034 ウムガンダによるコミュニティ再生(ルワンダ共和国)
ストーリー:
ルワンダのコミュニティは大虐殺によって、そのメンバー間の絆はずたずたにされた。その絆を再び、取り戻すのは、コミュニティの人達が自発的にする以外、方法はない。そのために、現大統領のポール・カガメ氏が採用したのは、伝統的にルワンダのコミュニティが行ってきたウムガンダという手法であった。
ウムガンダはコミュニティ・メンバーが皆、強制的に行わされるコミュニティ・サービスのことである。ウムガンダ(Umuganda)という言葉の意味は、「共通の目的のために協働する」ということである。このウムガンダを、カガメ大統領は現代に再生するように考えたのである。具体的には、毎月、最終土曜日の午前8時から11時まで、18歳から65歳までの人々は、国土を再生するためのボランティア的な事業を、コミュニティ・ベースで実施することを義務化したのである。ウムガンダの時間帯は、いかなる店舗営業も禁止されており、自動車も走行が禁止されている(ただし、外国人は免除されており、自動車も運転することが許可されている)。
このコンセプトは、連帯と共同生活とを意識したものである。ウムガンダの事業としては、道路掃除、草刈り、道路沿いの街路樹の剪定、公共施設の改修、社会的弱者のための住宅建設などがあげられる。また、プロの職人である人は、この日に限って、無料でサービスを提供したりもする。
ウムガンダは、ずたずたになり、信頼を失ったコミュニティに再び、コミュニティという名前のもとに人々を協働させる機会を提供することになった。ウムガンダは植民地時代以前から行われていた慣習であったが、植民地時代には廃れていった。
ルワンダの文化的慣習は、お互いを助け合い、分かち合い、極めて平和なものであった。それが、大虐殺によって、破壊されてしまった。ウムガンダは昔の文化的慣習を再び呼び起こし、ルワンダという国を再生させるために、国民すべてを協働させることを可能にしている。それは、国民はルワンダという国の元、一つであり、また、平和と統一のために、すべての国民が貢献しなくてはならないことも自覚させる。それは、二分されてしまった国民をまた一つのものにするために大きな効果をもたらしている。
また、ウムガンダではコミュニティ・ワークをした後、コミュニティでの話し合いが開催される。そこでは、コミュニティの人達が集まって、その問題を自由にコミュニティ・リーダーと語り合う。それは、コミュニティを民主的に運営していくための貴重な機会である。
キーワード:
市民参加,コミュニティ・デザイン
ウムガンダによるコミュニティ再生の基本情報:
- 国/地域:ルワンダ共和国
- 州/県:キガリ県
- 市町村:キガリ市
- 事業主体:ルワンダ国
- 事業主体の分類:国
- デザイナー、プランナー:ポール・カガメ(大統領)
- 開業年:2003
ロケーション:
都市の鍼治療としてのポイント:
ウムガンダはルワンダの隣国では行われていない。そういう意味では、極めてルワンダ的な試みであるようだ。
ウムガンダは、大虐殺という極めて大きな傷跡を負った国を再生するためには、有効な手段であることは間違いないが、問題がないわけではない。ウムガンダの条件は、全員ではなくて、家族のうちの一人が参加するというものである。しかし、家族によっては、全員が忙しく、参加ができない場合もある。参加しないと5000ルワンダ・フラン(800円相当)の罰金が課せられるが、自発的に参加するのではなく、強制的に参加させられるのでは、ウムガンダの本来的な意味を果たさないとも考えられる。ウムガンダは、素晴らしい試みであるとは思うが、そのコンセプトをしっかりと、理解させないと、長期的にはマンネリ化して、形骸化する危険も孕んでいると思われる。
とはいえ、一度、破壊されてしまったコミュニティを再生させるための一つの極めて有効な手法であることは間違いない。虐殺といった大悲劇だけでなく、災害、公害、原発被害等で崩壊されたコミュニティを再生するうえでも参考になる事例なのではないかと思われる。
類似事例:
257 三津浜まちづくり
288 名山町の「バカンス」
294 シモキタ園藝部
・水俣のごみの分別事業、水俣市(熊本県)
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