248 クリチバ市のユーカリ電信柱のリサイクル(ブラジル連邦共和国)

248 クリチバ市のユーカリ電信柱のリサイクル

248 クリチバ市のユーカリ電信柱のリサイクル
248 クリチバ市のユーカリ電信柱のリサイクル
248 クリチバ市のユーカリ電信柱のリサイクル

248 クリチバ市のユーカリ電信柱のリサイクル
248 クリチバ市のユーカリ電信柱のリサイクル
248 クリチバ市のユーカリ電信柱のリサイクル

ストーリー:

 クリチバの都市景観を彩るものとして、ユーカリの木を用いた建物が挙げられる。パラナ州知事庁舎、環境市民大学、動物園、環境部庁舎、バリグイ公園の玄関等。それは、「環境都市」として知られているクリチバの都市イメージにも合致した風景づくりに寄与していると考えられる。
 ジャイメ・レルネル氏が二回目のクリチバ市長を務めていた時(1979年-1983年)に、それまでユーカリの木でつくられていた電信柱がコンクリートのものに置き換わっていた。レルネル氏は、これら廃材となったユーカリの電信柱を建材として再利用することにした。しかも、このクリチバ市内のユーカリ電信柱では足りなくなったので、ブラジル中の電力会社から、廃材となったユーカリの電信柱を購入することにした。その背景としては、ユーカリの木という共通した建設材料を公共施設や公共空間にて利用することによって都市の統一的なイメージ形成を図る、ということがまず最初に考えられていたのだが、それによって廃材の有効利用というリサイクル的な観点も加わった。これらユーカリの電信柱は再利用されなくては燃やされる運命にあった。
 このユーカリの電信柱が最も印象的に使われているのはクリチバ北部のザリネリの森に1992年につくられた環境市民大学であろう。建物自身がユーカリの木でつくられているだけでなく、ゲート、そして崖の上とを繋ぐ階段もユーカリの木でつくられている。そして、ユーカリの木という自然材でつくられているので、森の中に人工物である建築が見事に溶け込み、環境市民大学という機能を見事に体現させている。

キーワード:

リサイクル, ユーカリ, 電信柱

クリチバ市のユーカリ電信柱のリサイクルの基本情報:

  • 国/地域:ブラジル連邦共和国
  • 州/県:パラナ州
  • 市町村:クリチバ市
  • 事業主体:クリチバ市
  • 事業主体の分類:自治体 
  • デザイナー、プランナー:ジャイメ・レルネル
  • 開業年:1970年代

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 クリチバは新しい都市である。そもそも集落がつくられたのは17世紀末であるし、19世紀半ばまでは直交する交差点が一つしかなかったような村であった。それがサンパウロ州から独立する形でパラナ州ができると、交通結節点という位置づけから州都として指定され発展していく。特に1960年代から70年代にかけてはブラジルの中でも最も成長力が高い都市の一つとなった。そのような経緯で急成長してきたクリチバは、それゆえに大都市としての格、というかアイデンティティのようなものが弱い。クリチバを代表するようなランドマークもレルネル氏が市長になる前はなかったような状況であった。
 しかし、現在のクリチバはそんなことはない。オスカー・ニーマイヤー博物館や植物園といったランドマークが存在するし、11月15日通り(花通り)はクリチバを象徴する都市景観として広く知られている。ただ、そのようなスポットではなく、都市全体を統合するようなアイデンティティは何かと問われたら、このユーカリの電信柱を挙げたい。
 多くの公共施設に、まるで判を押したように使われているユーカリの電信柱。それをみただけでクリチバらしさを感じてしまうアイコンとしての役割を果たしている。それは、クリチバの語源ともなったこの土地に育つパラナ松に次いで、クリチバの風土を表現しているといえよう。ユーカリはもちろん、このブラジルに自生している木ではない。それはオーストラリアから運ばれてきた木である。その成長の速さと火に強いという特性は、電信柱として使うのには適切であったのだろう。しかし、時代が移り、その電信柱としての役目を終えた後、それを火にくべるのではなく、建設材料としてレルネル氏は利用することにした。
 レルネル氏は、このユーカリの電信柱のリサイクル事業を「クリチバ市のポストモダン」として紹介する。電信柱は英語でエレクトリック・ポスト。この柱としてのポストの意味から「現代的なポスト(柱)」と「ポストモダン」をかけた親父ギャグのようなものだが、その一休さん的なギャグのセンスからしてもクリチバの政策理念を象徴するような試みであると思われる。それは、レルネル氏の口癖である「問題は解決である(Problem is a solution)」をまさに地でいく素晴らしい「都市の鍼治療」的な政策であると考えられる。

【参考資料】
服部圭郎『人間都市クリチバ―環境・交通・福祉・土地利用を統合したまちづくり』(学芸出版社)
Jaime Lerner, Acupuntura Urbana (Editora Record、2003年) ISBN 85-01-06851-9

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