銀座らしい街並みのために 竹沢えり子氏インタビュー(2)

― 銀座デザインルール(以下、デザインルール)作成までの経緯を教えてください。

◇「銀座デザイン協議会」というしくみづくり
 銀座街づくり会議をつくって、地区計画を改正しようという協議をしている間に、高さや容積率は問題ないけれど、このデザインはちょっと銀座にはふさわしくないんじゃないか...という案件がいくつか出てきてしまったんです。ですが、法律的には問題ないので、何の規制も出来ないわけです。仕方がないので、事業者や建築家の方をお呼びして、何度か議論したんですね。こういった経験があって、地区計画だけでは銀座らしい建物は建たないという結論に達したんです。思いを共有してくださった中央区も、何とか地区計画だけでない仕組みを作らなければいけない、ということで、デザイン協議会のしくみを中央区の方から提案されました。そして、地区計画改正とともにデザイン協議会制度を要綱に規定したんです。

◇行政との連動、信頼関係
 区の要綱では中央区の制度としてデザイン協議会を位置づけ、区がある団体を認定するという形をとっています。第一号として銀座が、中央区長から認定を受けてやっている、ということです。
このような協議会ができたというのは、98年の地区計画策定時にさんざん話し合って、行政と銀座の間で信頼関係ができていたからと思います。


― 実際にデザインルールはどのように活用されているのでしょうか。

◇銀座らしさの理解のツールとして
 銀座デザイン協議会で、個々のプロジェクトのデザインのチェックを行う判断基準をとりまとめたものとして、「銀座デザインルール」が作成されました。
 ただ、実際にデザインルールにあるチェックリストを見ながらチェックする、ということはあまりないです。多分一番望ましいことは、「特に問題なし」という報告ができることだと思うんです。つまり、お互い「これは銀座らしいでしょう」「そうですね、銀座らしいですね」と言って分かりあえることです。だから、事業者や建築家の方がデザインルールを事前に読んで、銀座らしさを自主的に理解して提案してくださるのが理想だと私たちは思っています。
 また、説明が難しかったり、こんな事例がありますよと説明する時に、この冊子はすごく役に立っています。あと、「あなたが建設しようとするエリアは、こういう特性を持っているところですよ」という話をするのに、役立っていると思います。

ginza-kyogi.jpg
デザイン協議によって計画が変更された事例:マツモトキヨシ、ユニクロ


― デザインルールで目指すところはなんでしょうか。

◇街に入るきっかけ
 事前協議において、私たちが言っていることの半分くらいは、町会に入ってください、違法駐輪や置き看板をしないよう従業員教育を徹底してください、近隣に挨拶へ行ってください、というようなことなんです。つまり、街の仲間として一緒にやっていきましょう、ということです。このデザイン協議会の意味は、そういうことを話し合えるきっかけだと思うのです。つまり、デザインルールというのは、決まりというより取っ掛かり。街で大切にしているものをちゃんと感じてください、ということです。きちんと文章で書かれている訳ではないけれど、ここから感じて欲しいのです。

◇「銀座らしさ」の共有
 私たちはデザインに対しては、これは銀座らしいという例をなかなか出せないんです。銀座らしくない例というのは、スケール感が違うとか、色が奇抜すぎるとか、いうことは可能です。しかし、「銀座らしい」というのはなかなか説明できない。これが一番難しいんです。
むしろ、銀座デザイン協議会があることによって、新しく銀座に入ってくる方が、必ず街の人たちと、銀座らしさについて語り合わなければいけないという、そこに意味があるんです。そこに集まって、事業者の方を前に、町会長さんたちが、銀座らしさについて自分の言葉で説明することに私は意義があると思っているんです。だから、デザインルールを介して、街が銀座らしさを共有していく過程になっていると思うんですよね。

ginzanight.jpg
夜も賑やかな銀座4丁目交差点

― 近年、新たに出てきた課題はありますか。

◇駐輪の問題
 近年は、晴海や豊洲あたりに住宅がたくさん出来ていて、自転車がとても増えてきています。今までは、近所に住んでいる方が銀座に自転車で来る、ということをあまり想定していなかったと思うんですが、今は自転車で買い物に来る人、働きに来る人、あるいは地下鉄駅前においてそのまま地下鉄に乗って通勤する方が増えて、駐輪の問題が出てきています。いわゆる駅前の悩みですね。

◇ファンド・ビジネス
 この2、3年で出てきたファンドビジネスは、オーナーの顔が見えないので、街の活動にとっては頭が痛いです。責任の所在が不明なことが多いので、テナント管理についても誰に言えばいいんですか、となりがちです。銀座は基本的に、引越しそばではないけれど、オーナーさん同士が「どうもこんにちは」と言い合う関係がまだ生きていますから。 

◇音環境の問題
 また、おそらく今みんなの共通の意識として出てきているのが、広告ビジョンなどの音や動画の問題ですね。どこまで数値化するかというのは非常に難しい課題ですが、ある程度決められるものは決めてしまうことも考えられます。

関連トピック「銀座4丁目交差点の広告ビジョン(動画レポート)」を見る


― デザインルールは新陳代謝するものとして、今後どのように変容していくのでしょうか。

◇事例の充実
 事例をもっと増やすことです。事例を積み重ねていく中で、ルールの最後にある写真掲載部分が増えていきます。判例だけが法律、というような感じでもいいのかなと思っています。そして、場所ごとの事例集、○○通りの事例集、というようにまとまってきて、そのコードみたいなものが見えてくる、というのが理想だと思います。

◇ルールの詳細化
 各エリア・通りごとについて、そこの人たちと一緒に将来の方向性を書いてもらうような動きを作ることができればいいですね。うちの通りはこんな通りにします、というような話が、通りから出てきてくれると一番いいなと思っています。つまり、ルールの詳細化です。そのために、もっと細かく、地域の人と関わっていきたいですね。

ginza-namiki.jpg
並木通りの様子
ginza-miyuki.jpg
みゆき通りの様子

竹沢えり子氏インタビュー(1)を読む

comments

comment form

(東京生活ジャーナル にはじめてコメントされる場合、不適切なコメントを防止するため、掲載前に管理者が内容を確認しています。適切なコメントと判断した場合コメントは直ちに表示されますので、再度コメントを投稿する必要はありません。)

comment form