112 みつや交流亭 (日本)

112 みつや交流亭

112 みつや交流亭
112 みつや交流亭
112 みつや交流亭

112 みつや交流亭
112 みつや交流亭
112 みつや交流亭

ストーリー:

 ヤカーリングというヤカンによるカーリング・ゲームの発祥の地として知られる大阪市淀川区三津屋商店街。そこに2007年8月に人々が交流する空間「みつや交流亭」が設立された。そこは昼には子育て支援、子供達のたまり場、夕方には落語会や音楽会、映画会、講演会、勉強会、バザーなどに使われる。そして、清潔なトイレと冷たい水とベンチが提供されていて、いつも賑わっているちょっと不思議な空間である。
 この空間がつくられたきっかけは、地元タウン誌の「ザ・淀川」の創始者であり初代編集長であった南野佳代子氏が、当時大阪市職員労働組合に所属していた田中浩二氏から、組合員によるまちおこし支援活動への応援について相談されたことであった。それを受けて、大阪市職員労働組合は2006年にトークセッションを行い、南野さんをはじめとした関係者が参加した。そして、このセッション後に商店街の空き店舗を拠点にして地域社会に入り、市民と協働してまちづくりを展開するというアイデアが生まれたのである。南野さんの紹介で阪急電鉄神崎川駅からほど近い三津屋商店街のなかで、商店街組合の理事長さんを交えて、地域で活発に活動してきた子育てサークルの女性たちや落語家、福祉活動のリーダー、大学の先生と学生、そして労組の役員などが会議を重ねて方向付けがされた。この流れを踏まえて、「誰にも開かれた空間」「地域からの発想を実現できる場」というコンセプトのもとに同商店街のなかの空き店舗の一つを借りることになり、研究会のメンバーや労働組合も資金を出して「市民交流スペース・みつや交流亭」が誕生したのである。
 その後、2010年2月には「特定非営利活動法人みつや交流亭」が認証を得た。活動拠点ができた三津屋商店街を舞台に、みつや交流亭が中心になって2011年2月に「三津屋ぼうさい昼市・音楽市」を企画・運営。これが商店街全体で大いに盛り上がり、その後は主催を地域活動協議会へと大きく発展させ、今では「三津屋音楽祭」として地域ぐるみの毎年秋の恒例行事となっている。つくられてから10年。みつや交流亭は、三津屋商店街というちょっと魅力ある商店街の魅力を発現させる、重要な媒介として機能してきているのだ。

キーワード:

コミュニティ再生, 商店街活性化, NPO

みつや交流亭 の基本情報:

  • 国/地域:日本
  • 州/県:大阪府
  • 市町村:淀川区
  • 事業主体:NPOみつや交流亭
  • 事業主体の分類:市民団体 その他
  • デザイナー、プランナー:南野佳代子、大阪市職員労働組合、三津屋商店街、片寄俊秀
  • 開業年:2007年

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 みつや交流亭は商店街にある古い木造二階建てのもと和菓子屋を改装してつくられた。一階は広い縁側のようなベンチが置かれた屋根のある空間があり、商店街を歩く人達が適当に座って休みたくなるようなウェルカムな雰囲気を醸し出している。近くに小学校があるのだが、美味しく冷たい水、そして優しいおばさんがいるので、学校帰りに水を飲んだ後一度家に戻って、このスペースに遊びに来て剣玉をしたり五目並べをしたりする児童たちも多くいる。建物の中は、一階は会議や小さなイベントなどが出来るスペース。ここでは「つどいの広場事業」(市からの委託事業)として平日の昼間は子育て世代の親子の憩いの場となり、次世代への架け橋ともなっている。そして、二階は畳敷きの比較的大きな空間で、ちょっとしたイベントが出来る。講演会や器楽演奏、落語、ベリーダンスのショーなどがこれまでここで行われている。
 このような施設の運営において課題となるのは、主力である労働組合の人も商店の人も昼に仕事があるから、どうしても仕事が終わったアフターファイブからの活動が中心となってしまうことだ。その問題をここでは、子育てサークルの人による昼間の利用で、店番をボランティアでやってくれたことで解決している。
 一度、三津屋音楽祭が行われた時に訪れたことがある。みつや交流亭がイベントの拠点ではあったが、イベント自体は商店街全体で行われており、最後のフィナーレは小学校で行われるのだが、その盛り上がりたるや相当のものである。このような恒例行事がつくられたことは、みつや交流亭抜きには考えにくい。
 みつや交流亭は、ハードではなくまさにソフト面での「都市の鍼治療」事例であると思われる。タウン誌の草分けである「ザ・淀川」を創刊した編集者の街の資源を見抜く感性、そして真摯に街づくりに取り組もうとする市職員労働組合の情熱、商店街の人達を活性化させるネットワークの絆の強さ、さらには学生による街ゼミというコンセプトを考案した片寄先生の経験・・・これらが見事に共振したからこそ実現できたのがみつや交流亭であると思われる。都市をつくるのは「人」というのはよく指摘されるが、まさに、それが分かりやすく展開したのが「みつや交流亭」であると思われる。

【参考文献】
片寄俊秀『おもろい商店街のなかのメチャオモロイみつや交流亭物語』
ブログ「みつや交流亭に、ようこそ」(http://plaza.rakuten.co.jp/kouryutei/) 

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