多様な市民の参画に関する事例
(ポーランド共和国)
ポーランド君主たちの住居であったワルシャワ王宮は、1944年の「ワルシャワ蜂起」の失敗後、ナチス・ドイツによって徹底的に破壊された。戦後、ポーランド人の寄付によって再建事業がスタートし、2019年、半世紀に及ぶ王宮の復元事業が完成した。2022年には175万人の観光客が訪れている。
(ポーランド共和国)
ナチス・ドイツによって破壊され、焦土と化したワルシャワの旧市街地。戦後、市民みずからが瓦礫を収集し、再生に協力するなどにより、ほぼ完全に近いかたちに復元された。それは地区レベルで町を復元させる事業であり、人類が記録したことがないような大事業であった。
(ベトナム社会主義共和国)
ハノイ市の紅河の堤防に沿って、長さ6.5キロメートルにも及ぶ長大なモザイク壁画が伸びている。ハノイの遷都1000年を記念して、国内外のアーティスト、地元の職人、そして子どもたちによって制作されたものである。無粋なコンクリートの塊を、ハノイ市のアイデンティティを具体化させるような芸術作品へと転換させた見事な事例である。
(岐阜県)
「さるぼぼコイン」は、岐阜県の飛騨市、高山市、白川村のみで利用できる電子地域通貨である。2023年4月30日時点でユーザー数は約29,300名、加盟店数は約1,930店、そして累計決済額は約82億円にまで達している。飛騨市では市民の4人に1人がユーザーであり、市役所では納税や行政手続き等の手数料を「さるぼぼコイン」で支払うことができる。
(鹿児島県)
鹿児島市名山町の「バカンス」。周りに近代的で大きな建物が林立している中、この周囲だけはまるで時間が止まったかのように昭和レトロな雰囲気が漂っている。1階はキッチンスペース、2階は4畳半の小さな空間であるが、そこは狭い路地ゆえに「再建築不可」の空き家がつくりだした、奇跡的なパブリックな場所である。
(アメリカ合衆国)
サンフランシスコのヘイズ・バレーを南北に走るオクタビア・ブルバードは、その長さわずか4ブロックにしか過ぎないが、高架下の高速道路という、地元の人も近づきたくないような空間を見事なオープン・スペースへと変貌させることに成功した。
(京都府)
京都芸術センターは京都市における芸術の総合的な振興を目的として、閉校した明倫小学校の跡地に開設された。地域コミュニティの拠点としての記憶をしっかりと継承しつつ、芸術鑑賞の場、そして若い芸術家達を育成する場所として運営されている。
(京都府)
京都府の北部にある丹後半島の東端に位置する伊根町。その景観には海、舟宿、道(にわ)、主屋、山といった漁村の豊かなエコシステムが見事に表現されている。それは日本人の原風景といってもいいような郷愁と懐かしさを喚起させる。2005年7月、漁村集落としては最初の国の重要伝統的建造物群保存地区(伝建地区)として選定された。
(神奈川県)
神奈川県の中央部に位置する座間市の鈴鹿・長宿地区では、住民主体で、湧水を利用した公園や街並みの環境整備事業を行ってきた。土地の地形、風土を尊重し、それを大切に思う住民の人達の気持ちが斜面緑地の風景に表れている。
(アメリカ合衆国)
サンフランシスコのケーブルカーは、現存する手動式の最後のケーブルカーである。そもそも地元住民のためにつくられたケーブルカーであるが、大観光都市サンフランシスコにおいては、多くの利用は観光客によって占められるようになっている。年間利用者は740万人前後。それは、アメリカで唯一の「動く」国家歴史ランドマークである。
(大阪府)
大阪駅から徒歩で10分ほどの距離にある中崎町に、昭和のレトロ感溢れる喫茶店ニューMASAがある。この喫茶店は「譲り店(ゆずりみせ)」である。譲り店とは、昔からずっと営んできたお店のマスターが主に高齢などが理由で、そろそろ辞めようと考えた時、店を継いでもらうのでもなく、売るのでもなく「譲る」という発想で、新しいオーナーに店を引き継ぐというスタイルのお店である。
(奈良県)
奈良県橿原市にある今井町は、中世末に建設された町並みが今なお保全されている日本においても希有な場所である。日本人として誇りにしたくなるような、外国人に自慢をしたくなるような空間である。しかしこの貴重な歴史的財産を保全しつつ、生活環境を改善する道のりは決して平坦ではなかった。
(長崎県)
出島表門橋は、物理的に現在の長崎市と復元されつつある出島を結ぶというだけではない。それは現代の長崎と鎖国時代の長崎とを時間を越えて結ぶ役割をも担っている。それは、忘れられていた出島という都市の記憶を現在へと繋ぐタイムマシーンのようなものだ。そして、その役割を見事に象徴させているのが、この橋のデザインであると考えられる。
(山口県)
長門湯本温泉は長門市の南部、音信川の渓谷沿いに広がる温泉街である。開湯は1427年と温泉としての歴史は古い。宿泊者数は1983年の39万人をピークに減少し、2014年には18万人とピーク時の半分以下となる。さらに2014年、150年の歴史を有する老舗ホテルが廃業し、温泉街の中心には広大な廃墟ビルが残る苦境に追い込まれる。そのような状況の下、市長は星野リゾートの誘致に乗り出し、大胆なプロジェクトを開始する。
(ポルトガル)
空に浮かぶ無数の色とりどりの傘の群れ。何も資源がない町でも、アートを使えば新しい魅力を創出できるということを広く世に知らしめた素晴らしい鍼治療の事例。
(キューバ共和国)
1990年代、ソ連が崩壊して、さらにアメリカの経済封鎖が強化されたために、経済的な苦境にたたされたキューバは、圧倒的な物資不足・食糧不足に対応するために都市を開墾することにした。
(ドイツ連邦共和国)
デッサウでは、住宅市場の供給過剰に対応するために不要な建物を撤去した跡地を、「図」ではなくむしろ「地」に注目した都市像として提示している。そして、この「地」を空間的にネットワーク化し、新しく創出されたランドスケープを人々に認識してもらうために、それらを「赤い糸」で繋ぐことにした。
(岐阜県 )
まず空き家所有者は空き家を10年間低額で公社に貸し付けをする。そして、公社は空き家を10年間借り受け、空き家を改修し、維持管理業務をし、入居者募集をして、選定、入居手続き業務をする。
(ドイツ連邦共和国)
ライプチッヒ・オスト地区にある空き家を「日本」というテーマのもとに、人々が集いアイディアや物を生み出す、クリエイティブな空間として再生することを目標としたプロジェクトが「日本の家」である。
(ルワンダ共和国)
ルワンダのコミュニティは大虐殺によって、そのメンバー間の絆はずたずたにされた。その絆を再び、取り戻すのは、コミュニティの人達が自発的にする以外、方法はない。そのために、現大統領のポール・カガメ氏が採用したのは、伝統的にルワンダのコミュニティが行ってきたウムガンダという手法であった。
(オーストラリア)
マレーニは、オーストラリアのクイーンズランド州のサンシャイン・コースとのそばにある人口1500人の小さな町である。このマレーニは1987年10月、地域通貨のレッツを導入する。このレッツを導入したのが、マレーニに信用組合や生協を設立したジル・ジョーダンである。
(ブラジル連邦共和国)
ブラジルの環境都市として知られるクリチバは、1989年にジャイメ・レルネル氏が三期目の市長として当選してから、「環境都市」を施策目標として掲げる。そして、低所得者層が多く住んでいたフェベラ地区のごみ問題の解決策として「ゴミ買いプログラム」を導入し、見事、大きな成果をあげる。
(ブラジル連邦共和国)
環境局長であった日系ブラジル人の中村ひとしは、放置されているごみをどうにかして回収しなくてはいけないと考えた。そして、ごみを回収したひとに報酬を与えるというアイデアを思いついた。
(アメリカ合衆国)
環境と調和した経済発展を目指す都市として有名なチャタヌーガ市(テネシー州、アメリカ合衆国)にある身体障害者が働くリサイクル施設。それまではビール会社であるブッシュ・ビールの工場であった。
インタビュー
(建築家・元クリチバ市長)
「よりよい都市を目指すには、スピードが重要です。なぜなら、創造は「始める」ということだからです。我々はプロジェクトが完了したり、すべての答えが準備されたりするまで待つ必要はないのです。時には、ただ始めた方がいい場合もあるのです。そして、そのアイデアに人々がどのように反応するかをみればいいのです。」(ジャイメ・レルネル)
(横浜市立大学国際教養学部教授)
ビジネス、観光の両面で多くの人々をひきつける港町・横浜。どのようにして今日のような魅力ある街づくりが実現したのでしょうか。今回の都市の鍼治療インタビューでは、横浜市のまちづくりに詳しい、横浜市立大学国際教養学部の鈴木伸治教授にお話を聞きました。
(福岡大学工学部社会デザイン工学科教授)
都市の鍼治療 特別インタビューとして、福岡大学工学部社会デザイン工学科教授の柴田 久へのインタビューをお送りします。
福岡市の警固公園リニューアル事業などでも知られる柴田先生は、コミュニティデザインの手法で公共空間をデザインされています。
今回のインタビューでは、市民に愛される公共空間をつくるにはどうすればいいのか。その秘訣を伺いました。
(地域計画家)
今回の「都市の鍼治療インタビュー」は、九州の都市を中心に都市デザインに携わっている地域計画家の高尾忠志さんへのインタビューをお送りします。優れた景観を守ための開発手法や、複雑な事業を一括して発注することによるメリットなど、まちづくりの秘訣を伺います。
(大阪大学名誉教授)
1970年代から長年にわたり日本の都市計画・都市デザインの研究をリードしてきた鳴海先生。ひとびとが生き生きと暮らせる都市をめざすにはどういう視点が大事なのか。
これまでの研究と実践活動の歩みを具体的に振り返りながら語っていただきました。
(クリチバ市元環境局長)
シリーズ「都市の鍼治療」。今回は「クリチバの奇跡」と呼ばれる都市計画の実行にたずさわったクリチバ市元環境局長の中村ひとしさんをゲストに迎え、お話をお聞きします。
(大阪大学サイバーメディアコモンズにて収録)
お金がなくても知恵を活かせば都市は元気になる。ヴァーチャルリアリティの専門家でもある福田先生に、国内・海外の「都市の鍼治療」事例をたくさんご紹介いただきました。聞き手は「都市の鍼治療」伝道師でもある、服部圭郎 明治学院大学経済学部教授です。
(龍谷大学政策学部にて収録)
「市街地に孔を開けることで、都市は元気になる。」(阿部大輔 龍谷大学准教授)
データベース「都市の鍼治療」。今回はスペシャル版として、京都・龍谷大学より、対談形式の録画番組をお届けします。お話をうかがうのは、都市デザインがご専門の阿部大輔 龍谷大学政策学部政策学科准教授です。スペイン・バルセロナの都市再生に詳しい阿部先生に、バルセロナ流の「都市の鍼治療」について解説していただきました。
(建築家・東京大学教授)
「本当に現実に向き合うと、(統計データとは)違ったものが見えてきます。この塩見という土地で、わたしたちが、大学、学生という立場を活かして何かをすることが、一種のツボ押しになり、新しい経済活動がそのまわりに生まれてくる。新たなものがまわりに出てくることが大切で、そういうことが鍼治療なのだと思います。」(岡部明子)
今回は、建築家で東京大学教授の岡部明子氏へのインタビューをお送りします。
(東京工業大学准教授)
今回の「都市の鍼治療インタビュー」は、東京工業大学准教授の土肥真人氏へのインタビューをお送りします。土肥先生は「エコロジカル・デモクラシー」をキーワードに、人間と都市を生態系の中に位置づけなおす研究に取り組み、市民と共に新しいまちづくりを実践されています。
(東京都立大学都市環境学部教授)
人口の減少に伴って、現代の都市ではまるでスポンジのように空き家や空きビルが広がっています。それらの空間をわたしたちはどう活かせるのでしょうか。『都市をたたむ』などの著作で知られる東京都立大学の饗庭 伸(あいば・しん)教授。都市問題へのユニークな提言が注目されています。饗庭教授は2022年、『都市の問診』(鹿島出版会)と題する書籍を上梓されました。「都市の問診」とは、いったい何を意味するのでしょうか。「都市の鍼治療」提唱者の服部圭郎 龍谷大学教授が、東京都立大学の饗庭研究室を訪ねました。
お話:饗庭 伸 東京都立大学都市環境学部教授
聞き手:服部圭郎 龍谷大学政策学部教授