オリンピックが変える都市の姿(2) 北京の変容

<街の骨格>
北京の特徴は言うまでもなく方形の城壁に囲まれたグリッド状の道路網である。中央に位置する紫禁城(故宮)から南にのびる軸線を中心として左右対称の道路網は、基本的にはここを首都とした明の時代から変わっていない。約20年前に訪れたときに買った北京市街地図(図1)を見るとその様子がわかる。しかし、今回訪れて購入した市街地図(図2)では、より広域をカバーしているが、グリッド状の道路網の上に重ねられた新たな環状の自動車道のパターンが目立つ。これは、地図の描き方だけの問題ではなく、市民が持つ北京の認知地図(心の中の地図)もこのように変わりつつあるように思われる。

図1 1986年の北京市街地図

図2 2007年の北京市街地図


<街の粒度(テクスチャー)>

写真1は、北京市都市計画展示館にある巨大な都市模型である。手前の競技施設のあるオリンピック公園から市の中心軸上にある紫禁城(故宮)を望む。その故宮まわりにある旧市街地は、細い路地(胡同)に接して低層の住宅(四合院と呼ばれるコートハウス)が並び、その高密で細かな粒のテクスチャーによって、まわりの大きな建物群とは一目で区別できる。しかし前述のように、この細かなテクスチャーのエリアは、高層建築が林立するゴツゴツしたエリアに急速に移行しつつある。

写真1 北京市都市計画展示館にある巨大な都市模型

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写真2 胡同(フートン):北京のグリッド状の街路は、大街(幅24歩)、小街(12歩)胡同(6歩)(1歩=約1.54m)の階層性をもって作られていた。この最も下位の胡同(フートン)は、公的な大通りと私的な住宅をつなぐ半公的なコミュニティ空間として住民の交流の場となっていた(縁台将棋を囲む住民)。

<ランドマーク>
北京市内はオリンピックに合わせて大規模な施設が多数建設中である。写真3は「鳥の巣」と呼ばれる異様な構造と形態を持つ国立競技場(ヘルツオーク&ド・ムーロン設計)である。また、市の中心にある天安門広場に面する人民大会堂の裏には、巨大な繭玉を半分に切って置いたような中国国家大劇場(ポール・アンドリュー設計)が作られている。ともに外国人建築家の設計だが、グリッド状の街区にぴったり納まった周りの建物に囲まれて、その曲面的な形状が際立ったコントラストを示し、非常に目立つランドマークになろうとしている。

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写真3 「鳥の巣」と呼ばれる国立競技場

(大野隆造)