136 プロムナード・プランテ (フランス共和国)

136 プロムナード・プランテ

136 プロムナード・プランテ
136 プロムナード・プランテ
136 プロムナード・プランテ

136 プロムナード・プランテ
136 プロムナード・プランテ
136 プロムナード・プランテ

ストーリー:

 プロムナード・プランテ、別名クーレ・ヴェルトはパリの12区にある4.9キロメートルに及ぶ世界で最初に高架橋につくられた直線上の回廊公園である。それは、郊外鉄道ヴィンセンス線の廃線跡につくられた。バスティーユ・オペラ座から東に300メートルほどいった場所を起点として、環状ベルトウェイと交叉する終点とを結ぶ。バスティーユ・オペラ座の周辺では、「美術高架橋(Viaduc des Arts)」の上部空間を占め、地表から10メートルの高さでパリ市街地を望むことができる。
 地表とは階段、エレベーターなどで結ばれているが、一度、このプロムナード・プランテに上ると自動車をまったく意識せずに、パリの空中散歩を楽しむことができる。
 プロムナード・プランテは、ルイリー公園と交叉する場所からは地表に降り、歩行者専用モールのような空間となる。幾つかのトンネルを抜け、緑溢れる回廊をしばらく行くと終点のベルトウェイに到着する。パリ市内では、他にも鉄道路線跡を公園等に改修した事例がいくつかあるが、プロムナード・プランテは、高架橋の上を緑地公園とした最初の事例である。
 ヴィンセンス線はバスティーユ駅とヴィンセンス地区を経由して、ヴェルヌイ・レトンとを結ぶ路線で1859年に開業した。そして、開業から110年後の1969年には廃線となった。しばらく、そこは放っておかれていたのだが、1980年頃から再開発が検討され始める。1984年にバスティーユ駅が壊され、バスティーユ・オペラ座(新オペラ座)がつくられることになり、ルイリーの操車場は公園へと再整備された。そして、1986年には廃線跡はプロムナード・プランテとして整備されることが計画された。

キーワード:

ランドスケープ, 公園, 歩道

プロムナード・プランテ の基本情報:

  • 国/地域:フランス共和国
  • 州/県:イル・ド・フランス地域圏
  • 市町村:パリ市
  • 事業主体:パリ市
  • 事業主体の分類:自治体 
  • デザイナー、プランナー:Jacques Vergely / Philippe Mathieux
  • 開業年:1993年

ロケーション:

都市の鍼治療としてのポイント:

 2018年現在、ニューヨークのハイラインが尋常ではないほどの注目を受け、周辺の地価も高騰している。日本でも、この都市の鍼治療のデータベース(ファイル番号53)でも紹介されているが、実は鉄道高架橋を歩行者空間が主体である公園として整備したのは、このパリのプロムナード・プランテの方が先輩格である。実際、ニューヨークのハイラインのコンセプトを考えるうえでは、このプロムナード・プランテは結構、参考にしたようである。
 1993年にこの公園がつくられた時、多くのパリ市民はそれを金の無駄だと捉えたそうである。しかし、この公園から眺めるパリの都市景観は素晴らしい。ハイラインのようにハドソン川や超高層ビルといった目を見張るような都市景観ではないが、パリというヨーロッパを代表する大都市に生活をする人々の息吹が感じられるような景観を体感することができる。そして、道路を横切ることもほとんどないので自動車に気をつけることもなく、歩行者としての自由と安全を確保しつつ、パリ散策ができるのである。ルイリー公園を過ぎ、トンネルをくぐった後は、パリの都市景観を楽しむというよりかは、ちょっとした小さな森の中を散策するという感じになり、観光客というより住民の憩いの空間といったような感じになるが、周囲の喧噪の中で、この回廊だけが別世界のような緑の空間となっている。それは、それで魅力的な公共空間であると思われる。
 日本の大都市、東京においても最近、目黒線が地下化したが、プロムナード・プランテのような歩道がつくられることはなかった。また、小田急線も一部地下化したが、その上部空間においても、一部の住民はそのような提案をしているが、実際は住宅や商業施設などが計画されており、おそらく緑の回廊ではないものがつくられそうだ。プロムナード・プランテは一切、商業的活動がされておらず、カフェも花屋もニューススタンドもない。この点ではニューヨークのハイラインとも異なるが、歩行者が散策するという機能に特化したこの公共空間の気持ちよさは格別である。
 パリに比べて東京が劣っている点は、緑溢れるような公共空間、お金の支配から解放されている都市空間が極めて乏しい点である。機会があったとしてもパリではプロムナード・プランテがつくられるのに対して、東京では相変わらず土地で一儲けしようとする欲望が勝ってしまう。プロムナード・プランテがつくれるパリ、そしてつくれない東京。都市の格はこのような事実で大きく差がつけられてしまうのではないか、と思われる。

類似事例:

053 ハイライン
090 デッサウ「赤い糸」
105 エスプラナーデ公園
137 チェスターの城壁
245 大分いこいの道
・ブルーミング・デール・トレイル、シカゴ(イリノイ州、アメリカ合衆国)
・美術高架橋(Viaduc des Arts)、パリ(フランス)
・レッテン・ヴィアダクト、チューリッヒ(スイス)