076 自転車ステーション ミュンスター (ドイツ連邦共和国)

076 自転車ステーション ミュンスター

076 自転車ステーション ミュンスター
076 自転車ステーション ミュンスター
076 自転車ステーション ミュンスター

076 自転車ステーション ミュンスター
076 自転車ステーション ミュンスター
076 自転車ステーション ミュンスター

ストーリー:

 ミュンスター市の中央駅にある自転車ステーション(Radstation)は、ドイツ最大の駐輪場である。それはミュンスター市の委託を受けて、ヴェストファーリア建設会社(Westfälische Bauindustrie GmbH)によって管理運営されている。
 この駐輪場があった駅西口は、ベルリン広場と呼ばれ、多くの自転車が駅前に無造作に駐輪され、混沌とした状況であった。そのような状況を改善させるために、当時の連邦政府大臣であったフランツ・ミュンテフェリングが、このベルリン広場を改めてデザインし直し、駅下の地下道をも併せて改修することにした。そして、自転車ステーションがベルリン広場の中央につくられることになった。
 自転車センターの施設はほとんどが地下に設置され、ベルリン広場の地上部分には、ガラスで蔽われた入り口だけが屹立している。このガラスは、地下まで太陽光を透過させるので、地下部分も明るくなっている。
 自転車センターの建設費は1300万ドイツマルクであり、連邦政府とノルトライン・ヴェストファーレン州とで折半された。
 このセンターには3300台の自転車が駐輪でき、自転車の修理や洗浄などのサービスも提供されている。さらに、自転車のレンタル・サービスもある。自転車センターでは、空間を効率的に使うために、自転車は二段で駐輪されている。年間パスを購入すると、個人用の駐輪場を確保することができる。自転車での移動に重宝するバックパックや雨具などの貸し出しもある。
 自転車ステーションの利用者の2/3がミュンスターにバスか電車で到着し、自分の自転車で勤務先まで行く。自転車ステーションの評判はよく、有料メンバーの会員数は季節によって変動するが、ほぼ2300〜2900を数える。2000年には交通建築賞を受賞している。

キーワード:

自転車,マルチモーダル

自転車ステーション ミュンスター の基本情報:

  • 国/地域:ドイツ連邦共和国
  • 州/県:ノルトライン・ヴェストファーレン州
  • 市町村:ミュンスター市
  • 事業主体:Westfälische Bauindustrie GmbH (ミュンスター市)
  • 事業主体の分類:自治体 民間
  • デザイナー、プランナー:Franz Müntefering
  • 開業年:1999年

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 ドイツで自転車都市といえば、バイエルン州のエアランゲンとノルトライン・ヴェストファーレン州のミュンスターである。エアランゲンはそれほど大きな都市ではないが、ミュンスターは人口28万人、面積は302平方キロメートルと大きい。これだけの規模の都市であるにも関わらず、自転車を中心的な交通手段として位置づけている。
 ミュンスターの自転車の交通分担率をみると38%(2007年)。これは、ドイツ平均の9%に比べて遙かに高い。環境都市として知られているフライブルクが19%、カールスルーエが16%であることを考えても、この数字が相当、高いことが分かる。
 このような高い自転車の利用率を支えているのが自転車のためのインフラである。1950年代頃からミュンスター市は自転車利用推進政策を展開し始めるのだが、最初に手がけたのは自転車専用道路の整備である。これは、最近では300キロメートルにも及ぶほど整備されている。自転車のための信号などは1960年代の終わり頃から整備し始められ、1980年からは一方通行での自転車優先政策、1990年からはバイク・アンド・ライドの導入、自転車のための道路標識の設置(これはミュンスターでつくられたものが、その後、ドイツ中に普及する)、バス・レーンの自転車走行の許可、などの施策が遂行される。
 そして、1999年につくられたのがこの自転車ステーションである。そこは単なる駐輪場ではなく、修理などもできる自転車のクリニックのようであり、また、いろいろな関連部品も購入できる。それだけでなく、レンタサイクルのサービスまでもが提供される。まるで自転車の総合商社のようなビルなのである。私も何回かここでレンタサイクルを利用したことがあるが、大変、快適である。駅のすぐそばにあるので、電車から降りてすぐ自転車で街中を巡ることができるのは日帰り観光者にとっては有り難い。
 ミュンスターの中央駅に洗練されたデザインで建つ建物は、城壁跡地に整備された自転車専用道路のプロムナードとともに、自転車都市ミュンスターのシンボルとしての双璧を為している。

類似事例:

038 サイクルスランゲン
039 サイクル・スーパーハイウェイ
232 ミュンスターの自転車プロムナード
・ レスター市の駐輪場、レスター(イギリス)
・ アルバーツラントの小学校の駐輪場、アルバーツラント(デンマーク)