2007年05月22日
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2007年05月23日
2007年05月24日
「理想とするハイライフ」
稲増龍夫 法政大学社会学部教授へのインタビュー [1]
現代における「ハイライフ」とは何か?「ハイ」という言葉が外から言われるのではなく、内面の充実という意味合いが強くなってきている。情報やモノが何でもすぐ手に入る時代において、若者も自己満足だけにとどまらず、社会全体の未来への目、そして、自分と公のバランス、みんなの幸せというものを意識できる社会になってほしい。若者文化、メディア文化に詳しい稲増龍夫氏にお話を伺いました。
稲増龍夫
法政大学社会学部教授
専門は、社会心理学・メディア文化論。
ゼミからはアナウンサーなどマスコミ関係者を数多く輩出している。自分自身、フジテレビやTBSなど、コメンテーターとしての活躍も大変多い。
著書:『アイドル工学』、『<ポスト個性化>の時代~高度消費文化のゆくえ』『パンドラのメディア~テレビは時代をどう変えたのか』ほか。
「団塊の世代」に関するトピック
長谷川文雄
今回の特集テーマである「団塊の世代」に関して、注目されるトピックを紹介します。
[1]定年後の再就職
団塊の世代670万人は2007年度から向こう3カ年にわたっておよそ280万人が定年退職を迎えることになる。スキルを持った世代だけに、企業や職種によっては、引き続き仕事を続け、後輩の指導等に役立てたいとしている。
厚生労働省はすでに2006年度の改正高齢者雇用安定法施行で企業に65歳までの雇用を義務付けている。さらに、同省は07年度から企業に定年を70歳まで引き上げられるような施策検討を始める。「意欲と能力のある高齢者が、いくつになっても働ける社会」を実現させようとする考えがその背景にあると思われる。具体的には、企業向けに支援アドバイザーを育成するほか、引き上げを実施する中小企業に対しては奨励金を創設することになっている。2010年には、企業の20%程度が70歳まで働けるようにしたいとしている。
では、団塊の世代の女性たちはどのような考えをもっているのだろうか。
読売新聞社は2006年秋に団塊の世代を対象に、生活意識全般についてアンケート調査を実施している。その中で、定年後の再就職について尋ねている部分について取り上げてみる。
1)まず就労の希望だが、団塊女性ではおよそ50%が続けて仕事をしたいと思っている。その職場と勤務形態について尋ねてみると「新しい会社でパート」を希望が14.3%に達している。次いで、「同じ会社でパート」が、12.2%となっている。
2)同様の質問を男性に向けてみると、3割近くが「同じ会社でフルタイム就労」を希望している割合が31%となっており、興味深い。調査結果を素直に読めば、団塊女性は定年後も後しばらく仕事を続けたいが、それまでの職場と違った新しい環境で、しかも自分のライフスタイルが優先できる勤務形態を希望でいるといえよう。
[長谷川文雄]
「団塊の世代」に関するトピック
長谷川文雄
[2]定年離婚
ここ10年、熟年離婚が急増しているといわれてきた。厚生労働省の人口動態調査によると、「1980年 10,880件」、「1995年 31,800件」、「2003 年 45,000件」と毎年、1,056件平均で増加してきたが、03年度から逆に減少し始めている。ここに来て夫婦の仲が良くなってきたのだろうか。
実はそうではなく、「嵐の前の静けさ」と考えられている。その理由は、専業主婦の年金受給権の分割が法令により認められようとしているからである。この法令は07年4月から施行されることになっている。その趣旨は、第三号被保険者が夫の了解または裁判所の決定があれば、「厚生年金・共済年金の報酬比例部分につき最大2分の1まで分割することができる」というものである。多額ではないにしろ、生涯安定的に支給される年金の意味は大きい。これを手にしてから、離婚に踏み切ろうとしている「定年予備軍」が潜在しているものと考えられる。第一生命経済研究所の調査によると、こうした年金分割待ちの離婚予備軍は、03年からの累計でおよそ4万2,000組みに達すると推定している。法令が施工されると、それまで我慢していた離婚願望の女性が、夫に三行半を突きつけることになるという。
その背景には、長年にわたって生活を共にしてきた夫婦だが、夫の現役時代にはあまり会話もなく、たまの休日も、ゴルフに出かけたり、家にいてもごろごろしていて、子供の教育や家事にはあまり関心なく、妻の話にも耳を傾けない生活が長年続いてきた。
こうした夫が、定年後、家にいて、同じような生活を繰り返すのかと思うと、もう耐えられないと思う主婦が増えている。定年を境に、こうした妻たちは残された時間を自分の生きたいようにしたいと願い、離婚を選択する傾向にあると指摘されている。
[長谷川文雄]
「団塊の世代」に関するトピック
長谷川文雄
[3]定年後のライフスタイル
現在就労している女性たちが、定年後どのようなライフスタイルを志向しているかについての調査は少ない。日本労働研究機構が2002年に行った「団塊の世代を中心とする中高年の就労とライフスタイルに関する調査研究」には、いくつかの興味深い調査結果が出ている。
(1)まず、今後の生活の中で何を大切にするかという問いで、表?1はその結果である。この表にでてくる「フル」は、正社員を意味する。男女ともに「配偶者」を第一に挙げているが、その度合いは女性(69.2%)よりも男性(72.0%)の方が高いのは興味深い。ついで、「趣味」の度合いが高い。これも男性が39.0%に対し女性が48.0%と高い点も注目に値する。さらに、「子供」をあげているが、これを逆に、男性(36.0%)よりも女性(39.4)%の度合いが高い。一方、仕事については、男女で大きな差がみられる。これはトピックス1でも指摘したように、女性は定年後、自分のライフスタイルを大事にしがちで、その傾向が数字に表れているとみられる。また、「学習」に対する意欲も高い。これは就労中に時間がなくて実現できなかったことが、定年後の時間に余裕がもてたときに、手掛けたいとする気持ちの表れであろう。
(2)次に、「60歳以降気になること」を尋ねた結果が、表2に示されている。男女ともに最も気になる事項に「自分の健康」を挙げている。成人病をはじめ、さまざまな疾病が起きやすい年齢だけに、気になることとしてうなずける。2番目に挙げているのが、やはり男女ともに「配偶者」である。表1の結果と合わせて考えてみると興味深い。女性は配偶者に対してかなり気になっているが、大切さの度合いは男性の方が高い。つまり、男性の方が妻のことを気にする度合いは相対的に低いが、妻を大事だと思っている気持ちは高い。これらに続いて、「子供」、「生活費」などが指摘されている。このいずれも女性の方が気になる度合いが高いようだ。この背景には、60歳以降の就労の意欲が反映され、男性の方が「仕事」を気にしているからだとも考えられる。
[長谷川文雄]
巻頭インタビュー
「理想とするハイライフ」 稲増龍夫(法政大学教授)
現代における「ハイライフ」とは何か?「ハイ」という言葉が外から言われるのではなく、内面の充実という意味合いが強くなってきている。情報やモノが何でもすぐ手に入る時代において、若者も自己満足だけにとどまらず、社会全体の未来への目、そして、自分と公のバランス、みんなの幸せというものを意識できる社会になってほしい。若者文化、メディア文化に詳しい稲増龍夫氏にお話を伺いました。
2000年に行なわれた団塊世代研究をレビュー&フューチャーします。
2007年問題など、巷で話題の「団塊世代」、特にその女性たちの現状と今後に注目しました。
[1]研究総括 高津春樹
[2]研究企画の意図 立澤芳雄
[3]団塊世代の女性インタビュー(1) 崎田昌子
[4]団塊世代の女性インタビュー(2) 園田謡子
[5]団塊世代の女性インタビュー(3) 工藤美奈子
[6]オピニオンリーダー・インタビュー 新村保子
[7]今後の展開 高津春樹
TOPICS
「団塊の世代」に関するトピック 長谷川文雄
今回の特集テーマである「団塊の世代」に関して、注目されるトピックを3つ紹介します。
[1]定年後の再就職
[2]定年離婚
[3]定年後のライフスタイル
こんなハイライフあんなハイライフ
世界の居住「中国の地下住居 ヤオトン」
山畑信博(東北芸術工科大学助教授)
世界中から様々なスタイルのハイライフを探します。今回は中国黄土地帯に広がる「地下住居 ヤオトン」に住む人々の生活を紹介します。
特集 複数居住の期待と現状 ~マルチハビテーション~
[3]アピアピ バリでの生活
松浪龍一
バリに別荘「アピアピ」を建て、自らマルチハビテーターとして日本と行き来する生活をはじめた。近年は、マルチハビテーターを実践する仲間が増え、「アピアピ」の人気、利用率も上昇中。
<アピアピの現在の状態>
バリの別荘”アピアピ”は,今も健在である。
年間を通して,ほぼ毎月のように誰かが利用している。
メンバー以外の利用も増えたので,一応の利用規程をつくった。しかし,管理人はホテルをやっているつもりはないので,普通のサービスはできない。よく事情を知らない人に迂闊に貸すと,予想以上に喜ばれたり,逆にクレイムをいただいたりする。なかなか難しい。それで,毎回のように利用規程を改定している。
アピアピを建てた時に植えた庭の木が大きく繁茂して,当初はライステラスを見渡す田園のコテージという趣だったのが,今では森の中の隠れ家のようになってしまった。周辺に新たな住宅や別荘が建ちはじめたので,これはこれでうまい目隠しになっている。
茅葺きの屋根は20年はもつだろうといわれたが,築13年ですでに2回葺きかえなければならなかった。途中で椰子の木の柱もシロアリにやられて何本かつけかえた。熱帯のスコールのもとでは,絶え間ないメンテが必要である。
<この7年のアピアピ生活>
わたし自身は,家族の事情もあって,この4年ほどアピアピに行っていない。しかし,メンバーやその家族,友人などいろいろな人たちが利用していることもあって,情報はいつもはいってくる。
何年か前に,村のお寺の大規模な増改築が行われた。村の要請で,正面大階段の両脇の石彫りを寄進した。ナンディスワラという高さ3メートルの石彫り(仁王様または狛犬に該当)1対と,ナーガの石彫り(手摺りの蛇の彫刻)1対である。メンバーを中心に寄進者を募って,記念に全員の名前を大理石の銘板に刻んではめ込んだ。落成祭の後に行ってみたら,銘板がとりはずされていて,そのかわりに唐草模様の石がはまっていた。祭に来た知事か誰か偉い人が,これはおかしいからはずすように,と指示したのだそうだ。こういう情報はどういうわけか入ってこないが,だれそれが病気になったとか,どこの店が売りに出ているとかいった情報は,管理人が電話で知らせてくる。
行った時には,やはり何もしないで気ままに暮らすことが多い。たまたま村の大きなお祭りなどに出くわすと,村人として手伝ったり,野次馬になったりしながら適当に楽しむ。何もない時には,アピアピを拠点にして周辺の穴場探しなどで時間をつぶす。ある島におとぎ話に出てくるようなホテルを見つけたので(詳細は言えません),そこに行って過ごすことも多い。
<バリ・マルチハビテーションの評価>
わたしのやりかたをマルチハビテーションと言うのが,正しいかどうかはわからないが,アピアピのあるペネスタナン村に若干の帰属感をもっているのは事実である。
願わくは,バリ州あるいはペネスタナン村での社会的生活を営みたい,という気持ちもなくはない。ペネスタナンのあるウブドゥ郡では,地元の若手経営者が集まって観光開発の戦略づくりをやっている,という話しを聞いた。そういったプロジェクトに協力する,というのもひとつ。ペットボトルやビニール袋などのプロスチックごみのリサイクル事業を進めて,村の環境改善や収入の創出に力を貸したいとも思うが,これもひとつ。さまざまなネタがある。
ただし今のところ,帰属感はあるものの,社会的アクションに最後まで責任をもてるような立場にはない。まだまだ気楽な観光客である。
しかし,マルチハビテーションの最大の効果といえる「お互いの刺激」という点では,アピアピは成果をあげていると思う。わたしたちが行って村の生活から受ける刺激の数々は,まだとても尽きない。アピアピがあることによって,友人がバリのリゾートホテルと免税品店だけでなく,集落の生活にも触れることができること,これも大きなことだと思う。
わたしたちの行動やアピアピの設営そのものが,また同じように村の人たちの刺激になっているはずである。アピアピの外壁は小さな玉石をびっしり貼り付けてあるのだが,これが評判で真似をするところがちらほら出てきた。新しい様式の流行である。嬉しい。
<マルチハビテーションを通じて,自分のライフスタイルがどう変化したか>
日頃はあまり意識しないが,よくよく考えてみると,次のような変化があったかと思う。
まず,リフレッシュ旅行をするのに,目的地に迷うことがなくなったこと。バリはいつも新鮮で,毎回驚きがある。それに,様子がわかっている分だけ安心できる。でかけるのに準備がいらない。今日にでも行ける。おかげで,他の国にはあまり行かなくなった。
それから,バリでの刺激が日本での生活や仕事に生きていること。バリは,ひとことでいえば文化的生産力の極めて旺盛な島である。椰子の木の堅い材を,チェーンソウ一本で板材に加工してしまう。大きな木にまたがって,手斧ひとつで巨大なガルーダの木彫を彫ってしまう。素足でもんだ赤土をもみ殻で野焼きして美しいレンガを焼きあげる。軒下でセメントを混ぜて型枠にいれ,ちゃかちゃかとコンクリートブロックをつくる。こういった中間技術が日本の日常で求められる機会は多い。そういう局面で,バリでの見聞はずいぶん勇気を与えてくれる。
<外国でマルチハビテーションをする人に対するアドバイス>
アピアピには,管理人がいる。半ば成り行きでそうなったのだが,これはよかった。
外国に自分の家をもったとしても,日本での生活がある限り,そんなに頻繁に行けるものでもないし,しばらく何年も留守せざるをえない場合もあるだろう。そんな時にも,現地の家が自立的に維持できるようにしておくことは,重要である
アピアピには,隣接してカフェを併設してある。管理人は,現地のエージェントと組んで適当に商売をしているようだ。そんなに売上があるわけではないが,ときたま売れる絵(管理人は絵描きである)の代金とあわせて,親子が食べていく程度の収入は確保されている。こっちも安心である。。
<今後の展望>
さて,管理人にも3人目の子どもができたことだし,そろそろ様子を見に行かねば,と思っている。
インドネシアでは津波や地震で大きな被害を受け,バリではこの間,2度のテロ事件に見舞われた。そのおかげでバリの観光客も激減し,すっかり様子が変わっているということだが,アピアピはいずれの事件・災害とも関係なく安泰な日々を過ごしている。
アピアピの物語はまだまだ続くだろう。あまり力まず,これまで同様気楽にやっていきたい。あいかわらず”ティダ・アパ・アパ”のままである。
松浪龍一
特集 複数居住の期待と現状 ~マルチハビテーション~
[4]国内外に移り住む
松矢俊明
ハワイそして、伊豆、湯河原と国内外のいくつかの拠点でのマルチバビテーションを継続。影響をうけた子供たちもサンフランシスコと日本を行き来する二世代のマルチハビテーターとして成長。
<伊豆の別荘などの今の状態>
伊豆の別荘は,ハワイから帰って少しの間住まいとして使用していた.
ハワイの家とのギャップを感じて,2002年6月に同じ伊豆で2000m2の土地に330m2の建物付きの物件を見つけたので,以前の別荘を売却して新たに購入した.
また新たに,2006年に神奈川県湯河原に家を購入して引っ越した.ここは今までの家に比べて,生活のスタンスを考えると少しでも東京に近い(友人や肉親がいる)ところでもあるし,畑があり犬が遊ぶ場所もあるので,住まいの拠点とした.
<この7年の別荘生活>
私としては,この7年間はいろいろな場所を見て感じてきたが,そこへ旅行だけに行くのではなく,ステイすることで,その場所の良いところ,悪いところが見えて,深く知ることができたと思う.
<今日的に見たマルチハビテーションの評価>
今日的というよりも複数の家での生活は,私には今後もぜったいに必要なことであると考えている.
<マルチハビテーションを通じて、ご自身のライフスタイルがどう変わられたか
外国での生活で,ライフスタイルは一変した.以前にも申し上げた通り,日本では知り得なかった人々,生活習慣,食べ物,自然等,外から見た日本,今までとは違った目線でいろいろなことが見えてきた.
これは自分自身のことではないが,私たちの子供たちも,いろいろと広い視点で物事を見ているようだ.今長男は,サンフランシスコで国際会計士になり,日本でも家を持ちたいと言っている.これも私とともに歩き回った結果であると思う.
<外国でマルチハビテーションをする人に対するアドバイス>
まず,その国に合った生活資金が必要.ギリギリでやっても楽しい外国生活は無理だと思う.
滞在期間は1年を通して,1/3くらいの割合で外国に行くのが良いのではないか.一カ所に長い間居すぎると廻りの人との煩わしさが出てきたりする.良いところだけ楽しんで,また日本で住むというスタンスが良いのではないだろうか.
<今後の展望>
年齢のこともあり,また夫婦二人での生活になるので,やはり家は交通,買い物などの便利な所とし,他には自然と温泉があるところ,外国では不動産を購入するのではなく,アパートメントに住み,年に1/3くらいの割合で楽しんでゆくつもりである
「複数居住」に関するトピックス
長谷川文雄
今回の特集テーマである「複数居住」に関して、注目される内外のトピックスを3つ紹介します。
[1]海外から急増するマルチハビテーター
日本の別荘地の代表といえば、まず軽井沢があげられる。それほど有名なところだが、もとはといえば、カナダ生まれの宣教師が別荘を構えたことから始まる。明治以前には、避暑避寒は一般的でなく、文明開化後の外国人たちのよって導入されてきた。
軽井沢の評判はこの宣教師たちの口コミによって、多くの外国人に伝えられ、やがて彼らがここに別荘を持つようになってきた。その後は、日本の財界人にも関心がもたれ、商業開発が進んで今日の形態の基礎が作られてきた。
同様なことが北海道の倶知安で起きようとしている。
9月19日に発表された基準地価では、住宅地の中で最も値上がりをしているのが倶知安である。倶知安はスキーリゾートとして知られ、温泉も愉しめる。冬場のスキーでは、文字通りパウダースノーの世界になる。
ニセコグラン・ヒラフスキーがある「ひらふ地区」では、オーストラリアからのスキー客が増加し、05年度は対前年比80%増の7700人に達している。なかでも長期滞在の延べ人数は7万人に及んでいる。
こうした背景から、オーストラリアから観光客が増え続けている。時差がほとんどなく、しかも季節が反転し、札幌国際空港も近いとあって、年々人気が高まっている。その結果、オーストラリア人向けの分譲マンションが相次いで建設され、今の建設ラッシュが続いている。これが地価の高騰を招いている。
すでに大形集合住宅が8棟立ち並び、さらに08年度には100戸以上のマンションが建設されることになっている。
冬場には町の人口の半分程度の観光客が訪れ、さながら外国のようだという。
オーストラリア人との交流も始まり、彼らにとって理想のライフスタイルを実現する場になれば興味深い。まさにオーストラリア版マルチハビテーションである。
[長谷川文雄]
「複数居住」に関するトピックス
長谷川文雄
[2]マルチハビテーション制度
マルチハビテーションを支援するために、独立行政法人都市再生機構(旧都市整備公団)は、「マルチハビテーション制度」を設けている。
この機構は「UR賃貸住宅」を管理しているが、都市部の賃貸マンションをより効率的に運用するために、居住者が別な場所に自分の家を持っていても利用でき、いわゆる「セカンドハウス」として借りることができる。
生活の本拠地ではなく、リゾートやアジールの目的で賃貸できる。対象物件は、機構が管理する団地となっている。機構のホームページを見ると、「セカンドハウスとして利用できる物件が首都圏に約158物件(約6万1千戸)あり、ほとんどが入居申し込みを先着順に受け付けている」という。東京都心だけでなく、大阪や名古屋など大都市圏でも利用できる。インターネットからも受付ができる。
マルチハビテーションはいわば国策で推奨されていると考えていいだろう。
社会資本整備審議会住宅宅地分科会は、平成16年度に中間報告書をまとめ、そのなかで、「都心部の魅力、郊外ないし地方の魅力の両方を享受できるように、平日は都心部で、週末等は郊外部や地方部で暮らすようなライフスタイル(マルチハビテーション)が、都心居住の進展、交通機関の発展などに伴って、理想から現実的なものになる」と記している。
これは、上記の都心住宅賃貸のような形態だけでなく、地方の空き家や廃村になろうとしているようなところが同時に整備されなければならない。各自治体でも、レビューで指摘したように、地域振興も考慮した政策が検討されている。
※参考URL
青森県における提案
http://www.pref.aomori.lg.jp/kenmin-koe/h17koutsuu-g-006.html
[長谷川文雄]
「複数居住」に関するトピックス
長谷川文雄
[3]海外ロングステイ
リタイア後に実現したいライフスタイルのなかで、人気が急上昇しているのが「海外ロングスティ」である。(財)ロングステイ財団による定義では、「生活の源泉を日本に置きながら海外の1か所に比較的長く滞在し、その国の文化や生活に触れ、現地社会に貢献を通じて国際親善に寄与する海外滞在スタイル」としている。まさにマルチハビテーションである。
定年後のシニアに人気があることから、「生活を豊かにし、自分らしい生き方を実現する」、「年金でも十分生活できる」、「日常生活が安全で、安心して過ごせる」といった事項が前提条件になるようだ。
人気があるスティ先は、
・ 東南アジア:タイ、フィリピン、マレーシア、インドネシア
・ オセアニア:オーストラリア、ニュージーランド
・ 北米:米国ハワイ、米国西海岸、カナダ(バンクーバー)
・ その他:スペイン、イタリア
JTBを始め、いくつかの旅行代理店ではロングスティを支援するため、体験型のツァーを開設している。ここで強調している点は、ロングスティは旅行ではなく現地での生活文化に触れることだとしている。海外で生活する以上、最低限のことば、宗教、生活習慣などいわゆる文化的背景を理解しなければならず、その実態に触れてくるという。
また、全国各地でセミナーや講習会が開催されている。大学で取り上げているのも興味深い。たとえば、城西大学では、東京紀尾井町キャンパスで「もう一つの選択?海外ロングスティを考える」と題する公開講座を開講している。
ロングステイ財団の調査では、滞在者が現地にうまく馴染めず、いくつかのトラブルも起きているという。
何でも日本と比較して、思い通りにならないと怒ったり、会社人間の延長で何かと排他的なクラブを作ってみたり、かっての会社の地位がそのまま生きていると錯覚し、命令口調になって現地で世話してくれる人々を見下すなど、人間性が問われるようなことが起きるという。これでは、自分らしい生き方を追求するためのマルチハビテーションの精神からかけ離れたものとなり、本人が満たされないだけでなく、日本人のわがままさや、傲慢さを輸出することになりかねない。
団塊の世代は、在職中に公私にわたって海外出張や旅行の経験があり、海外ロングステイに対する関心が高いことから、今後急速にこの市場が伸びていくものと考えられる。
※参考URL
城西大学の海外ロングステイ案内 http://www.josai.jp/lifelong/ex/2006A/aday/06212.html
海外ロングステイ総合案内 http://www.i-joho.net/longstay/
海外ロングステイの方法 http://www.ne.jp/asahi/napoleon/kaoru-salon/
海外ロングステイの基礎知識 http://www.ledby.net/01/
[長谷川文雄]
High-Life Review&Future vol.1(創刊号)
巻頭インタビュー
「理想とするハイライフ」 伊藤洋子 (東海大学教授)
変化し続ける様々なライフスタイルの中で、現在「ハイライフ」という言葉は何を意味しているのか。マーケティングを専門としながらも、日本農村力デザイン大学をはじめとし、「農のすすめ」を推進するなど、新たなライフスタイル環境を生み出していらっしゃる伊藤洋子さんにお話を伺いました。
1988年に行なわれた研究をレビュー&フューチャーします。
当時調査に参画していただいた3人のマルチハビテーターに追跡調査を行ない、現在そしてこれからの複数居住の広がりをレポートします。
また、近年住みたい場所No.1として注目されている沖縄について、複数居住先としての魅力を探ります。
[1]研究概要 長谷川文雄
[2]銀座に隠れ家をもつ 山本勝彦
[3]アピアピ バリでの生活 松波龍一
[4]国内外に移り住む 松矢俊明
[5]一番住みたい場所 沖縄 下地芳郎
[6]「複数居住の期待と現状」総括 長谷川文雄
TOPICS
「複数居住」に関するトピック 長谷川文雄
今回の特集テーマである「複数居住」に関して、注目される内外のトピックを3つ紹介します。
[1]海外から急増するマルチハビテーター
[2]マルチハビテーション制度
[3]海外ロングステイ
こんなハイライフあんなハイライフ
世界の居住「南靖県田螺坑村(なんせいけんたにしこうむら)」山畑信博(東北芸術工科大学助教授)
世界中から様々なスタイルのハイライフを探します。今回は中国福建省にある「客家」に住む人々の生活を紹介します。
2007年05月30日
「理想とするハイライフ」
廣瀬道孝 東京大学情報工学系研究科 教授へのインタビュー [1]
今回は、バーチャルリアリティ研究の第一人者である廣瀬道孝氏にご登場いただき、廣瀬教授のリアルな「ハイライフ」について語っていただきました。
「人は、何かに対して時間密度の高い生活ができていれば、それがハイライフなのではないか」とおっしゃるご自身は、仕事と趣味の微妙な距離とそのつながりを巧みに楽しんでいらっしゃるようです。
廣瀬道孝
工学博士
東京大学情報工学系研究科 知能機械情報学専攻 教授
東京大学IRT拠点 運営委員
神奈川県鎌倉市出身。
専門は、バーチャル・リアリティ、ヒューマンインターフェース、ウェアラブルコンピュータなど
主な著書: 『電脳都市の誕生』(PHP研究所)、『バーチャル・リアリティって何だろう』(ダイヤモンド社)、『バーチャル・テック・ラボ』(工業調査会)、『岩波講座 現代工学の基礎 システムの構造と特製<設計系4>』(岩波書店)ほか多数。
特集 「ハイテク時代の家庭の情報化に関する研究」1999年調査
[1]研究総括
1999年に調査された「ハイテク時代の家庭の情報化に関する研究」をレビュー&フューチャー。
本研究の概要、今日的な意義とレビューについて、長谷川文雄氏より解説します。
※動画内の表現で、現在の携帯電話の台数を「1千万台」としていますが、「1億台」の
間違いです。
お詫び申し上げます。
・ 総括資料:「ハイテク時代の家庭の情報化」 PDF形式ファイル
・ JR東日本研究開発センター フロンティアサービス研究所
http://www.jreast.co.jp/development/section/index.html
長谷川文雄
工学博士、IT評論家
JR東日本研究開発センター フロンティアサービス研究所 所長
清水建設入社後、社会工学研究所、総合研究開発機構、マサチューセッツ工科大学建築都市研究所、東京大学先端科学技術研究センター、東北芸術工科大学大学を経て現職。放送大学客員教授。ハイライフ研究所の評議員。
主な著書: 『定住を超えて マルチハビテーションへの招待』(清文社)、『テレポート 世代を結ぶ情報都市ネットワーク』(月刊工業新聞社)、『インテリジェント・シティ東京の5年後』(講談社)、『技術大国アメリカの読み方 日本は米国を本当に超えているのか』(PHP研究社)、『アメリカの10年後 変化はこの国からおこる』(イーストプレス)、『マルチメディアが地域を変える』(電通)ほか多数。
特集 「ハイテク時代の家庭の情報化に関する研究」1999年調査
[2]「インタビュー(1) 新しいハウス環境へのとりくみ」
松下電機産業株式会社は、情報技術の進展、社会の情報環境の変化に対応して、80年代のHAから始まり、99年には、HII(Home Information Infrastructure)ハウスを、そして01年にはその進化形としてeHIIハウスがオープンし、ハイテクな機器、ネットワーク技術を用いた豊かな暮らしのコンセプトを提案してきました。そうした「くらしと社会の新しいしくみづくり」を継続して研究・提案し、具体的な商品やサービスを開発し続けているシステム創造研究所の室長、渡邊和久氏に、わたしたちのくらしの近未来を聞いてみました。
<参考>
・ 解説資料:PDF形式ファイル
・ 松下電器産業株式会社 システム創造研究所
http://panasonic.co.jp/soken/index_1.html
渡邊和久
松下電器産業株式会社 システム創造研究所 戦略デザイン研究室 室長
九州芸術工科大学芸術工学部卒業後、1988年に松下電器産業株式会社に入社。総合デザインセンターに配属、現在システム創造研究所に所属。社会環境の調査・研究、情報および環境システムの企画・デザインを担当。文化施設の情報化研究、駅の複合化に関する研究、快適環境システム研究等に従事し、和歌山マリーナシティ、アジア太平洋トレードセンターの情報化計画を実施。
特集 「ハイテク時代の家庭の情報化に関する研究」1999年調査
[3]「インタビュー(2) 家庭用ロボット」
2010年には1.8兆円の市場規模が見込まれているロボット関連産業。もう映画の世界だけでなく、私たちの生活のまわりに多彩なロボットたちが登場する日は目前です。2005年に開催された愛・地球博では、国をあげて「次世代ロボット実用化プロジェクト」が推進され、ロボットが人と共存するための様々な実証実験や、「2020年人とロボットが暮らす街」をコンセプトとした、街並みや公園、住宅など、私たちの近未来の生活シーンの中で活躍するロボット達が紹介されました。また、2006 年には、社会で活躍し、将来の市場創出への貢献度、期待度の高いロボットを称える表彰制度「今年のロボット」大賞が、経済産業省を中心に創設され、第一回目の大賞はお掃除ロボットが選ばれました。
今回は、そうしたロボットプロジェクトの推進事務局に関わってきた、小山田裕彦氏に、私たちの身の回りに登場しつつあるロボットたちの動向について聞いてみました。
<参考>
・ 愛・地球博プロトタイプロボット展 ダイジェストムービー
http://www.nedo.go.jp/expo2005/robot/movie/index.html
・ 今年のロボット大賞2006
http://www.robotaward.jp/
小山田裕彦
株式会社シンク・コミュニケーションズ 取締役
鹿児島県出身、鹿児島大学で経済、地理学を学び、地方にも進出拡大が広がりつつあったソフトウェア業界に興味を持ち、昭和59年に株式会社日本エム・アイ・シーに入社。システムエンジニアとして企画部門に携わり、社会システムの調査・提案、科学館、ミュージアムなどのプランニングなどを担当。平成14年からは、テーマパーク、商業空間プロデュースを手がける株式会社インタープランの取締役に就任、平成16年には、仕事仲間と株式会社シンク・コミュニケーションズを設立。愛・地球博をはじめとする、各種ロボットプロジェクトの事務局を担当。最近は、新しい街づくりのためのアートプログラムや地域の学校「お父さんの楽校」などを推進。またハイライフ研究所の調査研究に参画するとともに、当サイトHigh-Life Review & Futureの取材・編集を担当。
特集 「ハイテク時代の家庭の情報化に関する研究」1999年調査
[4]「インタビュー(3) 地方都市における家庭のハイテク化・情報化」
1999年に実施された「ハイテク時代の家庭の情報化に関する研究」の研究者として参画。家庭電化製品のメカトロニクス化、テレビの多様性、携帯電話がもたらす家庭内コミュニケーションの変化、インターネットの家庭への普及、ロボットの台頭など、当時の急速に進展する私たちのくらしの環境をレポートしていただきました。
今回は、調査から7年経った現在、山形を中心に、地方都市ではどのような変化があり、新たな課題は何なのかといったあたりをお聞きしました。
・ 資料:「地方の情報化の現状」 PDF形式ファイル
松村茂
工学博士
東北芸術工科大学 メディア・コンテンツデザイン学科 教授
1959年東京都生まれ、東京大学大学院博士課程修了、日本開発銀行設備投資研究者、東京大学先端科学技術研究センターを経て、現職。
専門分野は、e-ビジネス、起業化支援、地域活性化、まちづくり、地域経営、都市工学。主な著書:『生活都市の時代』(イーストプレス)、『未来史の中のメガシティ』(三田出版会)、『マルチメディアが地域を変える』(電通)、『地域の価値を創る』(時事通信社)。
特集 「ハイテク時代の家庭の情報化に関する研究」1999年調査
[5]「インタビュー(4) 利用者:家族・女性」
様々な家電がハイテク化し、携帯電話やブロードバンドの普及による家庭内の情報化も大きく進展し、社会全体が便利になり、暮らしやすくなった反面、新たな不安材料、課題も出てきている。
今回は、都市に暮らす家族を対象に、家庭内のハイテク化・情報化の現状と、これから期待することをお聞きしました。
伊藤香織
都内在住、30代夫婦2人暮らし、夫婦ともに大学の研究者・教員で、共働き。
家庭内は早い時期からネットワーク環境を整備し、仕事場と家庭内のシームレスなネットワーク環境を望んでいる。
仕事がら海外研究出張も多く、夫婦間では動画によるチャットの会話も多い。
パソコン環境以外の家庭内のハイテク化は、まだこれからだとのことだが、将来的には介護ロボットなど新しい家電・サービスを必要とするかもしれないとのこと。また最近気になることは、複雑化する家庭内の各種セキュリティへの対応とのこと。
特集 「ハイテク時代の家庭の情報化に関する研究」1999年調査
[6]「インタビュー(5) 利用者:家族・男性」
様々な家電がハイテク化し、携帯電話やブロードバンドの普及による家庭内の情報化も大きく進展し、社会全体が便利になり、暮らしやすくなった反面、新たな不安材料、課題も出てきている。
今回は、都市に暮らす家族を対象に、家庭内のハイテク化・情報化の現状と、これから期待することをお聞きしました。
<参考>
・ 掃除ロボット ルンバ
http://www.irobot-jp.com/
上原清輝
都内在住、30代夫婦と就学前の子供の3人暮らし、建築設計・プランニングの仕事に従事。家庭内はブロードバンド化され、パソコンおよびゲーム機器、テレビなどが無線LAN環境でネットワーク化されている。
家庭内の情報化で、一番変化したことは「調べごと」。とにかく気になることがあれば、すぐネットワーク検索するようになったとのこと。ネットショッピングもよく利用するし、店に買い物に行くときも、商品の下調べ、価格比較などしてから出かけるとのこと。
写真が趣味で、デジタルカメラによるフォトワークは楽しみのひとつ。現在実家のご両親との動画チャットの実現も準備中とのこと。孫の顔が見たい一心でご両親も情報化に奮闘中。家庭内にほしいロボットで今気になっているのはお掃除ロボットだそうである。
「ハイテク時代の家庭の情報化に関する研究」に関するトピック
長谷川文雄
今回の特集テーマである「ハイテク時代の家庭の情報化に関する研究」に関して、注目される内外のトピックスを3つ紹介します。
[1]家庭内の携帯コミュニケーション
携帯電話の普及がついに1億台を越えている。1985年にNTTがポータブル電話機「ショルダーホン」を発売し、携帯電話の幕開けとなった。93年にはデジタル方式が導入され、普及に弾みがつき、95年移行は年間7〜8百万台の勢いで増加してきた。誰でも持っているといっても過言ではない携帯電話となり、日常生活のコミュニケーションのあり方に大きな影響を及ぼし始めている。通話を元より、メール、カメラ代わり、WEB閲覧、決済をはじめ最近はテレビ機能や家電のリモコン機能まで組み込まれているものも出現している。
それでは、日常生活とりわけ家庭内でどのようにコミュニケーションされているのか、携帯により家族のコミュニケーションの絆が高まったのかどうかが気になるところである。(株)情報通信総合研究所が2006年に行った「家庭のコミュニケーション行動と情報通信サービスの利用状況調査」によると、興味深い結果が表れている。
1)調査では、家族間の会話が少ないといわれるが、コミュニケーションの方法は「直接話す」が24.5%と一番多く、「携帯電話」が21.6%、「携帯メール」が20.2%、「固定電話」が19.3%となっている。(図—1参照)
相手の顔を見て話すのが一般的と思われるが、逆に話しにくいことを、電話やメールで済ます状況が増えてきているようだ。その傾向は夫婦間でも見られるという。固定電話が健在なのは、落ち着いて話せるという安心感と、料金が微妙に関係していると考えられる。
2)家庭内では、母親が情報の中継的な役割を果たしている様子が伺える。最も多いいコミュニケーションの相手として母親を、未婚の男性では51.5%、同女性では54.9%あげている。因に父親はそれぞれ、14.2%、9.8%と低くなっている。家族の構成員の殆どが保持しているはずの携帯電話で、いつでもどこでもコミュニケーションできるはずなのに、現実に父親は敬遠されがちのようだ。
3)また、興味深いのは夫婦間のコミュニケーションでも、その方向性は世代により、異なっている。調査によると30代ではほぼ同じ比率だが、40代では、「夫から妻」が43.4%、「妻から夫」が25.4%と差が顕著になってくる。50代ではそれぞれ、45.3%、29.6%となっている。帰宅時間、食事の準備の有無など、夫から妻への連絡が高いようだ。
4)最近人気のあるテレビ番組で、父親と思春期の娘とのコミュニケーションを携帯メールを用いて円滑にするものがある。その指南役が女子高生で、たとえば父親の心配事を妻に送る内容で書き、それを間違ったようにして娘に送るという仕掛けだ。まさに母親を間に立てての「間接話法」だろうか。
5)しかし最も重要なのは、やはり緊急時に連絡が取りやすいことと、相手の都合で電話にでられない場合を考え、メールによる連絡が可能である。それだけ、家族のコミュニケーションメディアが太くなってきたことは評価できるだろう。
[長谷川文雄]
「ハイテク時代の家庭の情報化に関する研究」に関するトピックス
長谷川文雄
[2]家庭内に入り込むロボット -掃除ロボットが人気
ロボットというとホンダのアシモのような、人間の形をしたもの(ヒューマノイドという)をイメージしがちだが、これから家庭に入り込むロボットは、必ずしもそうとは限らない。一部実用化の域に達したのもあるが、まだ実験室で開発が進んでいる。たとえば、東京大学では10年先にリビングルーム実用化されるであろうロボットを開発している。デモでは「お茶をください」と話しかけると、返事をしてキッチンに移動し、そこで別なロボットがペットボトルからお茶を注いで、そのロボットに手渡し、依頼者のところに運ぶという仕掛けになっている。2つのロボットが協調連携しているところが興味深い。
インターネットコム株式会社とJR東海エクスプレスリサーチが、2007年1月にロボット家電に関する調査を行っている。まず家事手伝いロボットが出現すれば、「利用したい」は、67.3%、「したくない」は17.6%と関心の強さが伺われる。利用希望者に対し、では何を手伝って欲しいかと問うと「掃除」90.5%、「洗濯」50.5%、「料理・台所仕事」48.2%、になっている。逆に「庭に手入れ」22.5%、「親の介護」20.3%、「子供の遊び相手」14.0%、「買い物」13.%となっている。
庭は趣味の一環、親の介護や子供の面倒はやはり人任せならぬロボット任せに抵抗を感じるのだろうか。買い物は、一種の喜びなのだろう。
人気の高かった「掃除」ロボットだが、既に実用の域に達している。
アメリカのiRobot社が発売している掃除ロボットは既に全米で20万代以上販売されている。従来の掃除機波の吸引力をもち、家の中を家具や障害物をよけて動き、階段や段差から落ちる心配もないという。一回の充電で2時間近くの稼働が可能で、電池が無くなると自ら充電用のホームベースに帰ってくる。因に値段は79,800円だという。
iRobot社 全自動掃除機
ルンバ・ディスカバリー5215
市場参考価格(税込)79,800円
因に、松下電器産業も同様の自律制御型の清掃ロボットを実用化している。
NIKKEI NET http://it.nikkei.co.jp/digital/special/robot.aspx
[長谷川文雄]
「ハイテク時代の家庭の情報化に関する研究」に関するトピックス
長谷川文雄
[3]ハイテク家電の使いこなし
パソコンが普及しても十分使いこなせないで、宝の持ち腐れになることがある。
かつて「デジタルデバイド」なる言葉が風靡した。その意味は、インターネットの恩恵を受けることのできる人とできない人の間に生じる経済格差を指し、通常「情報格差」と訳されている。格差は様々な局面で表れてくる。お金がなくてパソコンが買えないレベルもあれば、利用したい人の地域に高速ネットが物理的に来てない場合もある。さらに、使い方(情報リテラシーという)が分からない場合も含められる。
家電製品もコンピュータ制御が普通なので、勢い機能が多様化、高度化してくる。そのためユーザーは簡単なことを求めているのに、複雑な手順を踏まないと実現できない場合も少なくない。携帯電話など、まさに過剰と思えるような機能が満載し、覚えきれない。いわばハイテク化の宿命でもあるが、その楷書うぬ向けた様々な取り組み例も見られる。
1)マニュアルのダウンロード
どこの電器メーカーも始めているサービスに、インターネットを通じたマニュ アルのダウンロードサービスがある。家電製品のマニュアルを紛失し、扱い方 が分からなくなった場合など便利である。Googleなど検索エンジンを通じて製 品名を記して検索すれば、古くなった型番の製品でも、入手することができる。
2)動画による解説
ブロードバンド環境の整備に伴い、取り扱いを動画で解説するサービスが始まっている。たとえば、松下電器ではいかのサイトで、アイロン、冷蔵庫など動画による利用の仕方を提供している。
松下電器産業株式会社 http://national.jp/college/movie/
3)相談窓口
各メーカーとも相談窓口を設けているが、殆どは日中の時間帯、及び月から金曜日が多い。共働きが一般化している現在、週末、夜間の相談窓口の開設がのぞまれる。
4)専門家育成
家電製品が多機能、複雑化している現在、販売の現場でもユーザーの様々な疑問や質問に対し、適切にアドバイスできる専門家が必要になる。
家電製品協会認定センターでは、こうした要請に応えるために、「家電製品エンジニア」、「家電製品アドバイザー」、の資格制度を設けている。
同センターの説明によれば、「家電製品エンジニア」は家電製品関連などの業務で、製品の設置・接続・セットアップ、ソフトトラブルのリカバリー、故障の修理、その他不具合症状の解消等に従事する人を対象とし、「家電製品アドバイザー」は流通関係の販売・営業系業務に従事する方及び消費者からの各種相談を受ける業務に従事する方を主な対象とした資格となっている。
両者とも分野は、テレビ、ビデオなどの映像・音響・情報通信関連製品を扱う「AV情報家電」とエアコン・冷蔵庫・洗濯機などを扱う「生活家電」に別れている。
(財)家電製品協会 http://www.aeha.or.jp/
[長谷川文雄]
巻頭インタビュー
「理想とするハイライフ」 廣瀬道孝(東京大学情報工学系研究科教授)
今回は、バーチャルリアリティ研究の第一人者である廣瀬道孝氏にご登場いただき、廣瀬教授のリアルな「ハイライフ」について語っていただきました。
「人は、何かに対して時間密度の高い生活ができていれば、それがハイライフなのではないか」とおっしゃるご自身は、仕事と趣味の微妙な距離とそのつながりを巧みに楽しんでいらっしゃるようです。
1999年に調査された「ハイテク時代の家庭の情報化に関する研究」をレビュー&フューチャー。
[1]研究総括 長谷川文雄
[2]インタビュー(1)新しいハウス環境へのとりくみ 渡邊和久
[3]インタビュー(2)家庭用ロボット 小山田裕彦
[4]インタビュー(3)地方都市における家庭のハイテク化・情報化 松村茂
[5]インタビュー(4) 利用者:家族・女性 伊藤香織
[6]インタビュー(5) 利用者:家族・男性 上原清輝
[7]今後の展開 長谷川文雄
TOPICS
「ハイテク時代の家庭の情報化に関する研究」に関するトピック 長谷川文雄
今回の特集テーマである「ハイテク時代の家庭の情報化」に関して、注目されるトピックを3つ紹介します。
[1]家庭内の携帯コミュニケーション
[2]家庭内に入り込むロボット -掃除ロボットが人気
[3]ハイテク家電の使いこなし
こんなハイライフあんなハイライフ
世界の居住「アマゾン川の水上生活 ブラジル マナウス」
山畑信博(東北芸術工科大学教授)
世界中の様々なスタイルのハイライフを探します。今回は、南米のアマゾン川の奥深く広がる巨大都市マナウス付近の水上生活の住居を紹介します。