高橋順一教授の
ライプツィヒ通信
第6回 資本制システムのパラドクス
10月に入ったら急に寒さが増してきた。朝晩の気温が2,3度になる日もある。あわててしまってあったセーターやダウンジャケットを取り出す。とくに首筋に寒さを感じるのでマフラーが手放せなくなる。曇りがちの天気が多くなってきたなか、古めかしい街並みの続くライプツィヒの町の硬い石畳を踏みしめながら歩いていると、いよいよ厳しいドイツの冬が近づいているのを強く感じる。
暗く垂れ込めるような空がおおいかぶさり、朝9時近くになってもなかなか明けてこないドイツの冬は、ときに気温が零下20度近くまで下がる苛酷な季節だが、一方で演劇やコンサート、オペラのシーズンの本格的な幕開けの季節でもある。私も、今年開設50周年を迎えたライプツィヒ市立歌劇場の記念公演、ヴァーグナーの『ニュルンベルクのマイスタージンガー』の切符をさっそく購入した。
そして11月に入るとすぐにヨーロッパのお彼岸、つまり死者をしのぶ日にあたる万聖節がやってきて、それが終わるとまもなくキリスト生誕の日であるクリスマスを待ち望むアドヴェント(待降説ないしは降臨節)が始まる。
家々のドアに木の枝を丸め花などをあしらったアドヴェントクランツが飾られ、部屋には12月25日のクリスマスまでの日数を示すアドヴェントカレンダーが架けられる。それぞれの日の下には小さな袋が下がっており、そこにキャンディやチョコレートを入れる。子どもたちは日が変わるごとにそれをひとつずつ食べながらクリスマスを待ち望むのである…
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寄稿
高橋順一 早稲田大学教育学部教授
1950年、宮城県生まれ。立教大学文学部卒、埼玉大学大学院文化科学研究科修了。現在、早稲田大学教育学部(教育・総合科学学術院)教授。専攻はドイツ・ヨーロッパ思想史。
著書に、『ヴァルター・ベンヤミン : 近代の星座』(1991年、講談社現代新書)、『響きと思考のあいだ : リヒャルト・ヴァーグナーと十九世紀近代』(1996年、青弓社)、『戦争と暴力の系譜学 :〈閉じられた国民=主体〉を超えるために 』(2003年、実践社)、『ヴァルター・ベンヤミン読解 : 希望なき時代の希望の根源 』(2010年、社会評論社)などがある。
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