日本アジア共同研究プロジェクト
取材レポート「アジアの都市ライフスタイル新潮流」
次回「マニラの都市ライフスタイル新潮流」レポートのお知らせ
フィリッピン共和国は、7019の島々からなる島嶼国家である。アジアの主要都市への潜在的アクセス条件は良好であり、その地理的優位性は高い。人口は約1億人。その首都メトロマニラは、人口約2000万人と、世界でも有数の大都市である。2012年の名目GDP総額は約2503億ドル、GDP実質成長率は6.6%を達成し、メトロマニラには、新しい中間層も出始め、また都市開発も進み快適なグローバル都市として大きく変容している。
フィリッピンは、60年代、アジアの中でも奇跡的な経済発展を遂げ「東洋の真珠」と言われたが、その後、1970年代~2000年代初めまで政治的混乱もあり経済は停滞していた。しかし、インフラ環境などの未整備な状況はあるものの、ここ数年、他のアジア諸国と比べても高い成長率を継続し続けている。その理由として平均年齢は23才と若く、質の高い若い労働力が多い。また英語が公用語でありコミュニケーションがしやすく、さらに親日度も高い。チャイナプラスワンを狙う日系企業にとっては進出の魅力が高い国である。
しかし、日本に伝わってくるフィリッピンのイメージは、治安が悪い、危険などの負の側面が多い。これは、若王子氏誘拐事件や麻薬、銃撃戦、反政府ゲリラなどの事件報道が多いことが影響している。またフィリッピンは、1%の富裕層、9%の中間層、90%の低所得者層で階層化されており、貧富の格差が大きな国で社会的にも混乱しているとのイメージもある。
だが等身大のフィリッピンは、多分にその様相は異なる。フィリッピン人の価値観を見ると、カトリックを精神的な基盤として、家族愛を大切にし、楽観的であり、外部に対し寛容性の高い国である。また国民経済を見ると、海外出稼ぎ労働者(OFW)は約1000万人にも及び、彼らの送金総額はGDPの10%で約21億ドルと巨大な金額であり、貧困問題はあるものの市民の旺盛な消費活動を支えている。ある意味では、フィリッピンは、経済的にも社会的にも、ひとつの尺度で捉えられず、様々な異文化が混交し複合化した魅力がある国である。
現在、メトロマニラは、外資系企業の進出等による経済成長に対応するため、マカティ、ボニファシオなどの都市開発が行政主導ではなく財閥主導で進んでいる。そして経済的な発展と共に新しい富裕層、中間層が増大し、マニラ市民の生活形態は大きく変わってきている。今回の取材は、現在のメトロマニラの発展の現状や直面する課題、そして豊になる富裕層や中間層のライフスタイルやワークスタイルなどについてレポートをする。次回から始まる新シリーズ「マニラの都市ライフスタイル新潮流」をご期待下さい。
主執筆者
カルロス・ルイース・サントス (Carlos Luis L. Santos)
アテネオ・デ・マニラ大学日本語講師
専門分野:日比の比較文化
共同研究者
古川一郎 一橋大学教授
福田 博 縄文コミュニケーション(株)代表
編集・配信
公益財団法人ハイライフ研究所
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