文化・教育・医療福祉施設に関する事例

332 オルセー美術館

(フランス共和国)

オルセー美術館は1900年のパリ万博とのときにつくられたオルセー駅舎を再生したものである。セーヌ川河畔という一等地にあるにも関わらず半世紀近く放置されていた。市場の開発圧力を躱(かわ)しながらふさわしい機会が訪れるのを辛抱強く待ち続けた素晴らしい事例であると考えられる。

317 ウッチのEC1科学・技術センター

(ポーランド共和国)

ウッチはポーランドの国土のほぼ中心に位置する都市。工業都市であったウッチを彩る建築群のアイデンティティは強烈で明確だ。過去の工業の栄光はもう戻らないであろう。しかしそれらを忘却させるのではなく、工業都市の遺産を活用することでこそ都市の未来が拓かれる。廃墟と化していたEC1だが、今は都心部の明るい将来を示すかのようにリフォームされ、多くの人々が訪れている。

316 エルプフィルハーモニー

(ドイツ連邦共和国)

エルプフィルハーモニーは欧州最大の再開発プロジェクトであるハンブルクのハーフェンシティに建つコンサート・ホール。つくられたと同時にその都市のイコンとなるような建築はなかなか多くない。都市のアイデンティティ構築、都市観光における目的地づくり、シビック・プライドの醸成など、いろいろなプラスの側面が考えられるが、エルプフィルハーモニーはそれらに加えて新たに見事な公共空間を創出したこと、市民が音楽に親しむ機会を大幅に増やしたことなどからその効果は極めて大きい。

312 ワルシャワ王宮の再建

(ポーランド共和国)

ポーランド君主たちの住居であったワルシャワ王宮は、1944年の「ワルシャワ蜂起」の失敗後、ナチス・ドイツによって徹底的に破壊された。戦後、ポーランド人の寄付によって再建事業がスタートし、2019年、半世紀に及ぶ王宮の復元事業が完成した。2022年には175万人の観光客が訪れている。

309 BLOX

(デンマーク王国)

コペンハーゲンの運河沿いに新たに出現した、レム・クールハウスが設計したBLOXの建物は、都市の文脈を上手く掴んで、その課題を建築によって解決しようとする大胆で見事な試みである。BLOXはウォーターフロント・エリアに新たな目的地性を与え、それまでアクセスが難しかった運河は新たなる公共的な活動の場へと変化しつつある。

303 トンデムン・デザインプラザ(東大門デザインプラザ)

(大韓民国)

トンデムン・デザインプラザは2014年4月にソウルのトンデムン(東大門)運動場跡地につくられたソウルの新しいランドマークである。ザハ・ハディドの設計による、奇抜ではあるが、圧倒的な存在感を纏う建築と、そこに入ったテナント群、博物館、イベント等の魅力に惹かれ、オープン以降、一日3万人が訪れる集客施設となっている。

289 ドイツの森

(ブラジル連邦共和国)

ドイツの森はクリチバの郊外ヴィスタ・アレグレ地区にある公園。ドイツからクリチバに移民してきた人々に感謝することを目的として、ドイツの文化や伝統に敬意を表するためにつくられたものである。人々の多様性は都市の強みであるという認識が高まっているなか、このような移民の母国の文化・歴史をコンセプトに活かした公共空間づくりは非常に賢明なアプローチであると考えられる。

283 京都芸術センター

(日本)

京都芸術センターは京都市における芸術の総合的な振興を目的として、閉校した明倫小学校の跡地に開設された。地域コミュニティの拠点としての記憶をしっかりと継承しつつ、芸術鑑賞の場、そして若い芸術家達を育成する場所として運営されている。

279 京都国際マンガミュージアム

(日本)

京都市の烏丸御池駅という京都屈指の一等地に立地する京都国際マンガミュージアム。昭和初期に建てられた龍池小学校の校舎を活用し、地元市民との協議を経て2006年に開館した京都市と京都精華大学の共同事業である。2017年には来館者300万人を記録。外国人の訪問客も多く、京都市の調査では外国人の市内訪問先トップ25にランクインしている。

271 ヘルシンキ中央図書館(Oodi)

(フィンランド共和国)

ヘルシンキ中央図書館は、個人ではアクセスが難しいものも、「共有」を通じて誰もが必要なものにアクセス可能になるという、図書館の新しい役割を教えてくれる。図書館が貸すのは「本」や「CD」に限られる必要はない。音楽スタジオ、撮影スタジオ、仕事場(オフィス)、ゲーム機とゲーム・ソフト、高級工具であっても構わないのである。

266 石巻市震災遺構大川小学校

(日本)

2011年3月11日、東日本大震災が起きた。宮城県石巻市釜谷地区にあった大川小学校では、学校のそばを流れる北上川を遡上してきた津波によって児童・教職員84名が犠牲となり、小学校周辺の地区でも418名が犠牲となる惨事となった。この被災した小学校の遺構をどうするのかを検討することは、遺族にとって、住民にとって、そして行政にとって難しい課題となった。

265 さいき城山桜ホール

(日本)

住民参加がなぜ必要なのか。それをする意義はどこにあるのか。このような質問に見事に回答してくれるのが「さいき城山桜ホール」である。逆境を乗り越えるために市民参加を徹底的に推し進めた結果、魅力あふれる市民の広場が実現した。2021年、国土交通省「都市景観大賞」受賞。

225 ニューヨーク公共図書館本館

(アメリカ合衆国)

ニューヨーク公共図書館は92館からなる、民間の非営利組織によって運営される図書館システムである。名前はパブリック・ライブラリーといかにもニューヨーク市立図書館のような印象を与えるが、市立図書館ではない。それは多くの人がイメージする図書館像を打ち砕く。そこでは就職ガイダンスやダンス教室、子供のためのプログラミング教室、学校の授業補習、超一流の人達による講演会などが行われる。

221 平和の鐘公園

(ブラジル連邦共和国)

平和の鐘公園はブラジルの南部にあるサンタ・カタリーナ州のセウソ・ラーモスにある。そこには、長崎県から送られた鐘が、鶴を模したモニュメントにて展示されている。平和の鐘は日本以外では世界に二つしかない。一つは国連の本部、そしてここセウソ・ラーモスである。

219 カペル橋

(スイス連邦)

スイス中央部に位置するルツェルンのカペル橋はヨーロッパで最古の屋根付きの木橋であり、また現存するトラス橋としても世界最古のものである。この橋がルツェルンの宝であるというのは間違いないが、私はルツェルンが有するさらに輝くような宝は、ルツェルンの市民が、それを宝であると強く意識し、それを共有していることだと考える。これこそがルツェルン市を特別なものとし、そこに住む人達にシビック・プライドという帰属意識を持たせる要因になっているのではないだろうか。

216 いわき震災伝承みらい館

(日本)

地震、津波に加えて、原発事故が重なるという未曾有の複合災害に襲われたいわき市の震災経験を次代に継承し、震災の記憶や教訓を風化させず、危機意識や防災意識の醸成等を図ることを目的とした「いわき市震災メモリアル事業」の中核拠点施設。

208 クリチバの植物園

(ブラジル連邦共和国)

ブラジル・パラナ州の州都クリチバの都心からほど近いところにゴミ捨て場となっていた保健省の土地があった。環境都市宣言をした当時、市長であったレルネル氏は、このゴミ捨て場を植物園として整備しようと考えた。温室は地元の建築家アブラーオ・アサードによって設計され、現在では、クリチバ市のランドマークとしても非常に市民に親しまれており、結婚式の記念写真の人気撮影スポットとなっている。

203 デンバー美術館(ハミルトン・ビルディング)

(アメリカ合衆国)

デンバー美術館はデンバーのシビック・センター(行政地区)にある。ダニエル・リベスキント設計のハミルトン・ビルディングは、その斬新な意匠によって、ほとんど一夜にしてデンバー市の重要なランドマークとして人々に認識されることになった。また都市計画的にも、行政地区の西端に集客施設をつくり、都心部を西に拡張させる役割も果たしている。

202 デッサウのバウハウス・ビルディングの保全

(ドイツ連邦共和国)

デッサウにあるバウハウス・ビルディングは1926年にウォルター・グロピウスによって「バウハウスのアイデアを宣言する」ことを目的に計画され、設計された。100年前とほぼ同じ形で屹立するバウハウス・ビルディングをみると、これが現代においても存在していることの有り難みを痛烈に感じる。現代建築がつくられ始めてから一世紀近くの歳月が経ち、それらの歴史的重要性が認知され、この建築物のように世界遺産にも指定される価値を有し始めている。

200 世田谷美術館

(日本)

既存の美術館の硬直性を、設計という創造的行為によって解放させようとした内井昭蔵と建築設計事務所のスタッフの熱意が、生活美術館、オープン美術館、公園美術館という斬新な視座をもたらし、それを「健康な建築」という大きな理念で包み込むことに成功した。

197 大正中央中学校のリノベーション

(日本)

このプロジェクトの面白いところは、それまでただ受動的に与えられていた、教室という空間に対して、学生達が能動的に関与し、それを創造する機会を提供できたことである。それによって、その空き教室に対しての学生達の見方がコペルニクス的転換を果たしたと考えられる。

191 ブラジリアの大聖堂

(ブラジル連邦共和国)

ブラジルを代表する建築家オスカー・ニーマイヤーの設計によるブラジリアの大聖堂。その建築的造形の美しさとカトリック国としての存在を強く新首都において主張するこの大聖堂の存在は、ブラジルという国のアイデンティティを強烈に主張し、その都市の象徴としての役割を見事に果たしている。

189 ポンピドー・センター

(フランス共和国)

パリはホーブール地区の市場跡地に、ポンピドー大統領の指示によって1977年につくられたモダン・アート(現代美術)のための文化施設。そのデザインは、当時、随分と突飛な印象を人々に与えた。設計者のレンゾ・ピアノはその意図を「いかめしい文化施設のイメージを破壊したかった」(Figaro, 2017年2月)と述べている。

183 ドルトムンダーUタワー

(ドイツ連邦共和国)

もとはドイツでも最大の生産量を誇るドルトムント・ユニオン・ビールの醸造所かつ貯蔵所の建物であったドルトムンダーUタワーは、現在、展示・研究・教育、そして製作活動といった多様な機能を有した新しいタイプの文化拠点となっている。

182 鶴岡まちなかキネマ

(日本)

鶴岡まちなかキネマは、織物工場の移転をきっかけとして立ち上がったプロジェクト。映画館だけでなく、文化施設として、落語や朗読会、ミニ・コンサート、講演会などもここで行われている。旧織物工場というストックを過去のものとして保存するというアプローチではなく、現在の生活の中に融合させ、再生させている。

179 出町座

(日本)

出町座は京都市の出町柳駅そばにある桝形商店街の中にある映画を中心とした文化複合施設である。薬局の跡地に2017年に開業した。出町座がある桝形商店街の雰囲気は素晴らしい。この街があるからこそ出町座も映えるし、また出町座があることで桝形商店街の魅力も増すという素晴らしい相乗効果がここでは観察することができる。

163 サントスの珈琲博物館

(ブラジル連邦共和国)

港町サントスは、珈琲の出荷港として20世紀前半には大変栄えていた。1922年にそこにつくられた珈琲取引所の建物はサントス市内でも、最も華美な建物として捉えられていた。この珈琲取引所を珈琲博物館にしたことで、サントス市は由緒ある歴史的建築物を有効に活用することに成功した。

159 聖母教会の再建

(ドイツ連邦共和国)

聖母教会は「バロックの真珠」と形容される素晴らしいバロックの建築群の中でも、その優雅で華やかなシルエットは一際目立っている。復元された聖母教会は、その優雅さを湛えつつも、オリジナルの瓦礫である暗い石と、新たに使われた明るい砂岩の石との対比は、歴史の傷跡を観る者に強烈に訴えかける圧倒的な存在感を纏っている。

158 ベルリン市立ユダヤ博物館

(ドイツ連邦共和国)

ベルリン市立ユダヤ博物館は、4世紀から現在に至るまでのドイツにおけるユダヤ人の社会、政治、文化的な歴史を展示している。それは、ドイツにおけるホロコーストという悲惨な歴史的事実を経て、それらをこれまでのドイツにおけるユダヤ人の歴史の文脈の中で位置づけ、展示することも意図している。

155 ストックホルム市立図書館

(スウェーデン王国)

インターネットの普及によって、図書館には人々が集まり、交流する、より広場的な機能が求められているように思われる。ストックホルム市立図書館は、まさに人が来たくなるような空間的魅力に溢れている。

144 センター・フォア・アルタナティブ・テクノロジー

(ウェールズ)

センター・フォア・アルタナティブ・テクノロジー(C.A.T.)の特筆すべきところは、代替技術の新しいアイデアを湧き水のように次から次へと生み出しているという点である。このような創造的な組織へと成長した要因は、「人を惹きつける純粋さ」と「自己革新を伴う進化プロセスを内包していること」だと考察される。

135 かやぶきゴンジロウ

(日本)

千葉県の安房半島の先端にある館山の塩見地区。この集落に、見事な茅葺き民家「ゴンジロウ」が存在する。茅葺きの家は、日本の農村の原風景の重要な構成要素である。しかし、それらは農村が近代化し、その文化が衰退していくのと並行するように田園風景から消えつつある。その、まさに田園の象徴のような茅葺き民家を再生するために動き出したのが、当時、千葉大学の教員であった岡部明子氏であった。

134 アカデミー・モント・セニス

(ドイツ連邦共和国)

アカデミー・モント・セニスは、ルール地方にあるヘルネ市のモント・セニス炭鉱跡地につくられた研修施設を中核とした複合機能施設である。そこには、研修者向けの宿泊施設、さらには図書館、地域センター、オフィス、そしてヘルネ市の派出所などが入っている。

132 ダイナミック・アース

(スコットランド)

これは、スコットランド唯一のミレニアム・プロジェクトであり、地球とその環境に関しての展示が為されている地球環境教育施設である。地球の資源が有限であること、環境に配慮しないで活動することによって、必ずしっぺ返しが来ることを、強制的ではなく自らの思考の結果として得られるような見事な展示構成がなされている。

126 オスロのオペラハウス

(ノルウェー王国)

筆者は、取材のためにオスロ市を滞在中、3回ほどこのオペラハウスを訪れたが、昼夜を問わず常に人で溢れていた。オペラを観劇しない人々もここを訪れているのである。

119 テネシー水族館

(アメリカ合衆国)

淡水水族館として世界級のテネシー水族館は、チャタヌーガ市の再生を象徴するランドマーク。

118 黒壁スクエア

(日本)

黒壁スクエアのユニークなところは、地元産業ではないガラスを街づくりのテーマにしたことである。通常、街づくりを考えるうえでは、地元の歴史などそのアイデンティティを活かすことが有効であり、王道であると捉えられている。

109 オスカー・ニーマイヤー博物館

(ブラジル連邦共和国)

ここは更地に新しくつくった訳ではない。人々から忘れ去られていたニーマイヤーの建築物をも新たに再生するという意義も有していたのである。計画当時、パラナ州には美術系の博物館がなかった。

106 国立映画博物館(トリノ)

(イタリア共和国)

十分にそのポテンシャルが発揮できていなかったトリノのランドマークを観光資源として再生させることに成功した事例である。この博物館はその魅力を発現させるうえで様々な工夫が施され、そして成功している。そして、それが一人の情熱的な女性によって具体化されたところが素晴らしい。

096 カルチャーセンター・ディーポ、ドルトムント

(ドイツ連邦共和国)

歴史的建築物を保全しただけでなく、新たな雇用を創出し、また新しい芸術・工芸センターをドルトムントに供給することになったが、極めてコミュニティにとって価値のあったことは、ここが公共広場として機能することで、コミュニティの紐帯を強化する役割を果たしたことである。

092 知識の灯台

(ブラジル連邦共和国)

クリチバ市の政策的課題として、経済格差の隔たりと児童の教育問題がある。クリチバは90年代にこの「知識の灯台」や「環境寺子屋」といった子供の生活環境を改善させる試みに多く取り組んだ。

088 ジズコフ駅の再生プロジェクト

(チェコ共和国)

無骨で巨大な産業建築の中に、お洒落なお花畑やバーなどがある。私が訪れた時は、ランドスケープの展示がされていたが、それを眺めながらゆったりと産業遺産の巨大な構造物の中でビールを飲むのは、なかなかの空間体験である。

083 明治学院大学の歴史建築物の保全

(日本)

景観を公共財として捉えれば、これら創立時以来の歴史建築物を明治学院大学が保全したことによって、この周辺の街並みも良質な景観を確保することができた。

071 稲米故事館

(台湾)

日本の占領時代に、ここには食料の貯蔵を目的とした穀物倉庫と加工工場が建設された。すべて煉瓦造りで、屋根は日本の瓦でできており、麒麟や獅子などによって飾られている。これらは今日に至るまで、当時のまま保存されている。

065 シュピネライ

(ドイツ連邦共和国)

ドイツ再統一後、競争力の無さから閉鎖され、放置された広大な工場跡地がアーティストたちの活動の場として復活。ライプチッヒ市でも若者にも人気のある文化ゾーンへと変容した。何か創造したくなるような気分にさせられる刺激的な場所。

055 ビルバオ・グッゲンハイム美術館

(スペイン)

スペインは北東部に位置するバスク州の首都ともいえるビルバオ。鉄鋼業や造船で栄えるも、1970年代以降、これら産業が衰退すると同時に人口も縮小しはじめる。工業都市からサービス産業へと産業構造の大転換を図ることになり、そのために大きく都市開発を推進するのだが、その起爆剤となったのがビルバオ・グッゲンハイム美術館であった。

046 ギネス・ストアハウス(ギネスビール博物館)

(アイルランド)

ギネスのビール醸造所は1902年から1904年の間にダブリンの近郊にて建造された。それは、ビールの醸造所としてアーサー・ギネス・サン会社によってつくられた。シカゴ・スタイルの巨大な構造物はアイルランド最初の鉄鋼でつくられた高層建築であった。それは、ダブリンの西地区のランドマークとして人々に親しまれていた。しかし、1980年代には醸造所としては時代遅れとなり、この醸造所を移転して、ストアハウスは1986年に閉鎖された。

040 グルドベーグ小学校のプレイグランド

(デンマーク王国)

コペンハーゲンの都心からすぐ近くにあるノアブロ地区は緑も少なく、また公共空間も不足していた。そのような状況に対処するために、グルドベーグ小学校の校庭を広く開放させることで、児童はもちろんのこと、若者や大人もここでスポーツをしたり、休息をしたりする工夫をした。
 グルドベーグ小学校の建物周りのオープンスペースは、公共広場であったり、住民のための遊び場だったり、グルドベーグ小学校の児童の校庭だったりと、その時々の利用者の用途に分けて、多様な積極的な使われ方ができるようにした。 

033 ジェノサイド・メモリアル

(ルワンダ共和国)

ルワンダのおぞましい歴史として、1994年に起きた国民同士が殺しあう大虐殺がある。これは、以前の宗主国であるベルギー人が、支配をしやすくするために、ルワンダ人をフツ族とツチ族に分けて、ツチ族にフツ族を支配させる構造をつくりあげたことによって生じた悲劇である。

031 剥皮寮(ボーピーリャウ)の歴史保全

(台湾)

台北市萬華区の路地裏に「剥皮寮(ボーピーリャウ)」と言う伝統的街並みを保全した地区がある。台北の観光名所である龍山寺のそばにある、数少ない清朝時代の面影を残す町並みが保存された地区だ。清朝時代の伝統的な店屋や、日本統治時代の建物などが再生されているのだが、この再生が非常に丁寧に行われている。

026 みんなでつくるん台

(日本)

「みんなでつくるん台」とは、岩手県は平泉町にある平泉中学校の新校舎に計画された交流ホールという大空間の使い方及びその空間にふさわしい家具のデザイン・製作に関する一連の取り組みの総称である。

019 針金オペラ座

(ブラジル連邦共和国)

針金オペラ座はブラジルのパラナ州クリチバ市にあるオペラハウスである。クリチバ市の都心から10キロメートルぐらい離れた北側の丘陵地帯にある。そこは、クリチバ市が所有していた石切場の跡地で、以前はダイナマイトを使って採石していた。しかし、市街地が発達してきたため、ダイナマイトが使用できなくなり、放置されたままになった。

013 ローウェル・ナショナル・ヒストリック・パーク

(アメリカ合衆国)

ローウェル・ナショナル・ヒストリカル・パークは、歴史保全をし、なおかつそれを博物館として展示し、解説するという機能を持つ都市公園としては全米初のものである。

009 ツォルフェライン

(ドイツ連邦共和国)

 IBAエムシャーパークによって、ルール地方は産業遺産を活用した斬新なプロジェクトを展開する。その象徴が、世界文化遺産に指定されたエッセンにあるこのツォルフェライン炭鉱である。

007 直島の和カフェ ぐぅ

(日本)

 多くの観光客が訪れる瀬戸内海の直島。しかい食事をする場所やカフェがない。そのような問題を島民から聞いた香川大学の古川先生が、2006年、ゼミ生と共に、島の一軒家を借りてカフェを開業した。

インタビュー

ジャイメ・レルネル氏インタビュー

(建築家・元クリチバ市長)

「よりよい都市を目指すには、スピードが重要です。なぜなら、創造は「始める」ということだからです。我々はプロジェクトが完了したり、すべての答えが準備されたりするまで待つ必要はないのです。時には、ただ始めた方がいい場合もあるのです。そして、そのアイデアに人々がどのように反応するかをみればいいのです。」(ジャイメ・レルネル)

鈴木伸治氏インタビュー

(横浜市立大学国際教養学部教授)

ビジネス、観光の両面で多くの人々をひきつける港町・横浜。どのようにして今日のような魅力ある街づくりが実現したのでしょうか。今回の都市の鍼治療インタビューでは、横浜市のまちづくりに詳しい、横浜市立大学国際教養学部の鈴木伸治教授にお話を聞きました。

柴田久 福岡大学教授インタビュー

(福岡大学工学部社会デザイン工学科教授)

都市の鍼治療 特別インタビューとして、福岡大学工学部社会デザイン工学科教授の柴田 久へのインタビューをお送りします。
福岡市の警固公園リニューアル事業などでも知られる柴田先生は、コミュニティデザインの手法で公共空間をデザインされています。
今回のインタビューでは、市民に愛される公共空間をつくるにはどうすればいいのか。その秘訣を伺いました。

高尾忠志(地域計画家)インタビュー

(地域計画家)

今回の「都市の鍼治療インタビュー」は、九州の都市を中心に都市デザインに携わっている地域計画家の高尾忠志さんへのインタビューをお送りします。優れた景観を守ための開発手法や、複雑な事業を一括して発注することによるメリットなど、まちづくりの秘訣を伺います。

鳴海邦碩氏インタビュー

(大阪大学名誉教授)

1970年代から長年にわたり日本の都市計画・都市デザインの研究をリードしてきた鳴海先生。ひとびとが生き生きと暮らせる都市をめざすにはどういう視点が大事なのか。
これまでの研究と実践活動の歩みを具体的に振り返りながら語っていただきました。

中村ひとし氏インタビュー

(クリチバ市元環境局長)

シリーズ「都市の鍼治療」。今回は「クリチバの奇跡」と呼ばれる都市計画の実行にたずさわったクリチバ市元環境局長の中村ひとしさんをゲストに迎え、お話をお聞きします。

対談 福田知弘 × 服部圭郎

(大阪大学サイバーメディアコモンズにて収録)

お金がなくても知恵を活かせば都市は元気になる。ヴァーチャルリアリティの専門家でもある福田先生に、国内・海外の「都市の鍼治療」事例をたくさんご紹介いただきました。聞き手は「都市の鍼治療」伝道師でもある、服部圭郎 明治学院大学経済学部教授です。

対談 阿部大輔 × 服部圭郎

(龍谷大学政策学部にて収録)

「市街地に孔を開けることで、都市は元気になる。」(阿部大輔 龍谷大学准教授)
データベース「都市の鍼治療」。今回はスペシャル版として、京都・龍谷大学より、対談形式の録画番組をお届けします。お話をうかがうのは、都市デザインがご専門の阿部大輔 龍谷大学政策学部政策学科准教授です。スペイン・バルセロナの都市再生に詳しい阿部先生に、バルセロナ流の「都市の鍼治療」について解説していただきました。

岡部明子氏インタビュー

(建築家・東京大学教授)

「本当に現実に向き合うと、(統計データとは)違ったものが見えてきます。この塩見という土地で、わたしたちが、大学、学生という立場を活かして何かをすることが、一種のツボ押しになり、新しい経済活動がそのまわりに生まれてくる。新たなものがまわりに出てくることが大切で、そういうことが鍼治療なのだと思います。」(岡部明子)

今回は、建築家で東京大学教授の岡部明子氏へのインタビューをお送りします。

土肥真人氏インタビュー

(東京工業大学准教授)

今回の「都市の鍼治療インタビュー」は、東京工業大学准教授の土肥真人氏へのインタビューをお送りします。土肥先生は「エコロジカル・デモクラシー」をキーワードに、人間と都市を生態系の中に位置づけなおす研究に取り組み、市民と共に新しいまちづくりを実践されています。

饗庭伸教授インタビュー

(東京都立大学都市環境学部教授)

人口の減少に伴って、現代の都市ではまるでスポンジのように空き家や空きビルが広がっています。それらの空間をわたしたちはどう活かせるのでしょうか。『都市をたたむ』などの著作で知られる東京都立大学の饗庭 伸(あいば・しん)教授。都市問題へのユニークな提言が注目されています。饗庭教授は2022年、『都市の問診』(鹿島出版会)と題する書籍を上梓されました。「都市の問診」とは、いったい何を意味するのでしょうか。「都市の鍼治療」提唱者の服部圭郎 龍谷大学教授が、東京都立大学の饗庭研究室を訪ねました。

お話:饗庭 伸 東京都立大学都市環境学部教授
聞き手:服部圭郎 龍谷大学政策学部教授