[1]家庭内の携帯コミュニケーション
「ハイテク時代の家庭の情報化に関する研究」に関するトピック
長谷川文雄
今回の特集テーマである「ハイテク時代の家庭の情報化に関する研究」に関して、注目される内外のトピックスを3つ紹介します。
[1]家庭内の携帯コミュニケーション
携帯電話の普及がついに1億台を越えている。1985年にNTTがポータブル電話機「ショルダーホン」を発売し、携帯電話の幕開けとなった。93年にはデジタル方式が導入され、普及に弾みがつき、95年移行は年間7〜8百万台の勢いで増加してきた。誰でも持っているといっても過言ではない携帯電話となり、日常生活のコミュニケーションのあり方に大きな影響を及ぼし始めている。通話を元より、メール、カメラ代わり、WEB閲覧、決済をはじめ最近はテレビ機能や家電のリモコン機能まで組み込まれているものも出現している。
それでは、日常生活とりわけ家庭内でどのようにコミュニケーションされているのか、携帯により家族のコミュニケーションの絆が高まったのかどうかが気になるところである。(株)情報通信総合研究所が2006年に行った「家庭のコミュニケーション行動と情報通信サービスの利用状況調査」によると、興味深い結果が表れている。
1)調査では、家族間の会話が少ないといわれるが、コミュニケーションの方法は「直接話す」が24.5%と一番多く、「携帯電話」が21.6%、「携帯メール」が20.2%、「固定電話」が19.3%となっている。(図—1参照)
相手の顔を見て話すのが一般的と思われるが、逆に話しにくいことを、電話やメールで済ます状況が増えてきているようだ。その傾向は夫婦間でも見られるという。固定電話が健在なのは、落ち着いて話せるという安心感と、料金が微妙に関係していると考えられる。
2)家庭内では、母親が情報の中継的な役割を果たしている様子が伺える。最も多いいコミュニケーションの相手として母親を、未婚の男性では51.5%、同女性では54.9%あげている。因に父親はそれぞれ、14.2%、9.8%と低くなっている。家族の構成員の殆どが保持しているはずの携帯電話で、いつでもどこでもコミュニケーションできるはずなのに、現実に父親は敬遠されがちのようだ。
3)また、興味深いのは夫婦間のコミュニケーションでも、その方向性は世代により、異なっている。調査によると30代ではほぼ同じ比率だが、40代では、「夫から妻」が43.4%、「妻から夫」が25.4%と差が顕著になってくる。50代ではそれぞれ、45.3%、29.6%となっている。帰宅時間、食事の準備の有無など、夫から妻への連絡が高いようだ。
4)最近人気のあるテレビ番組で、父親と思春期の娘とのコミュニケーションを携帯メールを用いて円滑にするものがある。その指南役が女子高生で、たとえば父親の心配事を妻に送る内容で書き、それを間違ったようにして娘に送るという仕掛けだ。まさに母親を間に立てての「間接話法」だろうか。
5)しかし最も重要なのは、やはり緊急時に連絡が取りやすいことと、相手の都合で電話にでられない場合を考え、メールによる連絡が可能である。それだけ、家族のコミュニケーションメディアが太くなってきたことは評価できるだろう。
[長谷川文雄]
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- 日時:15:39