トピックス 複数居住の期待と現状 
~マルチハビテーション~

「複数居住」に関して、注目される内外のトピックスを3つ紹介します。

[1]海外から急増するマルチハビテーター

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日本の別荘地の代表といえば、まず軽井沢があげられる。それほど有名なところだが、もとはといえば、カナダ生まれの宣教師が別荘を構えたことから始まる。明治以前には、避暑避寒は一般的でなく、文明開化後の外国人たちのよって導入されてきた。

軽井沢の評判はこの宣教師たちの口コミによって、多くの外国人に伝えられ、やがて彼らがここに別荘を持つようになってきた。その後は、日本の財界人にも関心がもたれ、商業開発が進んで今日の形態の基礎が作られてきた。



同様なことが北海道の倶知安で起きようとしている。

9月19日に発表された基準地価では、住宅地の中で最も値上がりをしているのが倶知安である。倶知安はスキーリゾートとして知られ、温泉も愉しめる。冬場のスキーでは、文字通りパウダースノーの世界になる。

ニセコグラン・ヒラフスキーがある「ひらふ地区」では、オーストラリアからのスキー客が増加し、05年度は対前年比80%増の7700人に達している。なかでも長期滞在の延べ人数は7万人に及んでいる。

こうした背景から、オーストラリアから観光客が増え続けている。時差がほとんどなく、しかも季節が反転し、札幌国際空港も近いとあって、年々人気が高まっている。その結果、オーストラリア人向けの分譲マンションが相次いで建設され、今の建設ラッシュが続いている。これが地価の高騰を招いている。

すでに大形集合住宅が8棟立ち並び、さらに08年度には100戸以上のマンションが建設されることになっている。

冬場には町の人口の半分程度の観光客が訪れ、さながら外国のようだという。

オーストラリア人との交流も始まり、彼らにとって理想のライフスタイルを実現する場になれば興味深い。まさにオーストラリア版マルチハビテーションである。

[2]マルチハビテーション制度

マルチハビテーションを支援するために、独立行政法人都市再生機構(旧都市整備公団)は、「マルチハビテーション制度」を設けている。

この機構は「UR賃貸住宅」を管理しているが、都市部の賃貸マンションをより効率的に運用するために、居住者が別な場所に自分の家を持っていても利用でき、いわゆる「セカンドハウス」として借りることができる。

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生活の本拠地ではなく、リゾートやアジールの目的で賃貸できる。対象物件は、機構が管理する団地となっている。機構のホームページを見ると、「セカンドハウスとして利用できる物件が首都圏に約158物件(約6万1千戸)あり、ほとんどが入居申し込みを先着順に受け付けている」という。東京都心だけでなく、大阪や名古屋など大都市圏でも利用できる。インターネットからも受付ができる。

マルチハビテーションはいわば国策で推奨されていると考えていいだろう。



社会資本整備審議会住宅宅地分科会は、平成16年度に中間報告書をまとめ、そのなかで、「都心部の魅力、郊外ないし地方の魅力の両方を享受できるように、平日は都心部で、週末等は郊外部や地方部で暮らすようなライフスタイル(マルチハビテーション)が、都心居住の進展、交通機関の発展などに伴って、理想から現実的なものになる」と記している。

これは、上記の都心住宅賃貸のような形態だけでなく、地方の空き家や廃村になろうとしているようなところが同時に整備されなければならない。各自治体でも、レビューで指摘したように、地域振興も考慮した政策が検討されている。

※参考URL
青森県における提案
http://www.pref.aomori.lg.jp/kenmin-koe/h17koutsuu-g-006.html

[3]海外ロングステイ

リタイア後に実現したいライフスタイルのなかで、人気が急上昇しているのが「海外ロングスティ」である。(財)ロングステイ財団による定義では、「生活の源泉を日本に置きながら海外の1か所に比較的長く滞在し、その国の文化や生活に触れ、現地社会に貢献を通じて国際親善に寄与する海外滞在スタイル」としている。まさにマルチハビテーションである。

定年後のシニアに人気があることから、「生活を豊かにし、自分らしい生き方を実現する」、「年金でも十分生活できる」、「日常生活が安全で、安心して過ごせる」といった事項が前提条件になるようだ。

人気があるスティ先は、

・ 東南アジア:タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシア
・ オセアニア:オーストラリア、ニュージーランド
・ 北米:米国ハワイ、米国西海岸、カナダ(バンクーバー)
・ その他:スペイン、イタリア

JTBを始め、いくつかの旅行代理店ではロングスティを支援するため、体験型のツァーを開設している。ここで強調している点は、ロングスティは旅行ではなく現地での生活文化に触れることだとしている。海外で生活する以上、最低限のことば、宗教、生活習慣などいわゆる文化的背景を理解しなければならず、その実態に触れてくるという。

また、全国各地でセミナーや講習会が開催されている。大学で取り上げているのも興味深い。たとえば、城西大学では、東京紀尾井町キャンパスで「もう一つの選択?海外ロングスティを考える」と題する公開講座を開講している。

ロングステイ財団の調査では、滞在者が現地にうまく馴染めず、いくつかのトラブルも起きているという。

何でも日本と比較して、思い通りにならないと怒ったり、会社人間の延長で何かと排他的なクラブを作ってみたり、かっての会社の地位がそのまま生きていると錯覚し、命令口調になって現地で世話してくれる人々を見下すなど、人間性が問われるようなことが起きるという。これでは、自分らしい生き方を追求するためのマルチハビテーションの精神からかけ離れたものとなり、本人が満たされないだけでなく、日本人のわがままさや、傲慢さを輸出することになりかねない。

団塊の世代は、在職中に公私にわたって海外出張や旅行の経験があり、海外ロングステイに対する関心が高いことから、今後急速にこの市場が伸びていくものと考えられる。

※参考URL

城西大学の海外ロングステイ案内 http://www.josai.jp/lifelong/ex/2006A/aday/06212.html

海外ロングステイ総合案内 http://www.i-joho.net/longstay/

海外ロングステイの方法 http://www.ne.jp/asahi/napoleon/kaoru-salon/

海外ロングステイの基礎知識 http://www.ledby.net/01/

[長谷川文雄]

編集後記

編集スタッフ
[発行] (財)ハイライフ研究所

[発行人] 高津春樹
[スタッフ]
プロデューサー 長谷川文雄
エディター 小山田裕彦
サブ・エディター 萩原宏人
WEBデザイナー 熊倉次郎(ISLA) 吉野博満(ISLA)
エグゼクティブ・アドバイザー 加藤信介

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