クリチバのジャイメ・レルネル元市長は、都市が抱える問題を手っ取り早く解決するべき方法論として「都市の鍼治療」を提唱しています。
多くの課題に直面する都市は、さながら病人のようです。そして、都市の鍼治療とは、その都市の病を根本的に治すことは難しいけれども、効果的に「鍼療法のように治す」ことは可能であるという考え方にもとづいた方法論です。
本データベースは、このレルネル元市長の「都市の鍼治療」という考えにのっとり、内外の「都市の鍼治療」事例をシリーズで紹介していきます。
136 プロムナード・プランテ(Promenade Plantée)
プロムナード・プランテ、別名クーレ・ヴェルトはパリの12区にある4.9キロメートルに及ぶ世界で最初に高架橋につくられた直線上の回廊公園である。一度、このプロムナード・プランテに上ると自動車をまったく意識せずに、パリの空中散歩を楽しむことができる。プロムナード・プランテは一切、商業的活動がされておらず、カフェも花屋もニューススタンドもない。歩行者が散策するという機能に特化したこの公共空間の気持ちよさは格別である。
137 チェスターの城壁(Chester Wall)
チェスターの壁は、イギリスの西部にあるチェスター市の旧市街地を囲むようにつくられた3キロメートルに及ぶ城壁である。現在では、その上を歩くことができ、ちょっとした空中散歩を楽しむことができる。この壁の歴史は古く、そもそもは西暦70年、80年にローマ人によって築かれた。歴史的土木構造物であり、その維持管理は難しい点があるが、チェスター市のまさに象徴的な存在であり、その重要性をしっかりと昔から認識してきたことが、チェスター市を特別な観光都市としての風格を持たせることに成功してきたと思われる。
138 ねこじゃらし公園
ねこじゃらし公園に行くと、なんかホッとするような気持ちになれる。それは、意図的なデザインの押しつけのようなものを全く感じないからだと思う。この公園には手作り感が溢れている。ただ、この素晴らしく魅力的な公園空間だけがこの公園の価値ではなく、これをつくり、そして管理するうえで形成された地域のネットワーク、地域の関係性が築けたことこそが、ねこじゃらし公園の真に評価すべき点であると思う。
139 パイオニア・コートハウス・スクエア(Pioneer Courthouse Square)
最近では、日本で随分と注目を浴びているポートランド。その革命的な転換点は、このポートランド・コートハウス・スクエアがつくられたことであった。この事業が成功した理由は、市民がそれを実現するために運動を展開し、財政的な支援までしてきたこと。ポートランド市は、自動車の空間を人間の空間に転換させることで、都心部を再生させただけでなく、都市における民主主義的精神をも醸成させ、強化させていったのである。
140 ロブソン・スクエア(Robson Square)
ロブソン・スクエアはヴァンクーバーの中核に位置し、約3ブロックにわたって広がる裁判所兼パブリック・スペースである。建築家アーサー・エリクソンが打ち出したアイデアは、予定されていた高層建築物を倒して横にしてしまい、人々がその建物の上を歩けるようにする、というものであった。ここではまた、環境共生的な試みや、広場に滝を流すランドスケーピングなどで、大都市のど真ん中に緑のオアシスを創り出すことにも成功している。
取材・構成
服部圭郎 明治学院大学経済学部教授
制作・配信
公益財団法人ハイライフ研究所
■都市の鍼治療 データベース
http://www.hilife.or.jp/cities
ハイライフ研究所では新しい報告書や連載記事、無料セミナーのご案内をメールマガジンにて配信しております。ぜひ購読をご検討ください。無料お申し込みはこちらから。