豊洲の価値をはかる(2) 住民の使い勝手-2

■開発地や運河による開放感も、明日にはまちが変わる可能性
 豊洲地区はもともと埋立地だったので、幅の広い運河で囲まれている。それが、都心からの距離的な近さにもかかわらず、緑地や親水公園などの自然環境は充実しているといったメリットを生んでいる。
 一方、周囲を運河で囲まれていることのために生じるデメリットもある。その一つは、まちに入るには必ず橋を渡らなければならないことだ。例えば、深川第五中学校の裏から辰巳は運河を挟んで対岸に見える。ところが、辰巳まで行くには見えている方角と逆に向かわなければならない。一度、晴海通りまで出てから橋を渡って東雲に入り、橋をもう一本、渡って、ようやくたどり着く。
 東雲や枝川など隣街に住んでいて、通勤で豊洲駅を使う場合、毎日、橋を渡る。高い建物が多く、道路が広いので、雨風をさえぎる建物が近くにない。春や秋などの季節は川風が心地よいが、冬は寒い。雨の日は吹き付ける雨で駅に着いたときには、びしょ濡れとなっていることも少なくない。
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豊洲と東雲を結ぶ橋。道幅も広く見晴らしがいいが、雨風は強い。
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橋は上り坂になっており、自転車でわたるには一苦労。

 また、豊洲は開発中の敷地が多く、建物周辺にも空地が広く取られており、さらに、幹線道路も広いので、遠くまで見通すことができる。しかし、遠くの建物が見えることもデメリットになる。豊洲の駅を出ると、歩いて20分はかかる東雲に建つ高層マンションまで見通すことができる。逆の方角には日本ユニシス本社も見えるが、徒歩で15分はかかる。その結果、歩いて移動するときには、目的地まで予想以上に遠く感じる。新宿などの高層ビル街で感じる「見えているのにたどり着かない」という感じが豊洲にもある。
 さらに付け加えると、開発中の敷地にはいずれ建物が建つ。開発地が多いということはこの先、どういったまち並みになるのかわからないという不確定要素だ。今よりもまち歩きが楽しくなる施設や空間ができる期待感はあるが、逆に、眺望や開放感などの良い点が、ある日、突然、無くなってしまう危惧もある。
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近くに見えても、歩いて15分はかかる

(森下慎一)