037 スーパーキーレン(デンマーク王国)
ストーリー:
スーパーキーレンは、コペンハーゲン市の西部にあるノーブロ地区につくられた公園である。2012年6月に開園した。このプロジェクトは750メートルの長さを有し、両側ともに自転車専用レーンが整備されている。その面積は3ヘクタールに及び、3つのエリアから構成される。赤の広場、黒の市場、緑の公園である。赤の広場は近代的な公園の機能を持たせており、カフェや音楽、スポーツ活動が行える施設・空間が配置されている。黒の市場は、伝統的な広場であり、噴水やベンチが置かれている。そして、緑の公園はピクニック、スポーツ、犬の散歩などに使われている。
このプロジェクトは、コペンハーゲン市と不動産協会のような民間団体であるRealdaniaとの協働で進められた。その目的は、ノーブロ地区の都市基盤をより向上させ、他の地区のモデルとなるような空間を創造することであった。プロジェクトは、この地区の多様性を祝することが意図された。ノーブロ地区には50を越える国籍の人達が住んでいる。スーパーキーレンのストリート・ファーニチャーは、これらの人達の出身国のものを置くことにした。住民達に何を設置するかを尋ね、置くべきストリート・ファーニチャーを推薦してもらった。その結果、スーパーキーレンでは、イラクから運んだブランコ、ブラジルから運んだベンチ、モロッコの噴水、イギリスのゴミ箱などが、空間を彩っている。また、スーパーキーレンが意識したのは、周辺の交通の連絡をよくすることである。特に、この公園を通過する自転車専用道路を整備し、自転車によるアクセスを改善させた。
同プロジェクトは2013年のアメリカ建築家協会の賞などを受賞している。
キーワード:
ブラウンフィールド,市民参加,都市公園,パブリック・アート
スーパーキーレンの基本情報:
- 国/地域:デンマーク王国
- 州/県:デンマーク首都地域
- 市町村:コペンハーゲン市ノアブロ地区
- 事業主体:コペンハーゲン市
- 事業主体の分類:自治体
- デザイナー、プランナー:Superflex, Bjarke Ingels Group, Topotek 1
- 開業年:2012
ロケーション:
都市の鍼治療としてのポイント:
スーパーキーレンのあるノアブロ地区は、1980年代には暴動が頻繁に起きていた。その後も1993年、2006年、2007年と暴動が起きた。特に2007年の暴動は、当地区への都市開発に対する不満を一つの契機としていた。
このようなこともあり、ノアブロ地区は新しい都市空間をつくりあげるだけでなく、コミュニティを再生させることが重要であった。そのためにコペンハーゲン市は、市民の声をしっかりと汲み上げて、それを反映した公共空間を整備することに留意した。
ノアブロ地区の特徴は、移民が多く住んでいることである。そこで、スーパーキーレンでは世界という多様性を表現するコンセプトを採り入れることで、この地区の特徴をも表そうと意図した。それは、ちょっとした屋外博物館のようでもある。
そして、空間的にも3つのゾーン、3つの色に分けつつ、それらに統一感をもたらすことで、多様ではある一つのネイバーフッドとしての表現が為されている。これは、細長い形状であること、また自転車専用レーンや歩道を整備することで、ここが移動回廊として位置づけられたからこそ可能な空間演出だったのであろう。
スーパーキーレンは強烈な個性を放つ空間である。一度、訪れたら「なんだこれは」という反応を人々に起こさせるであろう。しかし、社会的な問題を常に抱えてきたノアブロ地区において、このような強烈な主張は大変プラスになったのではないだろうか。どちらかといえば、コペンハーゲンのお荷物的に見られていた地区が、強烈なアイデンティティを空間表現を通じて発信させる。それは、この地区が過去とは一線を画した、ポジティブな将来を指向することを宣言させたかのような効果をもたらしているのではないだろうか。公共空間が単なる機能ではなく、その地区のメディアとしても重要であることに改めて気づかせてくれる鋭い「都市の鍼治療」の事例であると思われる。
類似事例:
017 デービス・ファーマーズ・マーケット
021 大横川の桜並木
026 みんなでつくるん台
039 サイクル・スーパーハイウェイ
040 グルドベーグ小学校のプレイグランド
043 ラベット・パーク
070 白金台のどんぐり児童遊園
072 イスラエル広場(南)
079 自由が丘の九品仏川緑道のベンチ
138 ねこじゃらし公園
156 新栄テラス
164 だんだんテラス
226 ハウザープラッド
270 自由が丘のサンセットエリアのまちづくり協定