2008年04月30日
六本木の価値をはかる(1)超高層建築から読み解く都市
乱立する超高層建築
用賀方面から六本木の方へ高速道路を走ってくると、そのうちに前方に六本木ヒルズが見えはじめ、その横を横切るまで延々とその巨大な超高層建築を正面に見続けるという場面に出くわす。その悠然と立つ姿を見続けていると何か、そのビルが作り出す領域の中に吸い込まれていくような感覚を覚える。同じように、普段何気なく歩いている場所から超高層建築が見えるのを発見した時、遠く離れた超高層建築とその場所がつながったように感じることがある。みなさんも超高層建築を見たときそのように感じたことがないだろうか。
高速道路から見える六本木ヒルズ
建設中の東京タワー
「超高層建築が見える場所マップ」
40~50年前には高い建物といえば東京タワーぐらいしかなかった東京も、現在は至るところに超高層建築が乱立し、現在でも異常な速度で増え続けている。その中でも六本木は現在、六本木ヒルズ、泉ガーデン、東京ミッドタウンと2000年以降に東京に建設された200m超の超高層ビル8本のうちの3本が林立するという、現在東京でもっとも成長著しい地域のうちのひとつとなっている。それに伴い六本木を歩いていて感じられる都市の認識も大きく変わってきたように思う。
そこでそのような都市の認識を読み解くために、実際に街に出て、六本木という街から超高層建築がどうみえているのかを身を持って経験してみることにした。具体的には六本木の3本の超高層建築の周辺を、実際に地図を片手に自転車でくまなく走りまわり、超高層建築が見えた場所をその地図に記入していくことで「超高層建築が見える場所マップ」を作成してみた。一つの超高層建築の周囲を見て回るのに自転車で走った距離は優に50kmを越えたが、そのような調査を続けていくと、段々とその超高層建築やその周辺の地域の性格の違いを、「頭」というよりは「体」で、実感できるようになっていた。
「六本木ヒルズが見える場所マップ」
六本木に建つ超高層建築の見え方の違い
冒頭にもある六本木ヒルズはその大きな立面も手伝ってか、六本木の街からとてもよく見える印象が残る。作成した地図を確認してみると正面に六本木ヒルズを見続けることができる場面が多くあり、これは六本木ヒルズを中心に放射状に伸びる道路が数多くあることが関係していると考えられる。逆に216mと六本木ヒルズと遜色ない高さを誇る泉ガーデンの印象はそれとは対象的であった。建物の周囲を回ってみてもほとんど見かけることができないし、見かけてもビルとビルの隙間に埋もれるようにちょこんと上の部分しか見えていないことが多い。これは放射状の道路があまりないことや坂の途中に建っていることに加えて、虎ノ門などのオフィス街に近いため、道路と泉ガーデンの間に空き地が少なく、ビルがみっちり林立していることも理由の一つと考えられる。
上記の二つに対し、近年竣工した東京ミッドタウンの印象はまた一味違っている。たしかに道路としては泉ガーデンと同様に周囲に放射状の道があまりないせいか、街のなかで見かけることは少ない。しかし、東京ミッドタウンの場合、周辺に青山墓地や檜町公園などがあり、そのおおきな空地越しに建物全体が見えるために、都市の中に建っているということをあまり感じさせない印象がある。
道路の正面に見える六本木ヒルズ
ビルの隙間から見える泉ガーデン
青山墓地越しに見える東京ミッドタウン
このように、同じような規模の超高層建築もその建っている場所や周辺の環境によって見え方はさまざまである。このことはつまり、我々が普段街の中で超高層建築を見ることで、同時にその見え方から無意識にその都市環境について考えさせられているともいえる。六本木に林立した超高層建築の多様な見え方は、道路の形状や建物の密度、大きな空地など、さまざまな都市の要素がこの地域にあふれているということをあらためて教えてくれているのではないだろうか。
(伊庭野大輔)
2006年 東京工業大学建築学専攻修士課程修了
現在、日建設計勤務
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- 東京生活ジャーナル
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- in 08ハイライフ研究所 都市研究報告 > 14六本木