113 クレーマー橋 (ドイツ連邦共和国)
ストーリー:
クレーマー橋は、ドイツのチューリンゲン州の州都であるエアフルトにあるランドマークである。それはブライト川に架かる橋で、その両側に木造の建物が肩を寄せ合うように建っている。これは12世紀にはつくられていた記録があるが、その当初は木造であった。その後、度重なる火事によって14世紀には石造に作り替えられる。15世紀にはエアフルトに多大な被害をもたらす大火事が起きるが、この橋だけは燃えずに済んだ。現在の建物は、その当時につくられたものである。
橋の長さは62メートル。その両側に3階建ての建物が互いに隣接して建っている。その高さは13メートルから15メートルである。これらの建物は大火事の後につくられたものである。現在の建物の数は32軒。1階は骨董屋やワイン屋、ケーキ屋やアイスクリーム屋、アート・ギャラリー、工芸品屋、レストラン、カフェなどが入っており、二階以上は住居として使われている。それは500年前の使われ方とそれほど変わっていない。それらのうちの4軒を除くと、すべてエアフルト市が所有している。
橋の長さは62メートル。その両側に3階建ての建物が肩を寄せ合うように建っている。その高さは13メートルから15メートルである。建物の一部は橋梁のアーチ型の構造物から垂れ下がるようになっている。橋の幅は26メートルであるが、道路部分の幅員は5.5メートルである。
このような橋がここに架けられたのは、エアフルトは中世時代に貿易ルート、そして巡礼ルートの結節点であったからである。それはローマとバルト海、そしてモスクワとサンチャゴ・デ・コンポステーラとを結ぶルートが交差するところであった。そのような立地にあったこと、当時の物流は船が重要な役割を果たしたこともあり、多くの商人がこの橋の上に店舗兼住居を建てたのである。
クレーマー橋は、その歴史的重要性から、特別な保存対象として位置づけられ、1967年から73年の間に総ての建物は修繕され、1985年〜86年、2002年にアーチの補強をした。クレーマー橋の博物館が、クレーマー橋の塔の中にある。クレーマー橋は、現在、クレーマー橋財団、ドイツ記念物保護財団、エリザベス・フリッツ・ティッソン・ハンブルク財団によって保全されている。
クレーマー橋は、大聖堂とともに、現在ではエアフルトの観光の目玉となっている。
キーワード:
商店街, ランドマーク, 歴史建造物, カルチャー・ランドスケープ
クレーマー橋 の基本情報:
- 国/地域:ドイツ連邦共和国
- 州/県:チューリンゲン州
- 市町村:エアフルト市
- 事業主体:エアフルト市、クレーマー協会財団
- 事業主体の分類:自治体
- デザイナー、プランナー:N/A
- 開業年:1117年以前、1325年(石造)、1472年(ほぼ現在の形)
ロケーション:
都市の鍼治療としてのポイント:
両側に商店が建ち並ぶ橋といえば、イタリアはフィレンツェのベッキオ橋が有名である。ベッキオ橋はアルノ川という大きな河川の上に架橋されたのに対し、このクレーマー橋はゲラ川の支流、ブライトシュトローム川に架けられたこともあり、橋の迫力はない。ただし、ベッキオ橋と異なり、橋の袂から橋を眺めることができる。これは、なかなかの景観である。
私の知り合いのドイツ人の都市学者は、「ドイツの都市でどこが一番魅力的か」という意地悪な質問に「エアフルト」と回答した。ドレスデン、ニュンベルグ、ミュンスター、アーヘン、バンベルク、パッサウ、リューベックといったきら星のような都市群の中から、エアフルトを選んだ彼の感性に対して、私は唸った記憶がある。そのエアフルトを代表するランドマークが、二つの角のような塔のシルエットが印象的な大聖堂とこのクレーマー橋である。
エアフルトといえば、ドイツ人はクリスマス・マルクトを思い浮かべるであろう。一番という名誉はニュンベルグが保有しているが、それに次ぐのは多くの人がエアフルトであると指摘する。そして、このクリスマス・マルクトが開催されるのが、大聖堂の広場である。しかし、エアフルト最大の祭りはクリスマス・マルクトではなく、毎年6月に開催されるお祭りで、これは、クレーマー橋上とその周辺で開催される。
都市において、ランドマークの重要性はその都市のアイデンティティを発現するうえでも極めて重要である。エアフルトは人口が20万人をちょっと越えるぐらいの都市であるが、世界に誇れるランドマークを二つ持っている。そして、それをしっかりと保全すると同時に、うまく活用している。歴史的ランドマークを見事に活かすということも「都市の鍼治療」であると思われる。
類似事例:
003 ゲーツヘッド・ミレニアム・ブリッジ
115 ミラノ・ガレリア
172 ハッケシェ・ヘーフェの改修
177 ペイリー・パーク
178 ブルックリン橋
215 眼鏡橋の保全運動
219 カペル橋
331 ボローニャのポルティコ
・ ベッキオ橋、フィレンツェ(イタリア)
・ ミレニアム・ブリッジ(ロンドン、イギリス)
・ アラミリョ橋(セビージャ、スペイン)
・ ムヘール橋(ブエノスアイレス、アルゼンチン)
・ カレル橋(プラハ、チェコ)
・ 錦帯橋(岩国市、山口県)
・ 眼鏡橋(長崎市、長崎県)