045 ユルバ・ブエナ・ガーデンス・エスプラナーデ(アメリカ合衆国)
ストーリー:
ユルバ・ブエナ・ガーデンスは、サンフランシスコのミッション・ストリート、フォルサム・ストリート、サード・ストリート、フォース・ストリートに囲まれた二つのブロックに及ぶ公共公園のことである。第一期はミッション・ストリートとハワード・ストリートに囲まれた都心に近いブロックで、これは1993年の10月に開業した。第二期はハワード・ストリートとフォルサム・ストリートに囲まれたブロックで1998年に開業した。第一期と第二期地区は、ハワード・ストリートに架かる歩行者橋によって結ばれている。
ユルバ・ブルナ・ガーデンズの土地はサンフランシスコ再開発局によって所有されており、同局を中心として、オリンピア・アンド・ヨーク、マリアット・コーポレーションなどから成る共同プロジェクトとして1985年着工した。ジョージ・R・モスコーン・コンベンション・センター、マリアット・ホテルが先行して完成し、次いでエスプリャナーダと呼ばれる緑地空間と芸術劇場、ギャラリーが1993年秋にオープンした。
このエスプリャナーダと芸術劇場、ギャラリーは、ユルバ・ブルナ・ガーデンズの目玉といえる施設であり、これはサンフランシスコの多様で洗練された芸術界に属するあらゆる人々との協力のもとに計画され、つくられたものである。コンセプトの特徴は、特定されていない文化目的のための施設・空間を創造することであり、地元の小さな組織や独立した芸術家の利用を念頭にいれてつくられたことである。これは、サンフランシスコ市が、芸術家が多く集まり、また多様な文化が混在していることから、文化というカテゴリーが都市のアイデンティティになりうる要素を有していたために成立できたコンセプトである。
ユルバ・ブエナとは、まだカリフォルニアがメキシコに所属していた時のサンフランシスコの旧名である。サンフランシスコの地域アイデンティティをしっかりと発露したいという意志が、この名前からも推察できる。
ユルバ・ブエナ・ガーデンスは1999年にルーディー・ブルナーのアーバン・エクセレンス賞の金メダルを受賞している。審査員は、デザインのよさは勿論のこと、デザインを決定するうえでの参加形式を高く評価していた。
キーワード:
都市公園,集客施設,公共広場,再開発
ユルバ・ブエナ・ガーデンス・エスプラナーデの基本情報:
- 国/地域:アメリカ合衆国
- 州/県:カリフォルニア州
- 市町村:サンフランシスコ
- 事業主体:サンフランシスコ都市再開発局
- 事業主体の分類:自治体
- デザイナー、プランナー:LDA Architects、MGA Partners
- 開業年:1993
- 再開業年:1998
ロケーション:
都市の鍼治療としてのポイント:
ユルバ・ブエナ・ガーデンスはサンフランシスコの都心の真ん中にある敷地の再開発である。
とてつもない経済性が期待できる敷地にもかかわらず、それ自体では直接的にはお金を産み出さない公園を整備することをサンフランシスコ再開発局は決定した。マーケットの原理ではつくることができない、『大都市の真ん中の緑の広場』をつくりえたことは、このプロジェクトが住民のためのプロジェクトであることを物語っており、加えてアーバン・ランドスケープという観点からみて大変意義のあるプロジェクトであると考えられる。この度量の深さがサンフランシスコの素晴らしさであり、肉を切らせて骨を絶つ、の極意をいく都市再開発事例である。
現在では、このユルバ・ブエナ・ガーデンスでは太極拳の練習や犬の散歩などを楽しむ住民で溢れている。ちょっとしたコンサートなどのイベントも行われている。
ユルバ・ブエナ・ガーデンスにいると、周りの都市の喧噪から遮断された素晴らしい空間的体験ができる。サンフランシスコの都市の魅力を大幅にアップさせている2ブロックである。経済的価値が高いところにおいてこそ、ユルバ・ブエナ・ガーデンスのような緑の空間を創出するという度胸がもたらす、素晴らしく絶妙なる「都市の鍼治療」であると思う。
類似事例:
044 フィニックス・ゼー
105 エスプラナーデ公園
110 バリグイ公園
168 アンドレ・シトロエン公園
176 ブライアント・パークの再生事業
226 ハウザープラッド
309 BLOX
334 ラ・ヴィレット公園
・ グエル公園(バルセロナ市、スペイン)