東京生活ジャーナルとは...
東京生活ジャーナルでは、生活者の視点から都市が持つべき価値とは何かについて考えています。
2010年度は09年度に引き続き、「まちづくりフィールドレポート」と題し、都市における「まちづくり」に実際に関わっている人々へのインタビューと現地におけるレポートを中心に、生活者が自らのまちの価値に気づきそれを高めていくための取り組みや手法をご紹介していきます。
東京生活ジャーナルとは...
東京生活ジャーナルでは、生活者の視点から都市が持つべき価値とは何かについて考えています。
2010年度は09年度に引き続き、「まちづくりフィールドレポート」と題し、都市における「まちづくり」に実際に関わっている人々へのインタビューと現地におけるレポートを中心に、生活者が自らのまちの価値に気づきそれを高めていくための取り組みや手法をご紹介していきます。
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2011年08月23日
東京生活ジャーナルでは、2009年度、2010年度の2年間に、13のまちづくり事例を取り上げ、それぞれの取り組みの意義や成果について発信してきました。今回はその総括として、編集局員の3名がそれぞれの視点(街の維持管理、都市の景観づくり、建築家の職能)から、それら事例の整理を試みます。
2年間の取材を通して我々が実感した、今後のまちづくりへの提言として捉えていただければ幸いです。
編集局 添田昌志
■維持管理の主体
良好な住環境を形成するためには、最初によいハード(住宅、街路、公園、公共施設など)を作ることはもちろんだが、それを良い状態のまま、もしくはさらに良くするために、維持管理していくことがなにより重要である。このことは2年間の東京生活ジャーナルの取材を通して、私自身が一番強く感じたことである。
完成当初は時代の先端を行く雑誌に取り上げられるような素晴らしい街であっても、20年、30年の時が経過するうちに、朽ち果て荒廃してしまっては、持続性という観点から大いに問題である。逆に当初は何の特徴もない街だったところが、良好な維持管理の結果、今では一目おかれる街になることもある。
良好な維持管理を行うためのポイントは、それを行う主体を作り出せるかどうかである。主体が育たない限り、ハードは当初の理念を失ってただ朽ち、荒廃していくのみである。そして住宅地においてこの主体となりえるものは、その地の住民をおいて他にない。
編集局 川上正倫
東京生活ジャーナルでは、まちづくりフィールドレポートとして、2年間にわたり様々な観点で特徴的な事例を取材してきた。まちづくりの目的や手段はそれぞれ異なるが、将来へ向けた取り組みは、実に示唆に富んでいる。その中で、建築家がこの状況に何ができるのだろうかと、私は常に考えてきた。本稿はその総括という位置づけであるが、決して体系立った調査を行った訳ではないので、事例間の比較はいささか無理がある。そこで、ここでは、建築家とまちづくりの距離感を探ることで建築家の職能を再考し、まとめに代えたいと考える。
編集局 大澤昭彦
1.はじめに
私は東京生活ジャーナルで主に、街の景観をどのように形成していくか、という視点で考察を行ってきた。本稿では、特に、都心の景観づくりという視点に絞り、東京生活ジャーナルで取り上げた大手町・丸の内・有楽町(以下、大丸有)地区、銀座地区の2地区に加え、大阪の御堂筋地区を取り上げ、それぞれのルールづくりや運営手法の特徴を比較・整理することで、都心景観の再構築に向けたルールのあり方を提示し、まとめとしたい。
・東京生活ジャーナル 丸の内地区
・東京生活ジャーナル 銀座ルール
1990年前後、東西の都心、大丸有地区、銀座地区、御堂筋地区においては、景観の再構築が共通の課題となっていた。それぞれの地区では、かつての絶対高さ31m制限下で建てられた建物の更新時期を迎えるとともに、都心部における他地区との「地区間競争」の激化といった要因が重なったこともあり、抜本的な市街地の更新が図られていくことになる。
市街地の更新にあたっては、いずれの地区でも容積率の緩和が推進力として活用されている。容積率の緩和による街並みの変化は避けられない。しかし、野放図に変化を認めるのではなく、それまでに形作られてきた地区の歴史的な背景を踏まえつつ、都市の価値を高めるための街並みのあり方を地元と行政が模索しながらルールとして規定、運用している点が特徴と言える。
そういった意味で、街並みの現状凍結ではなく、都心景観の再構築を選択した大丸有、銀座、御堂筋の各地区のルールづくりや運用手法は大いに参考になる点がある。
3.「硬いルール」と「柔らかいルール」の併用
それぞれの地区は3つのタイプに分類できるが、共通点も見られる。それは、地区計画等の都市計画による「硬いルール」と、ガイドライン・要綱等の法的拘束力のない(もしくは弱い)「柔らかいルール」を併用していることである。
前者はルールの実効性を担保できるというメリットがあり、後者は明示的なルール化が難しいデザインの質的な側面を扱うことができる。それぞれの利点を活かし、補完し合いながら、ルールを策定・運用している点が特徴と言えるだろう。
とはいえ、それぞれのルールの関係・役割分担の方法はそれぞれ少しずつ異なる。
例えば、地区計画(硬いルール)と地域ルール・要綱(柔らかいルール)との関係について見てみると、大丸有地区は、地区のマスタープラン及び地域ルールである「まちづくりガイドライン」や「デザインマニュアル」をベースに、その内容の一部を地区計画に移行している。
一方、銀座地区では、まず地区計画等の都市計画に基づく「銀座ルール」を地元と中央区が協働で策定し、数値基準のみでは誘導できない質の部分を補完するために「銀座デザインルール」を地元が策定している。
そして、御堂筋地区では、指導要綱に基づくルールが基本であるが、地区計画では指導要綱では規定されていない用途の制限を行っている(御堂筋にふさわしくない用途のネガティブチェック)。
つまり、大丸有地区では、地域ルールの一部を地区計画で担保するという流れであるのに対し、銀座地区では、地区計画でカバーできない部分を地域ルールで補っており、逆に、御堂筋地区は、指導要綱で規定していないが、街並み形成上必要な事項を地区計画で補完するという形を採っているのである。