街への意識を共有するために 5大学による住宅モデルの提案

■5大学による住宅モデルの提案

「八潮街並みづくり100年運動」で調査研究を担当している5大学が今年度の成果として発表した住宅モデル(全部で7モデル)。それぞれに身近にある八潮の街の特徴を捉え、それとの関係から住宅のあるべき形を提案している。


<マスクメロン街区・・・東北工業大学 槻橋修研究室>
 変形した特徴(堀/境界、スキマ、曲がり角)のある街区によって入り組んだ道が続いている『マスクメロン街区』。そのため、角を曲がるたびに様々な庭やぽっかりとあいた空き地に出会うことがある。塀の操作、空き地の取り込み方によっては、街区の面白さを大きく変化させることができる。このマスクメロンのような街区における余白や境界を踏まえて『ヤドカリハウス』を提案。建物を一層分持ち上げることで、屋内へ引きこまれた余白は路地空間となり、生活の場と外部を連続させていった。

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<オカノイエ~ダブルデッキハウス・・・東北工業大学 槻橋修研究室>

 中川の堤防沿い提案する住宅―ダブルデッキハウス。堤防沿いの特徴、主に視線や動線を考慮した。生活に必要な空間を確保したファーストデッキ(地盤面)と個性にあった自由なプランと形状を謳うセカンドデッキの2層により構成した住宅を提案。セカンドデッキの高さを揃えることによって、ダブルデッキハウスの連なりによる街並みができた。

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<八篠の角屋・・・茨城大学 寺内美紀子研究室>
 八篠北部地域は、八潮が純農村地域であった頃からの街区構成が現在に至るまで残っている。今回この街区構成を「ハチジョウモジュール」と名付け、八篠に拡がる水田風景と住宅の共存について、主に建物から生じる影と水田への日照の関係から考えた。その結果、水田に影を落とさないように、東西に走る畦道に沿って敷地を設け、南に広く面した住宅を考案した。

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<密集イエイエ・・・信州大学 坂牛卓研究室>
 潮止地域では、工場と住宅が混在し、工場の大きさによって決められた敷地をいくつか分割して住宅の敷地に変えている。このような小さな住宅が集まった時の住み方について各住宅にある関係性を検討し、表・裏・隣といったつながりで部分的に関係を持たせることにする。具体的には、『軒の高さを低くそろえ、開放感と連続感を作る』『各住宅に裏庭を作り、弱いつながりを作る』『隣の住宅の側面を見せ連結感を作る』といった点に考慮して外部空間を計画し、個々の住宅をデザインした。


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<町工場と袋小路と家と・・・神奈川大学 曽我部昌史研究室>
 八潮南西部。ここは、住宅・工場・袋小路が多く存在し、その間を水路が縦横に走っている。住宅と工場が混在している袋小路の数はこの地域内に約90か所存在する。この場所の主な特徴である工場からの音や袋小路の形状を考慮して、2重壁を作る、音源から距離をとる、といった工夫を施した住宅を提案する。具体的に、1階は袋小路に面しているので、外部とのつながりを持ちやすい縁側や土間などを設ける。2階には2重壁を作り、生活空間に騒音が入ってこないようにする。3階は、音源からの距離も離れているため、見晴らしを楽しめる穏やかな空間とした。

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<オカケンチク・・・日本工業大学 小川次郎研究室>
八潮には地盤改良のための盛土が多い。この丘のような風景と共に暮らすことができる集合住宅を提案。様々な世代が住むことを想定し、家族の形態に見合った設計にする。丘の上を舗装して車いすやお年寄りの方が移動しやすいようにする、住宅と住宅の間に椅子などを置き集えるような場所を作る、といった工夫をした。

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<ホウチメリット・・・日本工業大学 小川次郎研究室>
八潮の住宅地には一見「放置」されているような緑地が多く見られる。しかし、ここを実は「豊かにできる空間」と考え、「放置」→「豊地」と発想の転換をする。そして、緑地にホウチを組み込むことで、農地と住む距離が近づいた八潮らしい豊かな住み方を提案する。具体的には、近隣の農地と住宅とのつながりを持たせたるために、デッキや土間を取り入れ、畑に面して大きな間口を持つ住宅を設計した。

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資料提供:
東北工業大学 槻橋修研究室
茨城大学 寺内美紀子研究室
信州大学 坂牛卓研究室
神奈川大学 曽我部昌史研究室
日本工業大学 小川次郎研究室