語会や音楽会、映画界、講演会、勉強会、バザーなどに使われる。そして、清潔なトイレと冷たい水とベンチが提供されていて、いつも賑わっているちょっと不思議な空間である。

118 黒壁スクエア

(滋賀県 )

黒壁スクエアのユニークなところは、地元産業ではないガラスを街づくりのテーマにしたことである。通常、街づくりを考えるうえでは、地元の歴史などそのアイデンティティを活かすことが有効であり、王道であると捉えられている。

121 姫路駅前トランジット・モール

(兵庫県 )

姫路駅の姫路城側(北口)に出ると、素晴らしいサンクン・ガーデンが目の前に広がる。それは人が憩えるようなランドスケープ・デザインがされた極めて贅沢な公共空間である。

164 だんだんテラス

(京都府 )

だんだんテラスは、高齢化・少子化が進み、人口も減少し、空き家も増え、栄養失調で徐々に体力が衰えていくような状況にある団地の再生を考える大学の研究・活動拠点である。

179 出町座

(京都府 )

出町座は京都市の出町柳駅そばにある桝形商店街の中にある映画を中心とした文化複合施設である。薬局の跡地に2017年に開業した。出町座がある桝形商店街の雰囲気は素晴らしい。この街があるからこそ出町座も映えるし、また出町座があることで桝形商店街の魅力も増すという素晴らしい相乗効果がここでは観察することができる。

196 ヨリドコ大正メイキン

(大阪府)

大阪のウォーターフロントである大正区の泉尾地区でも、近年、人口縮小という課題に直面しており、空き家が見られ始めている。一方で、大阪のアーティスト達にとって、大阪にはインキュベーター(孵化器)的な仕組みが不足していた。この二つの課題を解決し、さらに地域住民の交流を促すような目的でつくられたのが「ヨリドコ大正メイキン」である。

197 大正中央中学校のリノベーション

(大阪府)

このプロジェクトの面白いところは、それまでただ受動的に与えられていた、教室という空間に対して、学生達が能動的に関与し、それを創造する機会を提供できたことである。それによって、その空き教室に対しての学生達の見方がコペルニクス的転換を果たしたと考えられる。

224 今井町の歴史的街並み保全

(奈良県)

奈良県橿原市にある今井町は、中世末に建設された町並みが今なお保全されている日本においても希有な場所である。日本人として誇りにしたくなるような、外国人に自慢をしたくなるような空間である。しかしこの貴重な歴史的財産を保全しつつ、生活環境を改善する道のりは決して平坦ではなかった。

228 喫茶ニューMASA

(大阪府)

大阪駅から徒歩で10分ほどの距離にある中崎町に、昭和のレトロ感溢れる喫茶店ニューMASAがある。この喫茶店は「譲り店(ゆずりみせ)」である。譲り店とは、昔からずっと営んできたお店のマスターが主に高齢などが理由で、そろそろ辞めようと考えた時、店を継いでもらうのでもなく、売るのでもなく「譲る」という発想で、新しいオーナーに店を引き継ぐというスタイルのお店である。

236 タグボート大正

(大阪府)

大阪市大正区のウォーターフロントに出現した複合商業施設「タグボート大正」は、人口減少に悩む地元のまちづくりを牽引する役割が期待されている。河川沿いの商業施設自体が日本では珍しいが、ここでは河川に係留された船が商業施設として利用されており、日本では初めてのケース。河川法を含め、多くの障害を乗り越えて実現に辿り着いたユニークなプロジェクトである。

243 コウノトリと共生するまちづくり

(兵庫県)

「コウノトリでまちづくり」というコンセプトを打ち出すのに豊岡市ほどうってつけのところはない。最後のコウノトリは豊岡で生息していた。復活させるのであれば豊岡から、というストーリーは説得力を持つ。しかし、そのコンセプトは理念だけでなく、経済面でも市民にプラスをもたらさないと継続的な支持を求めることは難しい。そこで考えられたのが一石三鳥的な「無農薬(減農薬)のお米のブランド化」という考え方であった。

249 伊根浦の舟屋群の伝建地区指定

(京都府)

京都府の北部にある丹後半島の東端に位置する伊根町。その景観には海、舟宿、道(にわ)、主屋、山といった漁村の豊かなエコシステムが見事に表現されている。それは日本人の原風景といってもいいような郷愁と懐かしさを喚起させる。2005年7月、漁村集落としては最初の国の重要伝統的建造物群保存地区(伝建地区)として選定された。

251 杭瀬中市場の再生

(兵庫県)

兵庫県尼崎市の杭瀬市場は、個店の寄せ集めであり、それに起因する多様性、不確定性がもたらす魅力はショッピング・センターにはみられない。ここには風変わりな古本屋や、市場の食材を使った料理を提供する食堂、一階が和菓子屋で二階がレコード屋というユニークな店舗ミックスなどが具体化している。それは、市場マーケティングなどではとても出てこない、経営理論や経済理論を越えた現象である。

258 さんきたアモーレ広場・サンキタ通りの再整備

(兵庫県)

さんきたアモーレ広場は、神戸市の三宮駅の東口にある約1,000平米の広場。サンキタ通りはこの広場を起点とし、阪急三宮駅の高架下に沿って延びている。さまざまな課題に悩まされていたが、神戸の玄関口にふさわしい空間をめざして再整備され、魅力的な空間へと改善された。

264 四条通りの歩道拡張

(京都府)

京都市の四条通りは、河原町と烏丸を結ぶまさに京都を象徴するメイン・ストリート。「歩くまち・京都」を理念に掲げる京都市は、社会実験の結果を丁寧に検討しつつ、歩道を拡幅させ、車道を狭くする、四条通り空間再編事業を遂行した。

267 京都市の眺望空間保全

(京都府)

京都の御所周辺は格子状の都市構造をしている。そして、どの通りを歩いていても南に向かっていない限りはその視点の先に美しい山並みがみえる。このような風景が演出されるのは、格子状という都市構造が寄与している点も大きいが、何より、眺望が得られるように建物の高さがそれを阻害しない程度に抑えられているからであろう。このような眺望を将来的にも確保するために京都市が眺望景観創生条例を策定したのが2007年。現在では、そこで制定された眺望景観保全地域をさらに拡大させ、新たな事前協議制度を運用している。

279 京都国際マンガミュージアム

(京都府)

京都市の烏丸御池駅という京都屈指の一等地に立地する京都国際マンガミュージアム。昭和初期に建てられた龍池小学校の校舎を活用し、地元市民との協議を経て2006年に開館した京都市と京都精華大学の共同事業である。2017年には来館者300万人を記録。外国人の訪問客も多く、京都市の調査では外国人の市内訪問先トップ25にランクインしている。

281 寺西家と寺西長屋の保全

(大阪府)

地下鉄御堂筋線昭和町駅のすぐそばに、大正時代に建築された町家、そして昭和7年に建設された二階建ての四軒長屋がある。この長屋は近代長屋としては全国で最初に登録有形文化財として指定された。しかし、これらの建物が残されることになったのは奇跡的な巡り合わせが重なったためである。

282 コモンカフェ

(大阪府)

大阪の中崎町にあるcommon café(コモンカフェ)は「日替わり店主」というシステムで運営されている。最近ではシェア・カフェも随分と受けいれられるようになってきたが、ここはそのようなコンセプトもない頃に始まり、シェア・カフェのニーズがあることをいわば社会実験するなかで証明したようなカフェなのである。

283 京都芸術センター

(京都府)

京都芸術センターは京都市における芸術の総合的な振興を目的として、閉校した明倫小学校の跡地に開設された。地域コミュニティの拠点としての記憶をしっかりと継承しつつ、芸術鑑賞の場、そして若い芸術家達を育成する場所として運営されている。

296 がもよんの古民家再生

(大阪府)

大阪市城東区にある蒲生四丁目の一画は「がもよん」の名称で親しまれている。近年、地元不動産会社の斬新なアプローチによって、それまで老朽化して使われていなかった古民家が次々に再生され、新しい街の賑わいが生まれるなど、空き家活用の先進事例として注目されている。

インタビュー

ジャイメ・レルネル氏インタビュー

(建築家・元クリチバ市長)

「よりよい都市を目指すには、スピードが重要です。なぜなら、創造は「始める」ということだからです。我々はプロジェクトが完了したり、すべての答えが準備されたりするまで待つ必要はないのです。時には、ただ始めた方がいい場合もあるのです。そして、そのアイデアに人々がどのように反応するかをみればいいのです。」(ジャイメ・レルネル)

鈴木伸治氏インタビュー

(横浜市立大学国際教養学部教授)

ビジネス、観光の両面で多くの人々をひきつける港町・横浜。どのようにして今日のような魅力ある街づくりが実現したのでしょうか。今回の都市の鍼治療インタビューでは、横浜市のまちづくりに詳しい、横浜市立大学国際教養学部の鈴木伸治教授にお話を聞きました。

柴田久 福岡大学教授インタビュー

(福岡大学工学部社会デザイン工学科教授)

都市の鍼治療 特別インタビューとして、福岡大学工学部社会デザイン工学科教授の柴田 久へのインタビューをお送りします。
福岡市の警固公園リニューアル事業などでも知られる柴田先生は、コミュニティデザインの手法で公共空間をデザインされています。
今回のインタビューでは、市民に愛される公共空間をつくるにはどうすればいいのか。その秘訣を伺いました。

高尾忠志(地域計画家)インタビュー

(地域計画家)

今回の「都市の鍼治療インタビュー」は、九州の都市を中心に都市デザインに携わっている地域計画家の高尾忠志さんへのインタビューをお送りします。優れた景観を守ための開発手法や、複雑な事業を一括して発注することによるメリットなど、まちづくりの秘訣を伺います。

鳴海邦碩氏インタビュー

(大阪大学名誉教授)

1970年代から長年にわたり日本の都市計画・都市デザインの研究をリードしてきた鳴海先生。ひとびとが生き生きと暮らせる都市をめざすにはどういう視点が大事なのか。
これまでの研究と実践活動の歩みを具体的に振り返りながら語っていただきました。

中村ひとし氏インタビュー

(クリチバ市元環境局長)

シリーズ「都市の鍼治療」。今回は「クリチバの奇跡」と呼ばれる都市計画の実行にたずさわったクリチバ市元環境局長の中村ひとしさんをゲストに迎え、お話をお聞きします。

対談 福田知弘 × 服部圭郎

(大阪大学サイバーメディアコモンズにて収録)

お金がなくても知恵を活かせば都市は元気になる。ヴァーチャルリアリティの専門家でもある福田先生に、国内・海外の「都市の鍼治療」事例をたくさんご紹介いただきました。聞き手は「都市の鍼治療」伝道師でもある、服部圭郎 明治学院大学経済学部教授です。

対談 阿部大輔 × 服部圭郎

(龍谷大学政策学部にて収録)

「市街地に孔を開けることで、都市は元気になる。」(阿部大輔 龍谷大学准教授)
データベース「都市の鍼治療」。今回はスペシャル版として、京都・龍谷大学より、対談形式の録画番組をお届けします。お話をうかがうのは、都市デザインがご専門の阿部大輔 龍谷大学政策学部政策学科准教授です。スペイン・バルセロナの都市再生に詳しい阿部先生に、バルセロナ流の「都市の鍼治療」について解説していただきました。

岡部明子氏インタビュー

(建築家・東京大学教授)

「本当に現実に向き合うと、(統計データとは)違ったものが見えてきます。この塩見という土地で、わたしたちが、大学、学生という立場を活かして何かをすることが、一種のツボ押しになり、新しい経済活動がそのまわりに生まれてくる。新たなものがまわりに出てくることが大切で、そういうことが鍼治療なのだと思います。」(岡部明子)

今回は、建築家で東京大学教授の岡部明子氏へのインタビューをお送りします。

土肥真人氏インタビュー

(東京工業大学准教授)

今回の「都市の鍼治療インタビュー」は、東京工業大学准教授の土肥真人氏へのインタビューをお送りします。土肥先生は「エコロジカル・デモクラシー」をキーワードに、人間と都市を生態系の中に位置づけなおす研究に取り組み、市民と共に新しいまちづくりを実践されています。

饗庭伸教授インタビュー

(東京都立大学都市環境学部教授)

人口の減少に伴って、現代の都市ではまるでスポンジのように空き家や空きビルが広がっています。それらの空間をわたしたちはどう活かせるのでしょうか。『都市をたたむ』などの著作で知られる東京都立大学の饗庭 伸(あいば・しん)教授。都市問題へのユニークな提言が注目されています。饗庭教授は2022年、『都市の問診』(鹿島出版会)と題する書籍を上梓されました。「都市の問診」とは、いったい何を意味するのでしょうか。「都市の鍼治療」提唱者の服部圭郎 龍谷大学教授が、東京都立大学の饗庭研究室を訪ねました。

お話:饗庭 伸 東京都立大学都市環境学部教授
聞き手:服部圭郎 龍谷大学政策学部教授