豊洲の価値をはかる(3)街のスタイル-1

■ニュー下町ファミリーの街
 豊洲は、新しい街だ。街はみごとに格子状であり、道路幅は広く、街路樹は規則正しく植えられ、輝くビルが立ち並ぶ。それなのに、歩いてみるとそこはかとなく庶民っぽい。「勝ち組」の六本木ヒルズとは違うだろう、とは当然ながら、東京山の手の新興住宅地にあるような、中流気取りっぽさはない。生活密着型、東京下町リアルライフの風情が、作りかけのほやほや状態であってさえただよう。
 ベビーカーを引き引き、「今まで家事をしていました」というスタイルで歩く若い夫婦。ショッピングセンターの自転車の山。自動車ではなく、ベビーカーと自転車の街なのだ。カフェテラスには、若いお母さんたちがおしゃべりしながら子どもを遊ばせている。ららぽーとは、巨大な井戸端だ。人から見られることを、ほとんど意識していない場なのだ。
 この下町感は、地場が作り出すものだろう。東京の西側にはなくて、東側にある土地の効力だ。「銀座まで自転車で15分」も、おしゃれさではなく、「銀座に近い、新しい下町(町人の住む町・その町で暮らす人が住む町)」であることを想起させる。しかし、今の庶民っぽさ=ニュー下町ファミリーを思わせるからといって、ここでリアリティある暮らしが営まれていると認められるわけではない。嘘っぽさ、作りこまれた自然さは、この層の特徴とも言える。


■評価1―住む人のための街

 あたりまえかもしれないが、豊洲はマンション群をメインにした再開発の街だと認識した。高層マンションと、住む人のための商業施設でできているのだ。水曜昼過ぎにフィールドワークしたこともあり、行き場がないと言われている若い母親と子どもたちが、かなりの割合で見られた。
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左:ららぽーと入り口。豊洲を歩いている人 ―子連れの主婦、おひとり様の女性、ビジネスマンの黄金の取り合わせ。
右:遠くから来たというよりは、近くに住んでいる人が家族連れで歩いている印象。平日の昼間なのに、家族連れ(夫婦+ベビー)が多いことも特徴。
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左は旧市街?との境目にあるショッピングモール。右はららぽーと。テナントを見ると、いまどきの一般庶民のライフスタイルそのもの。私はこのラインナップから『オレンジページ』『すてきな奥さん』などの20代主婦向け雑誌の購買層をイメージした。

■評価2―作りこまれたナチュラル
 とにかく緑を増やそうと躍起になっている街だ。緑のない街に暮らす下町には、軒下園芸という伝統があるが、この下町では再開発の勢いに任せて木を植え続けている。しかしその「緑豊かな」街並みも、作りこまれたナチュラルさであり、これこそがいまの若い世代向けの住宅街であることの特徴だと思う。
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左:そう考えていたら、ありました、ナチュラルローソン
右:旧市街?に入ったとたんセブンイレブン。この雑然とした感じが、嬉しくもまたうっとうしくも感じた。でも住民に使い込まれている感じがある。

(辰巳 渚)