まちを作ること、人を育てること 北本駅西口駅前広場改修計画の概要

編集局 添田昌志

駅前広場の現状と改修計画の概要

 現在の北本駅西口駅前広場は昭和50年に完成されたものである。当時、北本市の人口は増加が著しく、それに対応する交通インフラの整備として行われた。とは言え、当時の駅周辺は商店や住宅はなく、畑の中の広場という感じであったそうである。そこから35年あまりの時が経ち、施設の老朽化やバリアフリーへの配慮、交通量の増加、中心市街地活性化などの課題に対応するために、現在改修計画が進められている。改修計画案では、雨でも濡れずに歩けるようなシェルターの設置、交通機能を整理した機能的なレイアウト、多目的広場や植栽帯の設置など、様々な試みが提案されている。

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現在の西口駅前広場

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完成予想イメージ

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北本駅の構内にある広報ポスター

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「北本まちづくりキャラバン」に置かれている模型


「北本らしい“顔”の駅前つくりプロジェクト」
 
 この改修計画の最大の特徴は「北本らしい“顔”の駅前つくりプロジェクト」として、行政と住民、さらに大学が協働してワークショップなどを開き、改修計画の内容や改修された後の使い方を濃密に議論していることにある。一般的に駅前広場のような公共工事は、外部のコンサルタント会社が計画を作り、地元の協議会である意味形式的な審議をして承認されるというのが通例である。また、市民に対しては月刊の広報誌に掲載する程度という状況も多い。
 それに対して今回の改修計画では、計画段階から積極的に住民参加を促し、そして整備後のソフト的な活用手法についても議論するなど、『つくる』だけでなく『つかう』ことまで視野に入れた計画づくりに取り組んでいる。具体的には、市民団体と共同して北本の特徴(顔)について考える「ワークショップ」、まちづくりに関係する専門家による「まちづくり講座」、市民が参加して駅前広場の活用方法について考える「つかう会議」などを平成20年度から定期的に実施している。また、それらの企画、運営のために市に専属の職員を置いていることも特筆するべきことである。

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「北本らしい“顔”の駅前つくりプロジェクト」組織図


大学への依頼と成果

 上記のようなプロジェクトを推進する鍵となっているのが、筑波大学等の教員をはじめとする研究者や専門家の存在である。行政と住民がやりとりするためには、第3者的な立場で説明できる人材が必要ということで、これらの専門家はハードの整備に関する専門的な助言を行うというだけではなく、住民の視点に立って住民と会話ができる存在としての役割を担っている。
 また、このプロジェクトには学生も多く参加している。上記のワークショップについては筑波大学貝島研究室と東京工業大学塚本研究室に所属している学生が中心となって調査などを行い、発表役を担っており、その結果を発信するブログも彼らを中心に運営されている(北本らしい“顔”の駅前つくりプロジェクト ブログ)。その他にも広報用のポスターを作ったり、イベント告知のチラシを配ったり、地域のお祭りに出かけて計画案の説明を行ったりと学生が担う役割は大きいようである。市の担当者によると、このような学生の参画は今回のプロジェクトには不可欠で、地元でまちづくりに関心ある同世代の若者たちとも連動し、うまく機能しているとのことである。また、住民の立場からすると、専門家の先生というよりも、学生という方がおそらくとっつきやすく、親近感を覚え、コミュニケーションをとりやすいというようなメリットもあるだろう。

 以降では、筑波大学の貝島桃代氏に、このようなまちづくりに関わることになった経緯や、大学として参画する意味についてお伺いする。

貝島桃代氏インタビュー(1)へ