鈴木さんは、大手メーカー勤務の父親と専業主婦の母親、兄、弟、妹の6人家族。教育熱心で堅実な両親に育てられ、公立小学校から中高一貫の私立中学に進んだ。中学で新しくできた友達は「お金持ち」の子どもが多く、彼らとの“経済格差”を見せつけられた鈴木さんは、次第にある思いを募らせていくことになる。
「うちはお金がない家ではなかったんですが、お金に厳しい節約の家だったので、周りと比べると直感的に一番貧乏でした。洋服はいつもお兄ちゃんの友達のお下がりだったし、携帯を持ったのもクラスで最後から2番目。自営業の家に生まれたわけでもないのに、『お金を稼ぎたい』と思うようになったのは、もしかしたらこのときの感覚が影響しているのかもしれません」
電車通学のため、帰りに遊んでも親にバレないのをいいことに、鈴木さんはゲームセンターに毎日のように通って“稼ぐ”ようになる。
「パチプロ感覚でメダルゲームにはまって、大量のメダルを持っていたんです。それを友達に売って小遣い稼ぎをしていました。当時、自分のお小遣いが2,000~3,000円だったと思いますが、月5,000円くらいは稼いでいましたね」
それが学校にバレて、親が学校に呼び出される。当然、親から叱られる。そんなことが5~6回続いた。「他の親は子どもがゲームセンターに行っても叱らないのに、なんでうちの親は止めさせようとするのか」。一番楽しい時間だったゲームセンター通いを邪魔しようとする両親が疎ましく、「親元を離れたい」と思うようになった。
そんな生活が変化したのは、中学2年の夏休みのこと。親の言いつけで塾に通い、猛勉強を始めた。すると、それまで学年で80人中40位くらいだった成績が、学年トップに躍り出たのだ。
親の教育方針として「国立大学に行かなければ一人暮らしはさせない」と言われ続けていたが、大学まで待たずに親元から離れたい一心で、寮生活ができる地元の高専に進学。「数学が得意だから理系に進もう」と気楽な気持ちでロボット系の学科を選んだ。