個人の生活を安定させる生活保障を考えるとき、個人の生活を支える「生活費用の担い手」として挙げられるものが大きく分けて3つあります。個人の就業と家族の支援といった「個人保障」、企業の雇用に付随して提供される福利厚生や職業訓練といった「企業保障」。政府による雇用政策、再分配政策や医療・年金制度などの「社会保障」です。
戦後の生活保障の特徴は、本人あるいは配偶者や親の雇用が長期的に安定し、企業が社会保障のエージェントとして機能してきました。つまり、労使折半で保険料を拠出する社会保険制度によって、国や自治体は企業をバイパスにして福利厚生などの企業福祉の支援体制を作ってきました。そのため、政府による社会保障の機能は小さくてすんだのです。
ところが、近年はその構造が変化しています。個人の就業は、非正規化が進んで弱まっています。家族は、単身や単独化が進んだり、離婚などもあって支える力が弱まっています。企業は、安定した雇用の維持が難しくなり、社会保障エージェントとしての機能も低下しています。そうなると、公共による社会保障や社会福祉がクローズアップされるのは必然のことと言えます。