2007年12月31日
豊洲の価値をはかる(7)再開発がもたらすもの-3
見上げてみたり見下ろしてみたりの価値
タワーマンションが林立する姿は壮観なものであろう。新宿の高層ホテルに住んでいるような都会を感じるセッティングである。六本木ヒルズは周囲の低さから大名気分を味わうものだとすると、豊洲はもっと日常に近い都会感ではなかろうか。
1880年代都市への密集の解決策としてシカゴに建てられたホーム・インシュランス・ビルが、近代高層ビルの祖と言われる。世界初の超高層は、1900年に建てられたニューヨークのパーク・ロー・ビルだ。日本では1962年に31mの高さ規制が撤廃され、1968年日本初の超高層ビル・霞ヶ関ビルが完成する。日本初の高層タワーマンションは1971年の19階建て三田綱町パーク・マンションであり、故丹下健三もこの建物に居を構えていた。
豊洲では30階を超えるタワーマンションも現れてきている。1棟1000戸近く、約22000人の居住を想定している。戸数がもたらすスケールメリットとしての共有空間の充実はそれだけでも価値といえる。そして、さすがに高層階からの眺めは素晴らしい。かつての浅草陵雲閣、愛宕山の展望台、現代の森タワー展望台に至るまで人々を魅了する「高さ」を自分の住戸で得られる可能性が広がった。個の楽しみと併行して外来者は、タワーが並び立つ景観を楽しみたい。新宿エリアとは異なり住宅地というスケールは、オフィス空間とは異なる緩やかな時間の流れのようなものが感じられ、見上げると人々の日常の積層が塔となっているだろう。
しかし、立ちつつあるタワーはどうも単調でよろしくない。今となっては時すでに遅しであるが、平らな埋立地の新たなる地平線としてのスカイラインについて、もっと統合的な協議がなされるべきである。
150mという高さに住む
似たような見上げ
リゾートであることの価値
「景観・環境・防犯・防災・育児」。工業地域がもつ対局のイメージコンセプトを掲げる豊洲一帯は、お台場とつながるリゾートという顔も得ようと努力がなされている。東京ディズニーリゾートをはじめ、「リゾート」という言葉が流行のようである。
リゾートとは、なんなのか。海が近ければいいというわけではないだろう。広辞苑で引っ張ると「保養地・行楽地」とある。リゾートたるためには、少なくとも郊外型店舗の構成は反目してしまっている。ららぽーと外部のドック周辺はたしかにリゾート的構成をとっているが、晴海通り以西にその様子はまったく伝わっていない。晴海通りの幅員の広さはもっての他だとしても、太陽のもと、楽しく散歩するような界隈ではない。せっかく十分広い歩道を確保しているのだから、そこに向かってカフェやバー、ちょっと立ち寄れて日常からの開放を促してくれる施設があってもよい。
上空に日常、足元にはリゾートが広がり、それこそ東京都心という密集集約のスケールメリットたる都市空間が形成できるというものであるのに。
ららぽーとの中はキッズであふれている
イベント広場もありリゾート気分を盛り上げる
(川上正倫)
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- 東京生活ジャーナル
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