トピックス 団塊世代

「団塊の世代」に関して、注目されるトピックを紹介します。

[1]定年後の再就職

団塊の世代670万人は2007年度から向こう3カ年にわたっておよそ280万人が定年退職を迎えることになる。スキルを持った世代だけに、企業や職種によっては、引き続き仕事を続け、後輩の指導等に役立てたいとしている。

厚生労働省はすでに2006年度の改正高齢者雇用安定法施行で企業に65歳までの雇用を義務付けている。さらに、同省は07年度から企業に定年を70歳まで引き上げられるような施策検討を始める。「意欲と能力のある高齢者が、いくつになっても働ける社会」を実現させようとする考えがその背景にあると思われる。具体的には、企業向けに支援アドバイザーを育成するほか、引き上げを実施する中小企業に対しては奨励金を創設することになっている。2010年には、企業の20%程度が70歳まで働けるようにしたいとしている。

では、団塊の世代の女性たちはどのような考えをもっているのだろうか。

読売新聞社は2006年秋に団塊の世代を対象に、生活意識全般についてアンケート調査を実施している。その中で、定年後の再就職について尋ねている部分について取り上げてみる。

1)まず就労の希望だが、団塊女性ではおよそ50%が続けて仕事をしたいと思っている。その職場と勤務形態について尋ねてみると「新しい会社でパート」を希望が14.3%に達している。次いで、「同じ会社でパート」が、12.2%となっている。

2)同様の質問を男性に向けてみると、3割近くが「同じ会社でフルタイム就労」を希望している割合が31%となっており、興味深い。調査結果を素直に読めば、団塊女性は定年後も後しばらく仕事を続けたいが、それまでの職場と違った新しい環境で、しかも自分のライフスタイルが優先できる勤務形態を希望でいるといえよう。

[2]定年離婚

ここ10年、熟年離婚が急増しているといわれてきた。厚生労働省の人口動態調査によると、「1980年 10,880件」、「1995年 31,800件」、「2003 年 45,000件」と毎年、1,056件平均で増加してきたが、03年度から逆に減少し始めている。ここに来て夫婦の仲が良くなってきたのだろうか。

実はそうではなく、「嵐の前の静けさ」と考えられている。その理由は、専業主婦の年金受給権の分割が法令により認められようとしているからである。この法令は07年4月から施行されることになっている。その趣旨は、第三号被保険者が夫の了解または裁判所の決定があれば、「厚生年金・共済年金の報酬比例部分につき最大2分の1まで分割することができる」というものである。多額ではないにしろ、生涯安定的に支給される年金の意味は大きい。これを手にしてから、離婚に踏み切ろうとしている「定年予備軍」が潜在しているものと考えられる。第一生命経済研究所の調査によると、こうした年金分割待ちの離婚予備軍は、03年からの累計でおよそ4万2,000組みに達すると推定している。法令が施工されると、それまで我慢していた離婚願望の女性が、夫に三行半を突きつけることになるという。

その背景には、長年にわたって生活を共にしてきた夫婦だが、夫の現役時代にはあまり会話もなく、たまの休日も、ゴルフに出かけたり、家にいてもごろごろしていて、子供の教育や家事にはあまり関心なく、妻の話にも耳を傾けない生活が長年続いてきた。

こうした夫が、定年後、家にいて、同じような生活を繰り返すのかと思うと、もう耐えられないと思う主婦が増えている。定年を境に、こうした妻たちは残された時間を自分の生きたいようにしたいと願い、離婚を選択する傾向にあると指摘されている。

[3]定年後のライフスタイル

現在就労している女性たちが、定年後どのようなライフスタイルを志向しているかについての調査は少ない。日本労働研究機構が2002年に行った「団塊の世代を中心とする中高年の就労とライフスタイルに関する調査研究」には、いくつかの興味深い調査結果が出ている。

(1)まず、今後の生活の中で何を大切にするかという問いで、表?1はその結果である。この表にでてくる「フル」は、正社員を意味する。男女ともに「配偶者」を第一に挙げているが、その度合いは女性(69.2%)よりも男性(72.0%)の方が高いのは興味深い。ついで、「趣味」の度合いが高い。これも男性が39.0%に対し女性が48.0%と高い点も注目に値する。さらに、「子供」をあげているが、これを逆に、男性(36.0%)よりも女性(39.4)%の度合いが高い。一方、仕事については、男女で大きな差がみられる。これはトピックス1でも指摘したように、女性は定年後、自分のライフスタイルを大事にしがちで、その傾向が数字に表れているとみられる。また、「学習」に対する意欲も高い。これは就労中に時間がなくて実現できなかったことが、定年後の時間に余裕がもてたときに、手掛けたいとする気持ちの表れであろう。

(2)次に、「60歳以降気になること」を尋ねた結果が、表2に示されている。男女ともに最も気になる事項に「自分の健康」を挙げている。成人病をはじめ、さまざまな疾病が起きやすい年齢だけに、気になることとしてうなずける。2番目に挙げているのが、やはり男女ともに「配偶者」である。表1の結果と合わせて考えてみると興味深い。女性は配偶者に対してかなり気になっているが、大切さの度合いは男性の方が高い。つまり、男性の方が妻のことを気にする度合いは相対的に低いが、妻を大事だと思っている気持ちは高い。これらに続いて、「子供」、「生活費」などが指摘されている。このいずれも女性の方が気になる度合いが高いようだ。この背景には、60歳以降の就労の意欲が反映され、男性の方が「仕事」を気にしているからだとも考えられる。

[長谷川文雄]

編集後記

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