287 屋台空間カドレ(Ca'dore)(ブラジル連邦共和国)

287 屋台空間カドレ(Ca'dore)

287 屋台空間カドレ(Ca'dore)
287 屋台空間カドレ(Ca'dore)
287 屋台空間カドレ(Ca'dore)

287 屋台空間カドレ(Ca'dore)
287 屋台空間カドレ(Ca'dore)
287 屋台空間カドレ(Ca'dore)

ストーリー:

 クリチバの北東部にあるバカチェリ地区にあった煉瓦工場の跡地に2017年につくられたアウトドアのフード・コート。36のレストラン・バーが入れるようにつくられたが、コロナのパンデミックで現在(2023年2月時点)、営業しているお店はその3分の2程度である。テナントはすべてコンテナを改造したものであり、そのためサイズもほぼ同じである。これを設計したのは地元の若き建築家であるブルーノ・コール。
 この場所は、元は煉瓦工場であった。それは1871年に操業を開始し、バカチェリ地区の発展に大きく貢献した。しかし、2011年に操業を中止し、その後、ここには煙突と工場跡、そして雑草が生い茂るような場所となっていた。
 バカチェリ地区は伝統的にフランス、スイス、ドイツ、イタリアからの移民が多く住む地区であった。そこは、クリチバ市内ではレクリエーション的な役割を担い、多くのレストランなども立地している地区だ。近年、同地区は成長が著しく、不動産価格も上昇している。そのような状況下、この6,000㎡に及ぶ煉瓦工場跡地もその再活用が期待された。同地区のイメージに沿った形で、ここは肩肘張らずに行けるような「Uncomplicated」なガストロノミーの空間にすることとした。味はいいが、気軽に下駄履きで行けるようなお店を集めたフード・コートをコンセプトとしたのである。
 ここの再開発においてはサステイナブルな面が意識されており、店舗はコンテナを再利用したものとし、通路もリサイクルした建材を使っている。コンテナのモデュールを利用しているため、その空間を拡張したりする際も容易に行える。また、ペットもOKの空間もあり、自転車で来る人のための駐輪場(ブラジルではめずらしい)、子供が遊べる空間なども整備されている。これは、顧客をセグメント分けするようなことを敢えてせずに、家族連れ、カップル、若者など皆が楽しめるような空間づくりを目指しているからである。
 この二年間ほどはコロナのパンデミックの影響で閉業していたが、再開をしてからはコロナ前のように、バカチェリ地区の住民を多く引き寄せている。また、カドレがここに開業した結果、バカチェリ地区は注目されるようになり、アウトドアで多くの人と楽しむ、レストランで食事をするという価値が再確認されるようになっている。クリチバのローカル新聞である「ガゼッタ・ド・ポヴォ」は、ここを「最もイケている場所(the coolest place in the city)」とまで評価している(2019/12/06)。

キーワード:

商業空間

屋台空間カドレ(Ca'dore)の基本情報:

  • 国/地域:ブラジル連邦共和国
  • 州/県:パラナ州
  • 市町村:クリチバ市
  • 事業主体:KFC ADMINISTRACAO DE BENS E EMPREENDIMENTOS LTDA
  • 事業主体の分類:民間
  • デザイナー、プランナー:Bruno Colle
  • 開業年:2017年

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 私がジャイメ・レルネル氏に最後に会ったのは、2017年2月であった。その時、この「都市の鍼治療」の取材動画を撮影させてもらい、最近、レルネル氏が注目している「都市の鍼治療」事例で民間企業が行っているところはありますかと尋ねた時に、即答したのがこのカドレであった(http://www.hilife.or.jp/cities/data.php?case_id=1003)。この取材動画で彼は次のように述べている。

「あらゆる種類の食べ物がコンテナを改造した店によって提供されている。座って過ごせるような空間があるので、何がそこで起きているかを観察することができます。素晴らしい空間です。あなたはそこに行かなくてはいけません」。

 「都市の鍼治療」の本家本元から「行かなくてはいけません」と言われて行かないのはまずいだろう、ということで訪れた。都心部から自動車で30分ほどの場所にある。周辺は社会住宅(注:クリチバ市はファベラ問題に代表されるしっかりとした住宅の不足に対応するために、多くの公共住宅を建設、整備したのだが、それらを社会住宅という)らしき団地に囲まれている住宅地である。ただ、まだ煉瓦工場の跡地も一部残っており、煙突がフード・コートから展望できる。
 建物がコンテナということで、暫定的なイメージを与えるが、中央にある食事をするためのテーブルがある空間は、ショッピング・センターにあるフード・コートのような安っぽいものではなく、煉瓦でつくられたしっかりとしたものであり、ランドスケーピングもされていて、空間自体は決して安っぽいというイメージを与えない。長細いプールや椰子の木による植栽など、夏の夕涼みの時間帯に訪れたということもあって、非常に気持ちがよい。 
 マネージャーの話によると、レルネル氏はオープンしてから頻繁にここを訪れていて、彼の指定席もあり、その椅子には名前も書かれていたと説明してくれた。残念ながら、その指定席は現在はなくなってしまったそうだが、プラクティカル指向のレルネル氏好みの空間である。
 クリチバ市周辺では、最近、中古コンテナを活用した商業空間づくりが流行っているのだが、このカドレの成功が一つの要因なのではないかと考えられる。

【参考資料】
Gazeta do Povo (2019/12/06)
“Bairro do Bacacheri teve crescimento e valorização significativos em Curitiba”
Gazeta do Povo (2017/10/06)
“Seis espaços gastronômicos construídos em contêineres para conhecer em Curitiba”
Gazeta do Povo (2017/01/13)
“Conheça o projeto arquitetônico do polo gastronômico Ca'Dore”

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