178 ブルックリン橋 (アメリカ合衆国)
ストーリー:
ブルックリン橋はニューヨークのマンハッタンとブルックリンの間を流れるイーストリバーにかかる吊り橋である。鋼鉄のワイヤーを使った世界初の吊り橋だ。その長さは約486メートルである。1869年から工事が始まり、それが完成したのは1883年であった。
この橋はつくられてから数回、改築工事がなされる。当初は馬車と鉄道がここを走っており、その上を歩行者専用の橋が設けられていた。その後、鉄道の代わりに自動車が走るようになり、トラックは現在、通行禁止となっている。
何がブルックリン橋を特別なものにしているのか、というと自動車の通行と高さのレベルを違えた歩行者のためのプロムナードが設けられていることである。ブルックリン橋を歩きながら眺めるマンハッタンの摩天楼の絶景は格別なものがある。
歩行者のための橋は開業当時からつくられており、開通式の日には真夜中から日の出まで15万人以上が橋を歩く楽しみだけを求めて集まったそうだ。その後、このプロムナードを自転車で通るものも増えてきたために、1971年には自転車と歩行者の動線を分けるための線がペンキによって塗られた。これは、ニューヨーク市の最初の自転車専用道路となった。毎日4000人の歩行者と3100人の自転車がブルックリン橋を横断している。
ブルックリン橋は、つくられた時点でニューヨークのランドマークとなり、ニューヨーク市の最も人気のある観光スポットなっている。1964年にアメリカ歴史ランドマークに、そして1972年にアメリカ土木工学の歴史的ランドマークに指定されている。
キーワード:
歩行者プロムナード, 自転車, 橋, 歴史建築物
ブルックリン橋 の基本情報:
- 国/地域:アメリカ合衆国
- 州/県:ニューヨーク州
- 市町村:ニューヨーク市
- 事業主体:ニューヨーク市交通局
- 事業主体の分類:民間
- デザイナー、プランナー:John Roebling, Washington Roebling, Emily Roebling
- 開業年:1883年
ロケーション:
都市の鍼治療としてのポイント:
ブルックリン・ブリッジから見るマンハッタンのスカイラインは見事の一言に尽きる。まさに空中散歩といった気分にさせてくれる。自動車専用部分以外に、歩行者と自転車専用の部分を設けただけでなく、自動車より一段と高いレベルにしたことで、ここを徒歩、自転車で横断するものは自動車に煩わされることがない。また、これによって、道路を走行する車輌に遮られることなく、橋の両側の展望を得ることができる。これは、サンフランシスコのゴールデンゲート橋や、隣のマンハッタン橋との大きな違いである。この歩行者のプロムナードを設置したことで、ブルックリン橋は幾多とある大都市の橋梁と一線を画すことに成功した。そして、その価値は自動車から歩行者動線をしっかりとつくることが重要視されるようになった21世紀において、さらに高まっていると考えられる。
現在、ブルックリン橋のたもとであるブルックリン側はブルックリン・ブリッジ・パークがつくられ、ちょっとした人気スポットになっている。マンハッタン側だけでなく、ブルックリン側にもアンカーのようなものができ、ますますブルックリン橋の歩行者交通の需要が高まっている。この橋の設計者であるJohn Roeblingは「歩行することの楽しみを賞賛する」という目的のためにこのプロムナードを造ったらしいが、それはニューヨークという都市に特別な価値を与えることになった。ちょっとした工夫ではあったが、それはニューヨークには掛け替えのない贈り物となった。
類似事例:
003 ゲーツヘッド・ミレニアム・ブリッジ
113 クレーマー橋
161 ジュビリー橋
173 マンチェスター・カーブ(ピカデリー・カーブ)
215 眼鏡橋の保全運動
220 出島表門橋
・ ミレニアム・ブリッジ(ロンドン、イギリス)
・ アラミリョ橋(セビージャ、スペイン)
・ ムヘール橋(ブエノスアイレス、アルゼンチン)
・ カレル橋(プラハ、チェコ)
・ カペル橋(ルッツェルン、スイス)
・ スタリ・モスト橋(モスター、ボスニア&ヘルツェゴビナ)
・ パイソン橋(アムステルダム、オランダ)
・ ロード橋(ユトレヒト、オランダ)
・ ヘリックス橋(シンガポール、シンガポール
・ 眼鏡橋(長崎市、長崎県)