[2]定年離婚
「団塊の世代」に関するトピック
長谷川文雄
[2]定年離婚
ここ10年、熟年離婚が急増しているといわれてきた。厚生労働省の人口動態調査によると、「1980年 10,880件」、「1995年 31,800件」、「2003 年 45,000件」と毎年、1,056件平均で増加してきたが、03年度から逆に減少し始めている。ここに来て夫婦の仲が良くなってきたのだろうか。
実はそうではなく、「嵐の前の静けさ」と考えられている。その理由は、専業主婦の年金受給権の分割が法令により認められようとしているからである。この法令は07年4月から施行されることになっている。その趣旨は、第三号被保険者が夫の了解または裁判所の決定があれば、「厚生年金・共済年金の報酬比例部分につき最大2分の1まで分割することができる」というものである。多額ではないにしろ、生涯安定的に支給される年金の意味は大きい。これを手にしてから、離婚に踏み切ろうとしている「定年予備軍」が潜在しているものと考えられる。第一生命経済研究所の調査によると、こうした年金分割待ちの離婚予備軍は、03年からの累計でおよそ4万2,000組みに達すると推定している。法令が施工されると、それまで我慢していた離婚願望の女性が、夫に三行半を突きつけることになるという。
その背景には、長年にわたって生活を共にしてきた夫婦だが、夫の現役時代にはあまり会話もなく、たまの休日も、ゴルフに出かけたり、家にいてもごろごろしていて、子供の教育や家事にはあまり関心なく、妻の話にも耳を傾けない生活が長年続いてきた。
こうした夫が、定年後、家にいて、同じような生活を繰り返すのかと思うと、もう耐えられないと思う主婦が増えている。定年を境に、こうした妻たちは残された時間を自分の生きたいようにしたいと願い、離婚を選択する傾向にあると指摘されている。
[長谷川文雄]
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