<エイジングとデザイン>
第4回 —「ヒアリング3」

目次
1.第4回 -「ヒアリング3」
2.PDFテキスト
3.研究者プロフィール

 

第4回 -「ヒアリング3」

今回のヒアリングは前回(第3回)に引き続き、「コミュニティカフェみぬまハウス」で行われた6名の男性を対象にしたものです。
.エイジングとデザイン
今回のヒアリングはすべて男性(6名)が被験者となります。
前回までのヒアリングは女性対象であったのに比べ、今回のヒアリングで何が見えてくるのかが極めて興味深いものがあります。その為には男性の感覚に対する問題設定がとても肝心になります。

特に今回、ヒアリング対象者として参加頂いた高齢者予備軍(60歳前後)の方々(4名)の感覚反応は注目したいと思います。
つまり、直近まで現役として仕事してきた男性たちの「感覚」の所在です。
それは、男性の高齢者たちの加齢化と感覚を調査する上で、是非とも見ておきたいものと判断したからです。

高齢社会の内でも、私は特に男性の「感覚」の在り方が、老いの豊かなふるまいを実践してゆく上で大きな問題障害になるのでは、と考えています。
もう少し厳しく云えば、高齢社会での男性の感覚問題は結構、厄介な部分を大いに孕んでいると思うのです。
認知症とは、異なる形での「感覚対応不全症」とでも云うべき症候群が今回の男性ヒアリングからも既に窺うことが出来ました。

今日、感覚を巡ずる大きな問題は、加齢化してゆく上で、参照されるべきモデルとしての「感覚」像の在り方が、女性も、男性の場合も不明で、特に男性の場合は深刻で、不安を抱かせます。
云うまでもなく、なによりも、男性の場合、各自の反応の進展は各自の「仕事」の環境からの影響を受ける可能性がはるかに高いのではないか、と云うことです。加齢化と感覚の視点から、男性の感覚を理解してゆく上では、まず、現役での「感覚」と定年からの「感覚」の把握が一つの焦点になってくるでしょう。
その上で、男性の加齢化に対する感覚の在り方に提言できたら、と考えています。

今回のヒアリングで、想定されていたものの、注目すべきポイントが挙げられます。
それは、男性の「かわいい」に対する感覚反応の限定的な偏り、とでも云うべきものです。
男性の内には、かわいいの拡張化も、洗練化もほとんど、見られませんでした。
つまり、現役での感覚の内に、「かわいい」などの高揚感覚が入り込む余地が全く無かった、に違いありません。

しかし、明らかに65歳以上では、この「かわいい」感覚が生き方の上で有効に働く、と考えられます。若い年代との関係に於いても、家族の関係に於いてもかわいい感覚は、少し生き易くさせてくれるはずです。

いずれにしても、男性の高齢者の場合、現役までの感覚をどの様に定年からの感覚にトランスしてゆけるのかを各自が自覚的に構想する必要があるのではないか、と強く感じました。(真壁)

※連載テキストの全文は以下のPDFテキストにてご覧いただけます。

PDFテキスト:エイジングとデザイン|第4回 -「ヒアリング 3」

<プロフィール>

真壁智治(まかべ・ともはる)
1943年生まれ。プロジェクトプランナー。武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業。東京芸術大学大学院美術研究科建築専攻修了。同大学助手を経てプロジェクトプランニングオフィス「M.T.VISIONS」主宰。〈建てない建築家〉を標榜し、広汎な知己力と旺盛な構想力を駆使して、戦略的視点に立つ都市・建築・住宅分野のプロジェクトに取り組んできた。
2000年より、都市・建築を「伝える」、「論じる」、「表す」、「現す」ことに専心。時代の大きな変動に向き合い、〈建てない建築家〉の真骨頂を発揮していく。
家を伝える本シリーズ「くうねるところにすむところ」で第2回芦原義信賞を受賞。(2006)。近年、カワイイデザイン研究に力を注ぐ。
主な著書に、「アーバン・フロッタージュ」(住まいの図書館出版)、「感応」(用美社)、「感性工作者の日常発想」(三省堂)、「家のワークショップ」(ワールドフォトプレス)、「これからのくらしとあかり」(エクスナレッジ)、「カワイイパラダイムデザイン研究」(平凡社)などがある。

チームカワイイ
共立女子大学家政学部建築デザイン科「建築産業論」デザインマーケティング演習として2005年より行われた「カワイイ感性価値研究」から派生した有志による建築研究ユニット。
今回の「エイジングとデザイン」研究では、共立女子大学堀啓二ゼミ学部3年生を中心とした「チームカワイイ」チームが当ります。

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