パブリック・アートに関する事例
(フィンランド共和国)
ヘルシンキのヘルネザーリ地区では大規模な再開発が進んでいる。 この工事現場を目隠しするように1キロメートルに及ぶ長大な壁画が描かれた。そこにはヘルシンキの24時間を1時間ごとに区切った絵が描かれている。工事現場の壁という無味乾燥になりがちなものを魅力的な空間に変えるアプローチである。
(ドイツ連邦共和国)
ベルリン市内を歩くと、ところどころでモノを丁寧に持ち上げているような形で両手を挙げている等身大(高さは2メートル)の熊の像に出会う。これらの熊は様々なボディ・ペインティングが為されていて、どことなく無機質で機械的な印象を与えるベルリンの街並みに、カラフルな躍動感を与えてくれる。
(イングランド)
ブリストルの街を歩くと落書きの多さにすぐに気づく。 バンクシーに触発された多くの芸術家達がブリストルを目指し、市内の壁面は極めて芸術性の高い「落書き」に溢れることになった。その都市景観はユニークであり、圧倒的な個性を有している。
(ポーランド共和国)
ウッチはポーランドの国土のほぼ中心に位置する都市。工業都市であったウッチを彩る建築群のアイデンティティは強烈で明確だ。過去の工業の栄光はもう戻らないであろう。しかしそれらを忘却させるのではなく、工業都市の遺産を活用することでこそ都市の未来が拓かれる。廃墟と化していたEC1だが、今は都心部の明るい将来を示すかのようにリフォームされ、多くの人々が訪れている。
(ポーランド共和国)
ヴロツワフはポーランドの南西、シレジア地域に位置し、市内をオーデル川が流れる。市内のあちこちに置かれている小人像は2003年に当時の市長が設置することを企画した。これらの小人の銅像は、ヴロツワフ市民が共有し、シビック・プライドを持つ歴史的イベント(ソリダリティ運動)を象徴しており、人々の都市への帰属意識を高めることに貢献している。
(ベトナム社会主義共和国)
ハノイ市の紅河の堤防に沿って、長さ6.5キロメートルにも及ぶ長大なモザイク壁画が伸びている。ハノイの遷都1000年を記念して、国内外のアーティスト、地元の職人、そして子どもたちによって制作されたものである。無粋なコンクリートの塊を、ハノイ市のアイデンティティを具体化させるような芸術作品へと転換させた見事な事例である。
(オーストリア共和国)
ゲトライデ通りは歩行者専用通りであり、おそらくザルツブルクで最も有名な通りである。それはザルツブルクの最も著名人であるヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの生家があるためであるが、それだけではない。このゲトライデ通りでとりたてて目を引くのは、すべての店舗の看板が伝統的なスタイルでつくられていることである。それらの看板は、道を往く人々の頭上に華やかにリズムを刻むように設置されている。
(日本)
出島表門橋は、物理的に現在の長崎市と復元されつつある出島を結ぶというだけではない。それは現代の長崎と鎖国時代の長崎とを時間を越えて結ぶ役割をも担っている。それは、忘れられていた出島という都市の記憶を現在へと繋ぐタイムマシーンのようなものだ。そして、その役割を見事に象徴させているのが、この橋のデザインであると考えられる。
(スイス連邦)
スイス中央部に位置するルツェルンのカペル橋はヨーロッパで最古の屋根付きの木橋であり、また現存するトラス橋としても世界最古のものである。この橋がルツェルンの宝であるというのは間違いないが、私はルツェルンが有するさらに輝くような宝は、ルツェルンの市民が、それを宝であると強く意識し、それを共有していることだと考える。これこそがルツェルン市を特別なものとし、そこに住む人達にシビック・プライドという帰属意識を持たせる要因になっているのではないだろうか。
(ドイツ連邦共和国)
アッシェアーズ・レーベンという都市がドイツのザクセン・アンハルト州にある。ここは人口が3万2千人弱の中都市である。1990年には3万3700人はいた人口が、2000年には2万7千人まで減少してしまった自治体である(最近では多少、増加傾向にある)。
インタビュー
(建築家・元クリチバ市長)
「よりよい都市を目指すには、スピードが重要です。なぜなら、創造は「始める」ということだからです。我々はプロジェクトが完了したり、すべての答えが準備されたりするまで待つ必要はないのです。時には、ただ始めた方がいい場合もあるのです。そして、そのアイデアに人々がどのように反応するかをみればいいのです。」(ジャイメ・レルネル)
(横浜市立大学国際教養学部教授)
ビジネス、観光の両面で多くの人々をひきつける港町・横浜。どのようにして今日のような魅力ある街づくりが実現したのでしょうか。今回の都市の鍼治療インタビューでは、横浜市のまちづくりに詳しい、横浜市立大学国際教養学部の鈴木伸治教授にお話を聞きました。
(福岡大学工学部社会デザイン工学科教授)
都市の鍼治療 特別インタビューとして、福岡大学工学部社会デザイン工学科教授の柴田 久へのインタビューをお送りします。
福岡市の警固公園リニューアル事業などでも知られる柴田先生は、コミュニティデザインの手法で公共空間をデザインされています。
今回のインタビューでは、市民に愛される公共空間をつくるにはどうすればいいのか。その秘訣を伺いました。
(地域計画家)
今回の「都市の鍼治療インタビュー」は、九州の都市を中心に都市デザインに携わっている地域計画家の高尾忠志さんへのインタビューをお送りします。優れた景観を守ための開発手法や、複雑な事業を一括して発注することによるメリットなど、まちづくりの秘訣を伺います。
(大阪大学名誉教授)
1970年代から長年にわたり日本の都市計画・都市デザインの研究をリードしてきた鳴海先生。ひとびとが生き生きと暮らせる都市をめざすにはどういう視点が大事なのか。
これまでの研究と実践活動の歩みを具体的に振り返りながら語っていただきました。
(クリチバ市元環境局長)
シリーズ「都市の鍼治療」。今回は「クリチバの奇跡」と呼ばれる都市計画の実行にたずさわったクリチバ市元環境局長の中村ひとしさんをゲストに迎え、お話をお聞きします。
(大阪大学サイバーメディアコモンズにて収録)
お金がなくても知恵を活かせば都市は元気になる。ヴァーチャルリアリティの専門家でもある福田先生に、国内・海外の「都市の鍼治療」事例をたくさんご紹介いただきました。聞き手は「都市の鍼治療」伝道師でもある、服部圭郎 明治学院大学経済学部教授です。
(龍谷大学政策学部にて収録)
「市街地に孔を開けることで、都市は元気になる。」(阿部大輔 龍谷大学准教授)
データベース「都市の鍼治療」。今回はスペシャル版として、京都・龍谷大学より、対談形式の録画番組をお届けします。お話をうかがうのは、都市デザインがご専門の阿部大輔 龍谷大学政策学部政策学科准教授です。スペイン・バルセロナの都市再生に詳しい阿部先生に、バルセロナ流の「都市の鍼治療」について解説していただきました。
(建築家・東京大学教授)
「本当に現実に向き合うと、(統計データとは)違ったものが見えてきます。この塩見という土地で、わたしたちが、大学、学生という立場を活かして何かをすることが、一種のツボ押しになり、新しい経済活動がそのまわりに生まれてくる。新たなものがまわりに出てくることが大切で、そういうことが鍼治療なのだと思います。」(岡部明子)
今回は、建築家で東京大学教授の岡部明子氏へのインタビューをお送りします。
(東京工業大学准教授)
今回の「都市の鍼治療インタビュー」は、東京工業大学准教授の土肥真人氏へのインタビューをお送りします。土肥先生は「エコロジカル・デモクラシー」をキーワードに、人間と都市を生態系の中に位置づけなおす研究に取り組み、市民と共に新しいまちづくりを実践されています。
(東京都立大学都市環境学部教授)
人口の減少に伴って、現代の都市ではまるでスポンジのように空き家や空きビルが広がっています。それらの空間をわたしたちはどう活かせるのでしょうか。『都市をたたむ』などの著作で知られる東京都立大学の饗庭 伸(あいば・しん)教授。都市問題へのユニークな提言が注目されています。饗庭教授は2022年、『都市の問診』(鹿島出版会)と題する書籍を上梓されました。「都市の問診」とは、いったい何を意味するのでしょうか。「都市の鍼治療」提唱者の服部圭郎 龍谷大学教授が、東京都立大学の饗庭研究室を訪ねました。
お話:饗庭 伸 東京都立大学都市環境学部教授
聞き手:服部圭郎 龍谷大学政策学部教授