地下で見る都市の顔(1)

 この9月、35年ぶりにモスクワを訪れる。ソ連からロシアに変わり、その自由化路線や経済的な発展が街の姿にどれほど現れているのかとても楽しみであった。しかし、アエロフロート便で成田を飛び立ってすぐにそれがどうやら期待できそうにない予感をもち、実際に現地に到着してそれを思い知らされた。しかし、ここではモスクワの暗い影の面を書きたてようとは思わない。数字上の経済的大発展のわりに一向に改まらない後進性をいくら指摘しても、東京を考えることにつながらないからである。ここでは、35年前と変わらない地下鉄駅のすばらしさに触発されて、東京の地下鉄駅について再考したい。
 モスクワの地下鉄網を東京のそれと比べると、その構成の分かりやすさが歴然としている。ただし、色を分けて路線を識別するカラーコーディングは、東京では車両にも反映されているが、モスクワの車両には色がついていない。キリル文字の読めない旅行者にとっては不便であるが、構成が単純なので実際に迷うことも少ない。
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東京とモスクワの地下鉄網

(大野隆造)